第18回日本クリティカルケア看護学会学術集会

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一般演題

[O1] 優秀演題

Sat. Jun 11, 2022 10:00 AM - 11:10 AM 第4会場 (国際会議場 21会議室)

座長:佐々木 吉子(東京医科歯科大学大学院保健衛生学研究科)、矢冨 有見子(国立看護大学校)、藤野 智子(聖マリアンナ医科大学病院)、茂呂 悦子(自治医科大学附属病院)

10:28 AM - 10:42 AM

[O1-03] J-RCSQ 導入後の患者の睡眠に対する看護師の意識や行動についての実態調査

○山田 彩海1、安井 望1、中野 友博1、下鳥 由紀1、岩佐 有華2 (1. 新潟大学医歯学総合病院高次救命災害治療センター、2. 新潟大学医学部保健学科看護学専攻)

Keywords:睡眠、J-RCSQ、看護師の意識・行動

【目的】
 2018年集中治療医学会は「成人ICU患者に対する鎮痛・鎮静・せん妄管理ガイドライン改訂版(以下PADISガイドライン)」を示した。しかし、先行研究から、実際にはICU患者の睡眠に関する医療従事者の意識は高いとはいえないこと、看護師の主観的な睡眠評価は患者の睡眠を過大評価する傾向があることが示されている。
 そこで、Richards-Campbell睡眠質問票日本語版(以下J-RCSQ )を使用することにより、患者の睡眠への看護介入の実施など行動の変化が期待できるのではないかと考え、2020年7月よりJ-RCSQを導入した。今回、J-RCSQ導入後の看護師の患者の睡眠に対する考え及び行動の実態を明らかにすることを目的に調査を行った。
【方法】
 A病院のJ-RCSQを使用している高次救命災害治療センターとICUの看護師長を除く看護師64名を対象に、無記名自記式質問紙票によるアンケート調査を行った。質問紙票は使用している看護師からのヒアリング内容、PADISガイドライン、先行研究を参考に作成し、基本属性、今現在患者の睡眠に関して行っている行動、J-RCSQの実施回数、J-RCSQ導入後の意識や行動の変化を問う項目で構成した。調査は2021年6月1日~2021年6月14日に実施した。調査結果は記述統計を行い、さらに、今現在患者の睡眠に関して行っている行動と経験年数、配属年数との関係性を探索するためPearsonのカイ2乗検定を行った。また睡眠に関して行っている行動とJ-RCSQの実施頻度との関係性を探索するためPearsonの相関係数分析を行った。統計学的分析には統計解析ソフトSPSS(Ver.24)を用い、有意水準P<0.05とした。
【倫理的配慮】
  本研究は新潟大学における人を対象とする研究等倫理審査委員会の承認(承認番号2021-0006)を得て実施した。
【結果】
 対象者64名のうち39名から回収した(回収率60.9%)。回答者39名のうち記入不備や研究に同意を得られなかった2名を除き37名を有効回答とした(有効回答率57.8%)。今現在患者の睡眠に関して行っている行動(複数回答)については、『不眠時薬の積極的な使用をした』37名が最も多く、次に『夜間の必要以上の観察を控えた』34名と続いた。患者の睡眠に対して行っている行動と経験年数、配属年数との関連性があるか探索するためカイ2乗検定を行ったが、どの項目においても有意差は認められなかった。また、対象者が患者の睡眠に対して行っている行動と対象者が患者にJ-RCSQ実施した頻度の関係性では、実施回数と今現在睡眠に関して行っている行動『日中の活動を促した』の項目とで有意差(p=0.03、r=0.362)が確認された。
 「J-RCSQを実施するようになってから睡眠に対する意識は変化したか」について、27名(73%)が意識の変化があったと回答した。対象者の内34名が実際にJ-RCSQを確認し、さらにその内の25名がその結果を受けて『眠れなかった原因を患者と一緒に考えた』『医師に薬剤の調整について相談した』『日中の活動を促した』などの何らかの対処行動をとっていた。
【考察】
 今回の結果からJ-RCSQ導入後に患者の睡眠に対する意識の変化があったと回答した看護師は7割おり、J-RCSQ導入による効果が示唆された。またJ-RCSQで低い値を確認した際に実際とられた行動から、患者の不眠を解決しようとする意識をもっていると推測され、J-RCSQ導入によって意識や行動の変化が起きているということが示唆された。