2:48 PM - 2:59 PM
[O12-05] 集中治療室入室患者における睡眠に影響する要因と睡眠ケアの検討
Keywords:睡眠、睡眠障害、鎮痛、眠剤
【はじめに】多くの集中治療室はワンフロアであり昼夜問わず入退院があり、常に照明や音による刺激がある。加えて緊急手術、鎮静剤の持続投与や夜間でも看護ケアや処置などが行われるため見当識や時間感覚が喪失しやすい環境にあることから、睡眠障害が生じやすいと言われている。そこで、集中治療室に入室した患者に対して患者の睡眠状況を測定し、睡眠に影響する要因を明らかに、睡眠促進ケアを検討したので報告する。
【目的】A病院のICU・HCUに入室した患者に対して、嶋岡らが作成した睡眠評価尺度ICU sleep evaluation scale(以後ISES)を用いて睡眠評価を行い、睡眠に影響する要因を明らかにする。
【方法】対象は、2021年8~11月にA病院ICU・HCUに2日以上入室し、睡眠状況を自己評価できる患者で、JCS2以上の意識障害患者は除外した。ISESを用いて、入室2日目22時~3日目8時までの10時間を看護師が評価した。ISESは、客観的評価51点・主観的評価18点で評価でき、高得点ほど眠れたと判断できる。データは単純集計し、先行研究で睡眠に影響を及ぼす可能性の高い項目(手術・食事・身体拘束・緊急入院・眠剤や鎮痛剤使用・吸引・眠剤常用・SCD・38度以上の発熱・職業等の有無、年齢(65歳以上と65歳未満)、診療科、部屋の位置、シリンジポンプ輸液ポンプの台数、デバイスの本数、苦痛(CPOT)、入院前の睡眠時間、入院2日目のCRP値)についてISES得点をt検定で比較した。有意水準は5%を有意差あり、10%を有意な傾向と判断した。なお、本研究はA病院倫理委員会の承認を得た。
【結果】対象者は44名で、平均年齢は63.4歳、男女比28:16、平均入室期間は4.65日、入室3日目で一般病棟退室患者は22名で最も多かった。診療科は循環器内科が47.7%、次いで脳神経外科が36.4%、内科が9.1%、神経内科が6.8%であった。客観的指標では、入院前の有職患者群よりも無職患者群の方が有意に眠れていた(p=.036)。手術後群よりも未手術群の患者の方が眠れる傾向にあった(p=.098)。次に主観的指標では、評価期間中に他患者の緊急入院があった患者群よりも他患者の緊急入院がなかった患者群の方が有意に眠れていた(p=.010)。また、眠剤投与群よりも眠剤未投与群の患者の方が有意に眠れていた(p=.027)。その他の項目では客観的・主観的ともに有意差は認めなかった。
【考察】睡眠に影響する因子として、入院前の仕事の有無・手術の有無・緊急入院の有無・眠剤の使用の有無であった。睡眠障害の因子として、精神的ショックや不安などの心理的要因があるとの報告から、入院前の仕事の有無や緊急入院は睡眠に影響を与えた可能性が高い。また、重症患者の睡眠の質に影響を与える因子としては、ICU入室中の痛み、環境刺激、ヘルスケア関連の安静中断、心理的要因、呼吸の要因と薬物であると報告されている。手術の有無が睡眠に影響を及ぼした理由として、術後痛や環境刺激、心理的要因など複数重なっている可能性が考えられた。主観的評価で眠剤を投与した群が睡眠に影響する要因であったことから、非薬理学的介入の重要性も明らかになった。よって、可能な限り非薬理学的な介入を行い、睡眠に影響する要因を認めた場合は精神的ケアや環境整備、鎮痛を行うことが必要であることが示唆された。
【結論】1. ICU・HCUに入室した患者に対して、ISESで睡眠評価を行い、睡眠に影響する要因を検討した。2. 睡眠に影響する因子は、主観的指標は入院前の仕事の有無・手術の有無で、客観的指標は緊急入院の有無・眠剤の使用の有無であった。3. 睡眠促進のために非薬理学的な介入となる精神的ケアや環境整備、鎮痛を行うことが必要であることが示唆された。
【目的】A病院のICU・HCUに入室した患者に対して、嶋岡らが作成した睡眠評価尺度ICU sleep evaluation scale(以後ISES)を用いて睡眠評価を行い、睡眠に影響する要因を明らかにする。
【方法】対象は、2021年8~11月にA病院ICU・HCUに2日以上入室し、睡眠状況を自己評価できる患者で、JCS2以上の意識障害患者は除外した。ISESを用いて、入室2日目22時~3日目8時までの10時間を看護師が評価した。ISESは、客観的評価51点・主観的評価18点で評価でき、高得点ほど眠れたと判断できる。データは単純集計し、先行研究で睡眠に影響を及ぼす可能性の高い項目(手術・食事・身体拘束・緊急入院・眠剤や鎮痛剤使用・吸引・眠剤常用・SCD・38度以上の発熱・職業等の有無、年齢(65歳以上と65歳未満)、診療科、部屋の位置、シリンジポンプ輸液ポンプの台数、デバイスの本数、苦痛(CPOT)、入院前の睡眠時間、入院2日目のCRP値)についてISES得点をt検定で比較した。有意水準は5%を有意差あり、10%を有意な傾向と判断した。なお、本研究はA病院倫理委員会の承認を得た。
【結果】対象者は44名で、平均年齢は63.4歳、男女比28:16、平均入室期間は4.65日、入室3日目で一般病棟退室患者は22名で最も多かった。診療科は循環器内科が47.7%、次いで脳神経外科が36.4%、内科が9.1%、神経内科が6.8%であった。客観的指標では、入院前の有職患者群よりも無職患者群の方が有意に眠れていた(p=.036)。手術後群よりも未手術群の患者の方が眠れる傾向にあった(p=.098)。次に主観的指標では、評価期間中に他患者の緊急入院があった患者群よりも他患者の緊急入院がなかった患者群の方が有意に眠れていた(p=.010)。また、眠剤投与群よりも眠剤未投与群の患者の方が有意に眠れていた(p=.027)。その他の項目では客観的・主観的ともに有意差は認めなかった。
【考察】睡眠に影響する因子として、入院前の仕事の有無・手術の有無・緊急入院の有無・眠剤の使用の有無であった。睡眠障害の因子として、精神的ショックや不安などの心理的要因があるとの報告から、入院前の仕事の有無や緊急入院は睡眠に影響を与えた可能性が高い。また、重症患者の睡眠の質に影響を与える因子としては、ICU入室中の痛み、環境刺激、ヘルスケア関連の安静中断、心理的要因、呼吸の要因と薬物であると報告されている。手術の有無が睡眠に影響を及ぼした理由として、術後痛や環境刺激、心理的要因など複数重なっている可能性が考えられた。主観的評価で眠剤を投与した群が睡眠に影響する要因であったことから、非薬理学的介入の重要性も明らかになった。よって、可能な限り非薬理学的な介入を行い、睡眠に影響する要因を認めた場合は精神的ケアや環境整備、鎮痛を行うことが必要であることが示唆された。
【結論】1. ICU・HCUに入室した患者に対して、ISESで睡眠評価を行い、睡眠に影響する要因を検討した。2. 睡眠に影響する因子は、主観的指標は入院前の仕事の有無・手術の有無で、客観的指標は緊急入院の有無・眠剤の使用の有無であった。3. 睡眠促進のために非薬理学的な介入となる精神的ケアや環境整備、鎮痛を行うことが必要であることが示唆された。