第18回日本クリティカルケア看護学会学術集会

講演情報

一般演題

[O12] 運動と休息

2022年6月12日(日) 14:00 〜 15:10 第7会場 (総合展示場 314-315会議室)

座長:藤岡 智恵(飯塚病院)

14:24 〜 14:36

[O12-03] 集中治療室活動度スケールを用いた人工呼吸器装着患者における身体活動能力の評価

○大島 梨華子1、金 静姫1、後藤 順一1、森内 陽子1 (1. 社会医療法人河北医療財団 河北総合病院)

キーワード:集中治療室活動度スケール、早期リハビリテーション

【はじめに】近代の医療発展によりICUに入室した患者の救命率が増加している。ICUに入室した患者には、鎮静・鎮痛薬が投与され、人工呼吸器管理下におかれる場合も多くあり、病状により床上での安静が強いられる。このことから、筋力低下・関節拘縮・循環血液量減少など二次的合併症の発生が懸念されている。このようにICUでの治療に伴う不動な状態が遷延した廃用性萎縮はICU- Acquired Weakness(以下ICU-AW)の因子となりえる。ICU-AWの予防には、ICUへの入室後48時間以内に開始されるリハビリテーションが有効であると先行研究で明らかになっている。
 しかし当院では、48時間以内にリハビリテーションを介入した人工呼吸器を装着している患者の身体活動能力について、指標を用いた評価を行ったことはなかった。そのため今回、人工呼吸器を装着した患者に対して集中治療室活動度スケール(IMS)を用いて評価を行い、それら患者の身体活動能力とその変化について検証する。
【目的】IMSを用いて人工呼吸器を装着した患者の身体活動能力とその変化について明確にし、今後のリハビリテーションの質の向上につなげる。
研究方法
期間:2021年4月1日から2022年2月1日
研究対象:ICUに入室し、48時間以内にリハビリテーションを開始した患者。 人工呼吸器を装着し、鎮痛・鎮静薬を投与した挿管群と人工呼吸器、鎮静・鎮痛薬を使用していない非挿管群と分類した。
分析方法:後ろ向きコホート研究とし、身体活動能力をIMSで評価する。IMSはICU入室時と退室時の変化率を算出する。
倫理的配慮:本研究は所属病院の倫理委員会の承認を得た上で実施した。
【結果】調査期間内にICUに入室した患者は306例であった。そのうち92例はICUに入室してから数時間で退室となったため除外した。また、初回のリハビリテーションに48時間以上要した患者24例も除外した。対象者の190例のうち挿管群28例のIMS平均変化率は+1.68(SD1.94)であった。
【考察】非挿管群は168例でありIMS平均変化率は+3.1(SD±2.82)であった。 非挿管群は平均として3段階以上IMSが上昇した結果となり、入室時はIMS0の値である「活動なし」の場合であったとしても、退室時には3の値である「端坐位」や4の「立位」まで身体活動能力が拡大できた結果となった。しかし、挿管群は1段階程度の変化しか認められなかった。鎮静・鎮痛薬を投与中によりIMS0の値の「活動なし」の患者が、人工呼吸器を離脱した後であってもICU退室時には1の値である「ベッド上での運動」の身体活動能力である。このことから、人工呼吸器を装着した患者は、入室後48時間以内にリハビリテーションを開始したとしても、離床が進まないままICUから退室している現状があることが確認された。
【結論】IMSを用いたことにより、48時間以内にリハビリテーションを開始した患者の身体活動能力と、その変化を明確にすることができた。また挿管群・非挿管群との身体活動能力の差がより具体的に明確となった。