第18回日本クリティカルケア看護学会学術集会

講演情報

一般演題

[O2] 鎮痛・鎮静管理

2022年6月11日(土) 11:20 〜 12:20 第4会場 (国際会議場 21会議室)

座長:渡海 菜央(日本大学医学部附属板橋病院)

11:56 〜 12:08

[O2-04] オープンICUの看護師が捉える鎮痛管理の問題
−人工呼吸器管理における鎮痛管理−

○野中 恵子1、福田 昌子1 (1. 岡崎市民病院)

キーワード:鎮痛管理、オープンICU、人工呼吸器管理

〔目的〕近年、人工呼吸器管理の一つとして十分な鎮痛と浅い鎮静が推奨され、疼痛評価やプロトコルの導入が進んでいる。A病院は「鎮痛・鎮静プロトコル」を導入し3年が経過したが、A病院の先行研究では鎮痛管理が不十分であった。そこで、プロトコル導入後のオープンICUの看護師が捉える鎮痛管理の問題を明らかにし、今後の教育やシステムの構築、チーム医療のあり方について示唆を得たいと考えた。
〔方法〕2021年10月4日~2021年10月31日にA病院集中治療センターに勤務する看護師を対象に「人工呼吸器装着患者の鎮痛管理において問題に感じていること」を問い、自由記述で回答を得た。対象者には自由意志で参加できることや回答をもって同意とすること、調査協力の諾否によって対象者が不利益を被らないことを紙面で説明した。匿名性の担保のため回答用紙は無記名とした。本研究は、A病院臨床研究審査委員会の承諾を得た上で実施した。
〔結果〕有効回答が得られた31名の概要は、集中治療領域経験年数4年以下が13名、5年以上が18名であった。自由記述内容から得られたデータをコード化し、内容の類似性に基づき分析した結果、25のサブカテゴリーと4つのカテゴリーが抽出された。〔システムの不備〕は、医療者の疼痛評価、ツールの活用、薬剤の選択の認識の違い。【鎮痛評価の困難さと薬剤調整や薬剤効果の限界】は、疼痛評価の困難さや薬剤調整の困難さ。【疼痛緩和不足へのジレンマ】は、迅速な疼痛緩和ができない葛藤。【多職種のコミュニケーション・協働不足】は、診療科・多職種の連携不足や協働不足を表している。
〔考察〕最もコード数が多かったカテゴリーは【システムの不備】であり、次に【鎮痛評価の困難さと薬剤調整や薬剤効果の限界】であった。医療者の『ツール活用不足』や薬剤管理において認識の差があり、オープンICUでの最適な鎮痛管理の困難さが伺えた。また、看護師は『痛みの評価の難しさ』『興奮時の対応の難しさ』があり、過鎮静や意識障害により自己評価ができない患者や興奮した患者の疼痛評価に困難さを抱いていた。そのため、診療科を問わず適切な鎮痛管理を行えるシステムの構築が必要だと考える。現在の「鎮痛・鎮静プロトコル」にせん妄を加えたフローチャートを導入することで、医療者間の認識が統一でき、問題解決に必要なステップの可視化、行動の明確化ができると思われる。また、包括的指示によって看護師が参加する管理は有効であると示唆されており、フローチャートの導入は、看護師が患者の疼痛や疼痛評価を意識することにつながると考える。【疼痛緩和不足のジレンマ】は、『苦痛の原因を理解したい』『苦しむ患者を見ることへの葛藤』があり、人工呼吸器装着中の挿管患者は痛みを有する前提で看護師間、医療者間のディスカッションを行っていく必要があると思われる。【多職種のコミュニケーション・協働不足】は、『医師間のコミュニケーションの期待』『専門チームの支援への期待』があり、早期離床サポートチームが人工呼吸器装着患者の鎮痛管理においてリーダーシップを発揮することが求められている。
〔結論〕1)看護師は、人工呼吸器管理における鎮痛管理の問題として【システムの不備】【鎮痛評価の困難さと薬剤調整や薬剤効果の限界】【疼痛緩和不足へのジレンマ】【多職種のコミュニケーション・協働不足】と捉えていた。2)痛み・せん妄・興奮を合わせたフローチャートを導入する。3)看護師間、医療者間で疼痛のディスカッションを行う。4)鎮痛管理において早期離床サポートチームのリーダーシップが求められている。