第18回日本クリティカルケア看護学会学術集会

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一般演題

[O1] 優秀演題

Sat. Jun 11, 2022 10:00 AM - 11:10 AM 第4会場 (国際会議場 21会議室)

座長:佐々木 吉子(東京医科歯科大学大学院保健衛生学研究科)、矢冨 有見子(国立看護大学校)、藤野 智子(聖マリアンナ医科大学病院)、茂呂 悦子(自治医科大学附属病院)

10:42 AM - 10:56 AM

[O1-04] 緊急入院患者の人工呼吸管理とICU退室1年後のメンタルヘルスの関連性
−Propensity Score IPTWによる分析−

○栗原 知己1、卯野木 健1、櫻本 秀明2、春名 純平3、大内 玲2、北山 未央4、植村 桜5、辻本 雄大6 (1. 札幌市立大学 看護学部、2. 茨木キリスト教大学 看護学部、3. 札幌医科大学集中治療医学研究員、4. 金沢医科大学病院看護部ハートセンター、5. 大阪市立総合医療センター 看護部、6. 奈良県立医科大学附属病院 看護部)

Keywords:PICS

【背景】
Post-Intensive Care Syndrome (PICS)のうちメンタルヘルスに関するリスク因子に関しては明確ではなく、ICUで行われる処置等が関連しているか否かも結論が出ていない問題である。
【目的】
集中治療室(Intensive Care Unit: ICU)における侵襲的人工呼吸管理は、ICU退室から1年後のPost-traumatic Stress Disorder(PTSD)や、うつ症状と関連があるかを検討した。
【方法】
本研究は全国12施設のICUにおいて実施した多施設共同研究(以下SMAP-HoPe Study, Unoki T, 2021)の二次分析である。SMAP-HoPe Studyは2019年10月から2020年7月の間にICUに3日以上滞在し、ICUを退室してから1年経過した18歳以上の患者778名に対し、メンタルヘルス評価を含む質問紙を郵送した。本分析では、そのデータから、PICSのリスクが高い緊急入室の患者のみを対象とした。PTSD症状はImpact of Event Scale-Revised(IES-R)、うつ症状にはHospital Anxiety and Depression Scale(HADS-D)をそれぞれ用いた。対象患者のうち侵襲的人工呼吸器を使用した患者を暴露群とし、PTSDとうつ症状をそれぞれアウトカムと設定した。統計解析にはPropensity Score (PS)による逆確率重み付け推定法(Inverse Probability of Treatment Weighting: IPTW)を用いた。侵襲的人工呼吸管理を目的変数とし、年齢、性別、APACHE Ⅱ、SOFA、せん妄の有無、精神疾患の有無、ベンゾジアゼピン系薬剤の使用歴を共変量としてPSを算出した。次に、PSを用い、IES-RとHADSをそれぞれアウトカムとしたIPTW解析を行い、c統計量、オッズ比(OR)、95%信頼区間(95%CI)、p値を算出しそれぞれの関係性を推定した。有意確率は<0.05に設定した。これらの解析にはR 4.1.2 (R Foundation for Statistical Computing, 2020)を使用した。なお、SMAP-HoPe Studyは主管施設および参加した各施設の倫理委員会の承諾を得て実施した。
【結果】
対象者は398人(51.2%)であった。分析対象者に関する年齢の中央値 [四分位範囲]は69.5歳[56 - 77]、男性289人(72.6%)であった。PSを算出した際のc統計量は0.83(95%CI, 0.79 – 0.87)であったが、IPTW調整後の一部変数についてSMD(Standard Mean Difference)が0.1以上であった。IPTW解析の結果、IES-RではOR,0.45 (95%CI, 0.16 – 1.19: p=0.11)、HADSではOR, 0.53 (95%CI, 0.28 – 0.99: p=0.05) であった。
【考察】
本分析により、緊急入室患者に対する侵襲的人工呼吸器の使用は、ICUを退室してから1年後のうつ症状、PTSD症状とは関連がないことが示唆された。PICSに関するリスク因子は今後も探索する必要性がある。