第18回日本クリティカルケア看護学会学術集会

講演情報

一般演題

[O10] 看護管理ほか

2022年6月12日(日) 11:40 〜 12:50 第4会場 (国際会議場 21会議室)

座長:安藤 直美(岡山市立市民病院)

12:28 〜 12:39

[O10-05] 集中治療室の中堅看護師のキャリア・プラトーの様相

○工藤 孝子1、佐藤 まゆみ2 (1. 順天堂大学医学部附属順天堂医院、2. 順天堂大学大学院医療看護学研究科 がん・クリティカルケア 看護学)

キーワード:キャリア・プラトー、中堅看護師、集中治療室

【目的】超高齢・多死社会を迎えるにあたり急性期医療のニードは高く、集中治療室(以下ICU)のような急性期高度医療分野で高い専門性を持つ中堅看護師は組織にとっても必要不可欠な人的資源である。しかし、働く人のキャリアには紆余曲折があり、ときに停滞し、キャリア・プラトーの状態になることがある。本研究の目的は、ICUの中堅看護師がキャリアを中断せずにいきいきと働き続けられるような支援を検討するために、ICUの中堅看護師のキャリア・プラトーの様相を明らかにすることである。
【方法】以下の条件をみたす者を対象にインタビュー調査を実施した。①ICUに配属されて中堅看護師時代(ICU経験3〜15年)にキャリア・プラトーになったことがある②過去のキャリア・プラトーを乗り越えた経験がある③キャリア・プラトーを乗り越えて3年以内で現在もICUに勤務している。得られたデータは修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチを用いて分析した。本研究は、順天堂大学大学院医療看護学研究科研究等倫理委員会の承認を得て実施した(順看倫第2021-5号)。
【結果】研究協力者は12名で、ICU経験年数は平均9.0年、キャリア・プラトー時のICU経験年数は平均5.2年であった。分析の結果、生成された概念は22概念で、このうち11概念から5カテゴリが生成され、残り11概念はカテゴリと同等の説明力を持つ概念であった。そしてこれらから3つの<コアカテゴリ>が形成され、以下のストーリーラインが作成された。ICUの中堅看護師のキャリア・プラトーの様相とは、ICUに配属され、<課題をクリアすることにより仕事が充実する>ものの、様々な理由から<自分のやりたいことができずに行き詰ま(る)>り、キャリア・プラトーの状態となる。しかし、<自分のやりたいことができずに行き詰ま(る)>りながらも、自ら目標を自ら見つけ、あるいは、他者の支援を得て目標を見つけて行き詰まりを乗り越えるプロセスであることが明らかとなった。
【考察・結論】ICUの中堅看護師のキャリア・プラトーの様相は、<課題をクリアすることにより仕事が充実する>、<自分のやりたいことができず行き詰まる>、<目標を見いだし行き詰まりを乗り越える>をコアカテゴリとするプロセスであることが明らかになった。中堅の域に達したICU看護師は、課題をクリアし仕事の充実を体験したものの、様々な理由から自分の次の目標が設定できず、あるいは目標設定できてもそれが達成できず仕事に行き詰まることでキャリア・プラトーの状態に至ると考えられた。そして、「ICUでの医療・看護にジレンマを感じて行き詰まる」、ICUでの役職数には限りがあることによる「ICUでの昇進の可能性が低い事によりキャリアが頭打ちになる」、他部署からICUへの異動者に対する支援の不足等を含む「他者からの支援が得られず行き詰まる」等の概念/カテゴリはICUならではの行き詰まりの要因と考えられた。さらに、キャリア・プラトーの状態を脱する鍵は目標の再設定であることが示唆された。これらの結果から、ICUの中堅看護師がキャリアプラトー状態になることを防ぐ看護支援として、①自分のちからでキャリア目標を見つけられるよう自律性を高める。②ジョブ・ローテーションによりマンネリズムを予防する。③ICUでの看護にやりがいを得られるよう支援する。④やりたいことができるように支援する。⑤メンター・ロールモデルが機能する支援体制を構築する。⑥異動者の支援を充実させる。⑦看護管理者はプラトー状態にある中堅看護師にタイムリーに関わり支援に繋げる、の7つが重要であることが示唆された。