第18回日本クリティカルケア看護学会学術集会

講演情報

一般演題

[O10] 看護管理ほか

2022年6月12日(日) 11:40 〜 12:50 第4会場 (国際会議場 21会議室)

座長:安藤 直美(岡山市立市民病院)

12:16 〜 12:28

[O10-04] 半構造化面接によって見いだしたわが国におけるクリティカルケア看護師の
Moral Distressの様相

○松田 麗子1、明石 惠子2 (1. 名古屋女子大学健康科学部看護学科、2. 名古屋市立大学大学院看護学研究科)

キーワード:クリティカルケア看護師、Moral Distress、半構造化面接

【目的】
クリティカルケア看護師は,倫理的問題が潜在する臨床状況においてMoral Distress(以下,MD)を引きおこす可能性に曝されている.MDは看護師が看護観に基づいて倫理的に行動したいのに,何らかの制約によりそれができず,心理的苦痛を感じる体験である.我々はこれまでに質的研究のメタ統合により,看護師本人の看護観に基づく倫理的行動,それを妨げた状況,その際の心理的負担感というMDの構成要素とその様相を見出した. 本研究の目的はメタ統合の結果に加え,クリティカルケア看護師のMDを半構造化面接により明らかにすることである.
【方法】
研究参加者は,看護師経験5年以上かつ,救命救急センター・ICU(成人対象)に勤務3年以上の看護師とした.研究デザインは,質的帰納的研究としデータは日常の看護実践におけるMDの体験について半構造化面接より得た.分析方法は,倫理的問題に対して看護師本人が適切だと思っていたこと,それを妨げた状況,その際の心理的負担感を表す文章をそれぞれ抜き出してコード化し,類似したコードからカテゴリ化を行った.このプロセスは共同研究者間で一致をみるまで討議を繰り返し信頼性・妥当性の確保に努めた.本研究は所属大学研究倫理委員会の承認を得た上で実施した.
【結果】
研究参加者は,クリティカルケア経験年数5~18年の看護師10名であった.看護師本人の看護観に基づいた倫理的行動は《救命と回復への集中》,《患者の人間性の尊重》を含む5カテゴリが抽出された.これらを妨げた状況は《危機的状況にある患者・家族と医療者との共通理解の困難さ》,《患者・家族を中心とした治療・処置やケアの不十分さ》を含む5カテゴリが抽出された.心理的負担感は,自責の念,無力感,怒りなどであった.
【考察】
本結果より関係性を表した(図1).本研究では,メタ統合の結果とほぼ同様のカテゴリが形成されたが,サブカテゴリでは以下の新知見が得られた.看護師本人の看護観に基づいた倫理的行動では〔自らの経験を蓄積し看護ケアへ活かす〕,〔倫理的問題を口にだせる職場を作る〕であった.これらを妨げた状況では〔患者予後に対する家族と医師・看護師との認識の違い〕,〔患者背景を把握する困難さ〕,〔事故発生時に負わされる責任への危惧〕であった.心理的負担感では,自己嫌悪,欺瞞,怒りなどであった.クリティカルケア看護師への面接によって,より現実的なMDの様相が明らかになった.
O10-04