第17回日本クリティカルケア看護学会学術集会

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一般演題

[O11] 臨床判断

[O11-04] 看護師が呼吸数を測定するための判断要素

○竹林 正樹1、西村 聖子1、倉田 千晶1、澤村 千佳子1 (1. 松阪中央総合病院 看護部)

Keywords:呼吸数、急変、五感、バイタルサイン、判断要素

【目的】看護師が呼吸数を観察する重要性は報告されているが、臨床では呼吸数の測定や記録が省略されることが多い。このため、看護師が呼吸数を測定するための判断要素を明らかにする。
【方法】A病院の看護師および准看護師343名を対象に無記名自記式の質問紙を用いて調査した。質問内容は独自に作成し、4件法(必ず測定する~全く測定しない)で回答を得た。分析方法は回答を得点化(4点~1点)のうえ平均値、標準偏差を算出し、統計解析ソフトウェアSPSSver24を用いて探索的因子分析(一般化された最小2乗法、プロマックス回転)を行った。因子の共通項目はcronbach’s α係数を用いて、妥当性および信頼性を確認した。また、本研究はA病院の倫理審査で承認を受けて実施した。研究対象者には、研究目的、研究への参加は自由意思であること、質問紙は無記名で個人が特定できないように得られたデータは統計学的に処理すること等を文書で説明し、質問紙の回答をもって同意を得た。
【結果】質問紙の回収率は84%、有効回答率は80%であった。探索的因子分析では、2因子が抽出された。第1因子【気管と呼吸と意識に関連する症状の変化】の内容と各項目の平均値±標準偏差は、気管からの気になる音を認める場合3.03±0.845、SpO2値が90%以下の場合3.19±0.795、無呼吸を認める場合3.61±0.621、異常呼吸(換気量、呼吸リズムの異常)を認める場合3.61±0.621、意識の変容を認める場合3.49±0.78であった。第2因子【循環と体温に関連する数値の変化】の内容と各項目の平均値±標準偏差は、心拍数が40回/分以下の場合3.10±0.898、心拍数が130回/分以上の場合2.82±0.827、収縮期血圧90mmHg以下の場合2.48±0.808、収縮期血圧200mmHg以上の場合2.39±0.814、体温35度以下の場合2.55±0.937、体温38度以上の場合2.62±0.849、尿量の低下(50ml/4時間)の場合2.28±0.801であった。
【考察】【気管と呼吸と意識に関連する症状の変化】の因子は、患者の身体的な情報である。五感は人間の感覚であり認識した情報に違和感があれば、アセスメントすることで患者の急変につながる症状を察知するきっかけになる。看護師は異常の有無を確認するときに患者の非言語的な反応を五感で評価しており、とくに視覚による観察を重視していると考える。視覚や聴覚で得る情報は、状態の変化をとらえやすく看護師が呼吸数を測定するための判断要素になりやすい。このことから、看護師は臨床で記録に呼吸数を記載していない場合はあるが、患者の呼吸の変化は視覚や聴覚で確認している可能性があると考える。【循環と体温に関連する数値の変化】の因子は、バイタルサインがほとんどであり、測定する頻度が高く数値で患者の変化をとらえやすいためではないかと考える。しかし、各因子の平均値±標準偏差は、【気管と呼吸と意識に関連する症状の変化】よりも低かった。看護師は医療機器によるバイタルサイン測定が日常的になり、測定値を基準とした機械的なアセスメントを行ってしまっている可能性がある。このことから、数値の変化のみでは看護師が呼吸数を測定するための判断要素になりにくいと考える。
【結論】
 1.【気管と呼吸と意識に関連する症状の変化】の因子は、看護師が呼吸数を測定するための判断要素になりやすい。
 2.【循環と体温に関連する数値の変化】の因子は、看護師が呼吸数を測定するための判断要素になりにくい。