第18回日本クリティカルケア看護学会学術集会

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一般演題

[O4] エンド・オブ・ライフケア

Sat. Jun 11, 2022 1:50 PM - 3:00 PM 第4会場 (国際会議場 21会議室)

座長:長岡 孝典(独立行政法人国立病院機構 呉医療センター)

2:38 PM - 2:49 PM

[O4-05] 集中治療室において終末期と判断された急性重症患者の全人的苦痛に対する専門看護師が行う高度実践看護

○白石 祐亮1、中村 美鈴2 (1. 東京慈恵会医科大学 大学院 医学研究科博士前期課程 先進治療看護学分野(クリティカルケア看護学領域)、2. 東京慈恵会医科大学 大学院 医学研究科 先進治療看護学分野(クリティカルケア看護学領域))

Keywords:終末期、全人的苦痛、高度実践看護

【目的】急性・重症患者看護専門看護師(以下CCNS)が,意識障害や鎮静により苦痛を訴えることができない急性重症患者において,集中治療室で終末期と判断されることで生じる全人的苦痛に対して,CNSの役割・機能を発揮し,どのような高度実践看護を行っているのかを明らかにし,看護実践への示唆を得る.
【方法】質的記述的研究デザイン.集中治療室における終末期看護に関する研究や書籍等の執筆,教育活動等を行っており,終末期看護に精通していると研究者が判断し,研究参加への同意が得られた10名のCCNSに半構造的面接法を実施した.インタビューでは,集中治療室において終末期と判断された急性重症患者の全人的苦痛に対する看護実践の事例,看護実践を行う上で必要と考えるCNSの役割等を聴取した.データの分析過程では得られたデータを質的帰納的に分析し,クリティカルケア看護学の研究者にスーパーバイズを受け,分析の真実性・信憑性を確保した.本研究の倫理的配慮として,東京慈恵会医科大学の倫理委員会の承認を得た上で実施しており,研究参加者には研究参加の自由意思の尊重,拒否する権利,個人情報の保護等を文書と口頭で説明し同意を得た.
【結果】研究参加者の集中治療室における経験年数は5-23年,平均15.6年,急性・重症患者看護専門看護師の資格取得からの年数は2-14年,平均7.9年.インタビューの所要時間時間は平均50分68秒,総インタビュー時間は506分8秒.集中治療室において終末期と判断された急性重症患者に生じる全人的苦痛に対する高度実践看護として,【患者を知りたいという気持ちを抱き,もてる手法を全て用いて患者に生じる全人的苦痛を汲み取るための情報を得る】,【終末期と判断された患者に生じる全人的苦痛に対して最善を模索し家族や医療者など患者の周囲にある力を用いて全身全霊で関わる】など,11のカテゴリが生成された.また,終末期と判断された急性重症患者に生じる全人的苦痛に対するCCNSの高度実践看護は,【過去や現在における自身の経験をリフレクションし,終末期と判断された患者の全人的苦痛に対する看護実践を洗練させる】など3つのカテゴリを根幹とし,患者の生じる全人的苦痛と家族の苦痛・苦悩に対する直接的ケアと教育や相談などの間接的ケアが相互に関連しながら存在し,積み上がりながら存在していることが結果として明らかになった.
【考察】CCNSが行なっている終末期と判断された急性重症患者に生じる全人的苦痛に対する高度実践看護における直接ケアは,患者に生じている全人的苦痛を多角的な視点を用いて捉えようと,それぞれの苦痛に関して情報を集め,情報を元にアセスメントを行なった上で実施されており,アセスメントや看護実践の中では,意識のない患者に対しても看護師の価値観を押し付けないように留意しつつ,患者に寄り添い,その人らしさに対して最大限配慮する実践であると考えられた.また,スタッフへの教育,ケアに関して相談を受けるなどの間接的ケアもそれぞれが患者に対する直接的ケアと関連性を持っており,CCNSはCNSとしての役割を複数同時に発揮し,患者に生じる全人的苦痛に対する看護実践を行っていることが推察された.
【結論】CCNSは患者に生じる全人的苦痛を汲み取るために患者を深く知る必要性を認識し,あらゆる手段を用いて情報を集め,アセスメントを行い,家族や医療者など周囲を巻き込みながら看護実践を行なっていることが明らかになった。また,「スタッフからのCCNSへのコンサルテーションの普及」,「スタッフへの教育の基礎資料としての活用」,「終末期と判断された患者の全人的苦痛に対するCCNSの看護実践への活用」など看護実践への示唆を得た.