第18回日本クリティカルケア看護学会学術集会

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一般演題

[O13] 家族看護2

Sun. Jun 12, 2022 2:20 PM - 3:30 PM 第4会場 (国際会議場 21会議室)

座長:姥迫 由記子(山口大学医学部附属病院)

2:56 PM - 3:08 PM

[O13-04] 面会制限下における家族ケアの取り組み −ICUダイアリーの導入を試みて−

○山田 理絵1 (1. 順天堂大学医学部附属練馬病院)

Keywords:ICUダイアリー、家族看護

【目的】
新型コロナウイルス(SARS-CoV-2:以下COVID-19)感染拡大に伴い、2021年より病院全体として家族の面会制限が開始となった。ICU病棟に入院する重症患者の家族は、突然の入院や発症、重篤化、さらに治療中の患者に面会できないという不安など精神的負担があり、集中治療後症候群(post intensive care syndrome-family:以下PICS-F)発症リスクの要因とされている。ICU病棟における家族ケアの必要性を考え、PICS-Fの予防を目的としたICUダイアリーを導入した。
【方法】
期間:2021年4月~12月末。 対象者:入院時の家族の言動や面会希望があるなど、担当看護師やリーダー看護師を中心にカンファレンスを行いICUダイアリーの必要性があると判断し、承諾が得られた症例。 方法:2021年4月よりICU病棟に所属する看護師39名にICUダイアリーの導入目的、運用、記載方法について説明を行った。記載は、受け持ち看護師が介入したその日のケアや患者の反応とした。家族の来院時に、感染対策を行った上でICUダイアリーを見てもらい、家族の希望に応じて思いを記載してもらった。
【倫理的配慮】
ICUダイアリー導入患者を集計し、個人が特定されないよう記号化し保存した。また、所属看護部の許可を得た。
【結果】
ICUダイアリー導入は28例であった。年齢:幼児~80歳代。そのうち、COVID-19重症患者のICUダイアリー導入は8件(ICU病棟に入室したCOVID-19患者の23.5%に導入)であった。家族が来院した際にICUダイアリーを見てもらい、ICU看護師の記載した内容に涙を流す家族や患者の様子を知ることが出来てよかったと肯定的な発言をする家族が多くいた。また、家族がICUダイアリーに患者に向けたメッセージや自身の日常の出来事、看護師に対する感謝の言葉の記載があった。
【考察】
PICS-Fの予防のため、ABCDEFGHバンドルの活用が重要とされており、家族ケアを早期に取り組む必要がある。家族は、ICUダイアリーを通して、入院中の患者の様子を知ることができ、安心感や医療者への信頼感を感じることができていた。ICU看護師は、家族が患者のことをどのように捉え、不安やニーズが表出できるように関わる必要がある。そのためには、ICU看護師が早期よりPICS-F予防に対する意識をもち、ICUダイアリーを通して今後も家族ケアに取り組む必要があるといえる。
【結論】
COVID-19感染対策による面会制限下における家族ケアは、今後も必要と考えられる。ICUダイアリーがPICS-F予防を含め、どのように影響を与えているか、分析と運用方法の検討を継続していく必要がある。その中で、ICU看護師は、特に不安の強い家族の場合、どのように患者の現状を伝えるか記載や表現方法を、家族の思いに寄り添って進めていく必要があるといえる。 ICUダイアリーは、面会制限下における家族と患者、医療者を繋ぐツールであり、今後もPICS-F予防目的とした運用・活用を行っていく。