第18回日本クリティカルケア看護学会学術集会

講演情報

一般演題

[O7] チーム医療

2022年6月11日(土) 15:30 〜 16:30 第7会場 (総合展示場 314-315会議室)

座長:山崎 友香子(信州大学医学部附属病院)

16:18 〜 16:30

[O7-05] タスクシフト/シェアにより変化する救急外来における急性・重症患者看護専門看護師の実践

○大田 麻美1、益田 美津美2 (1. 日本赤十字社 伊勢赤十字病院、2. 名古屋市立大学大学院看護学研究科 )

キーワード:タスクシフト/シェア、救急外来、急性・重症患者看護専門看護師

〔緒言〕近年,超高齢化社会や急病患者の増加により,地域包括ケアまでも行える救急医療体制の再構築が求められている.加えて,医師不足や医師の過剰業務是正の動きからタスクシフト/シェアについても検討が進められている.
〔目的〕本研究の目的は,タスクシフト/シェアにより変化する救急外来におけるCCNSの実践を明らかにすることである.
〔方法〕対象は,救急外来での業務に現在従事しているもしくは,特定行為研修開始後の2015年以降に救急外来業務に過去従事していたCCNSとした.研究デザインは質的記述的研究デザインとし,半構造的面接を実施した.分析方法は,木下の提唱する修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチ(Modified Grounded Theory Approach: 以下,M-GTA)の理論的基盤に沿い分析を行った.本研究は,研究者が所属する機関の倫理審査委員会の承認を受けて実施し,対象者には口頭と文書を用いて研究目的,個人情報保護を説明し同意書への署名をもって同意とみなした.
〔結果〕対象者は11名(男性4名,女性11名),CCNS経験年数は5.5±2.6年であった. 分析の結果,121概念,35サブカテゴリー,11カテゴリー,2コアカテゴリーが生成された.
救急外来のCCNSの実践の基盤となっているものは,【救急看護が変化してもCCNSが行う看護は揺るがず】,【救急患者の利益を看護の側面から追求し続ける】ことであった.CCNSはタスクシフト/シェアにより【看護の形が曖昧になりなんでも屋になることを危惧して】いた.一方で,CCNS自身も【患者にとってCCNSが特定行為をするか否かどちらが最適解かを思案し】,【CCNSの本質を見失うことなく組織の最適化を模索し】ながら,タスクシフト/シェアが持つ意味を探求していた.そして,看護師に対して【特定行為を行う看護師が医行為を行うとともに確固たる看護観を持てるようサポートし】,CCNS自身の経験から【自らの経験を生かして様々な立場にある看護師を支援する】ことに繋がっていた.さらに,【再構築の真っただ中にあってもチームで救急患者を救えるように多職種間の潤滑剤となり】,【病院や医師らの持つアイデンティティを理解した上で体制を整備して】いた.また,【過渡期にある救急医療の質を担保し変化をネガティブにしない働きかけ】を行っていた.
これらは,救急外来における《果たすべき役割の遂行》であり《ケアとキュアの融合により厚みを増す看護》へと繋がっていた.
〔考察〕CCNSは,自らが持つ能力や役割を生かし,CCNSの本質と変革者としての姿勢を見失うことなく,変化する救急医療体制において着実に働きかけ,ケアとキュアが融合した看護の提供へと導いていた.この医行為と看護ケアの融合は,クリティカルケア看護師の重要な専門性であり(井上, 2011),救急看護師が医行為を担うことは,看護の専門性を高め患者・家族に寄り添い続けることを可能にする看護に繋がっていくと言える.そして,タスクシフト/シェアをより患者に利益のある変化とするため法改正を含めた検討を続ける必要があり,そのためにも,看護の専門性とは何かを追求し,それを周囲と共有していく必要があることが示唆された.
本研究は,公益財団法人村田学術振興財団研究助成(No.M21助人007)を受け実施した.
〔文献〕井上智子. (2011). 看護師の役割拡大とクリティカルケア領域での未来像―特定看護師(仮称)創設の動きの中で―.日本クリティカルケア看護学会誌, 7(1), 1-7.