第18回日本クリティカルケア看護学会学術集会

講演情報

一般演題

[O10] 看護管理ほか

2022年6月12日(日) 11:40 〜 12:50 第4会場 (国際会議場 21会議室)

座長:安藤 直美(岡山市立市民病院)

11:40 〜 11:52

[O10-01] 集中治療室看護師の集中治療後症候群に対する認知度とケアについての実態調査

○岡田 晋太郎1 (1. 福岡市民病院)

キーワード:集中治療室看護師、集中治療後症候群、認知度、ケア

【目的】A病院集中治療室看護師のPICS認知度と、PICSを含めた合併症予防ケアの実態を明らかにする。
【方法】1.研究デザイン:記述的研究。2.研究参加者:ICU看護師10名。3.期間:令和3年4月~9月。4.データ収集方法:関連する文献を基にPICSについて4項目の質問を作成し、構成的面接を行った。(以下質問内容)1)研究参加者の背景。2)PICS、PICS-Fという言葉を知っているか。3)PICS予防を目的として実践しているケア内容を、身体的障害予防、精神的障害予防、認知的障害予防に分け、自由に語ってもらった。4)PICS-F予防を目的として実践しているケア内容を自由に語ってもらった。5.データの分析方法:ケア内容について自由回答した項目は逐語録として書き起こした。研究参加者をPICSについて「知らない」と答えたものを知らない群、その他を知っている群と分類して比較した。回答で得られたケア内容はグループ化し、ネーミングした。6.倫理的配慮:本研究は対象施設倫理委員会の承認を得た上で実施した。
【結果】1.研究参加者の背景:ICU経験年数の平均は3.9年(±3.92)であった。2.PICS、PICS-Fの認知度:知っている群は4名であった。そのうちPICS-Fを「知っている」と返答したのは2名であった。知らない群は6名であった。3.PICS予防に対するケアの実際:身体的障害予防は、知っている群で6種類、知らない群で4種類のケア内容が得られた。精神的障害予防は、知っている群で8種類、知らない群で10種類のケア内容が得られた。認知的障害予防は、両群でそれぞれ7種類のケア内容が得られた。4.PICS-Fに対するケアの実際:それぞれの群で8種類のケア内容が得られた。
【考察】PICSの認知度は4割であり、先行研究の6割と比べて低かった。これは先行研究よりICU経験年数が短いことが影響していると考えられた。さらにPICSが認知されていない要因として、集中治療系の学会での講演や雑誌への掲載など知識を得る機会が限局され、PICSに関する情報を獲得する看護師が限られているため、いまだに十分に浸透していない現状であると考える。PICS-Fの認知度はPICS以上に低かった。知らない群でも、知っている群と同様に、せん妄のモニタリングやせん妄に対する非薬理学的介入、リハビリ、鎮痛を行っており、これは早期リハビリ加算や施設としての取り組みが影響していると考えられた。 PICS予防としてABCDEFGHバンドルが有用であると言われているが、知っている群でも、バンドルの活用が十分にできているわけではなかった。知識として獲得するだけでなく、各個人で意識することや施設として取り組み、点で行われているケアを線で行っていく必要がある。PICS-F予防のケアでは、どちらの群においても、家族の上位ニードである「情報」「接近」「保証」のニードに対するケアを実践していた。PICS-F予防のケアとして重要なことは、いずれかを単独で実施するのではなく、総合して実施することである。そして、家族もケアの対象者であると認識して関わることが重要であると考える。
【結論】1.PICSの認知度は低く、ICU 経験年数の影響が示唆された。PICS-Fは、PICS以上に認知度が低かった。2.PICSの知識に関わらず、PICSやPICS-Fの予防ケアができていた。十分な介入には、点で行っているケアを線で行っていく必要がある。また、家族をケアの対象者と認識して関わることが重要である。