第18回日本クリティカルケア看護学会学術集会

講演情報

一般演題

[O10] 看護管理ほか

2022年6月12日(日) 11:40 〜 12:50 第4会場 (国際会議場 21会議室)

座長:安藤 直美(岡山市立市民病院)

12:04 〜 12:16

[O10-03] 集中治療室勤務の中堅看護師の職務継続に影響する経験

○中川 あゆみ1、岡田 佑果1、栗田 健志1、山田 裕紀1、平野 智子1 (1. 広島大学病院)

キーワード:集中治療室、中堅看護師、職務継続

〔目的〕本研究の目的は、集中治療室勤務の中堅看護師が職務継続の危機に陥った経験と危機を乗り越えた経験を明らかにすることで、集中治療室看護師への職務継続支援について示唆を得ることである。
〔方法〕研究デザイン:質的記述的研究 対象:A病院外科系集中治療室勤務の経験年数3年以上7年以下の看護師6名。研究期間:2021年5月~2022年1月。調査方法:先行研究を参考にインタビューガイドを作成し、半構造化面接を行った。インタビューはプライバシーが確保される場所で行い、承諾を得た上でICレコーダーで録音した。分析:逐語録に起こしたインタビュー内容をコード化し、類似性に基づきサブカテゴリー化を行った。さらに、サブカテゴリーの共通性を検討し、抽象度を上げカテゴリー化した。その後、カテゴリー間の関係性について時系列を考慮しながら検討した。
〔倫理的配慮〕所属施設の倫理審査委員会の承認を得た上で行った(承認番号:2021016)。調査協力依頼文書と口頭にて趣旨・目的、匿名性の確保、データの取り扱いと保管、結果の公表などを説明した。調査協力は自由意思であり、諾否によって不利益を被らないこと、同意後の撤回も可能であることを説明し、同意文書の署名・提出を求めた。
〔結果〕職務継続の危機に陥った経験として、【苦手な人の存在】、【コミュニケーション困難による仕事のしにくさ】、【先輩からの辛辣な発言】、【他者からのネガティブな評価による自信喪失】、【望むキャリアプランとの不一致】、【業務と残務のストレス】、【看護実践上の不安】、【患者からのレスポンスの少なさ】、【クリティカルケアに対する重圧】のカテゴリーが抽出された。 また、職務継続の危機を乗り越えた経験として、【対人関係能力の向上】、【先輩への反骨精神】、【仕事上の問題に対応できるコーピング方法や経験】、【同僚のサポート】、【望むキャリアプランとの一致】、【仕事へのやりがいとなる出来事】、【勤務形態や医療の質への満足感】、【仕事上の能力の向上】、【重症患者担当により高まる責任感】のカテゴリーが抽出された。
〔考察〕職務継続の危機に陥った経験と危機を乗り越えた経験に共通して職場での人間関係・キャリアプラン・看護実践能力に関係するカテゴリーが得られた。その中には、【対人関係能力の向上】や【仕事上の能力の向上】など自身のスキルを向上させ危機を乗り越えたものや、【同僚のサポート】や【仕事へのやりがいとなる出来事】のように他者からの支援や出来事によって危機を乗り越えたものがあり、先行研究と同様な結果を示した。 集中治療室の特徴として、職務継続の危機に陥った経験には【クリティカルケアに対する重圧】、危機を乗り越えた経験では【重症患者担当により高まる責任感】が挙げられた。
 刻々と容態変化する重症患者への看護実践には高度な知識、アセスメント、看護技術が求められる。故に、実践レベルの違いによりリアリティショックや負担感を生じやすく、経験年数を重ねても時として看護実践に対する不全感を抱くことも少なくない。一方で、それらが責任感の向上に繋がっている可能性も踏まえ、実践レベルに応じた支援が必要である。
〔結論〕集中治療室の中堅看護師が職務継続に陥った経験として【クリティカルケアに対する重圧】、それを乗り越えた経験として【重症患者担当により高まる責任感】があり、実践レベルに応じた支援の必要性が示唆された。