第18回日本クリティカルケア看護学会学術集会

講演情報

一般演題

[O9] 医療安全

2022年6月12日(日) 10:20 〜 11:20 第4会場 (国際会議場 21会議室)

座長:藤井 絵美(岡山市立市民病院)

10:32 〜 10:44

[O9-02] ICU看護師が抱く補助循環装着患者担当時の不安の実態

○池澤 友朗1 (1. 社会医療法人近森会 近森病院)

キーワード:看護管理、補助循環、教育、ECMO・IMPELLA・IABP

【目的】ICUで働く看護師は患者の重症度や環境の中にある緊張感により、過酷な状況に直面する機会が多く、看護実践におけるストレスが他の病棟より多いとされている。近年では医療機器の進歩などにより高度な医療が日常的に行われる様になり、ECMO、IMPELLA、IABPは集中治療に欠かせない補助循環装置として使用される頻度が多くなっている。補助循環を使用されている患者に関しては重症度が必然的に高くなり、合併症の併発や不幸な転機をたどることも多く、看護師の業務に関わる精神的苦痛は通常よりも大きくなると考える。今回、A病院ICUスタッフを対象に補助循環装着患者担当時の不安の実態を明らかにするため調査を行った。調査結果をもとに、今後のスタッフの業務・精神的サポートや教育に役立てていきたいと考えるため報告する。
【方法】A病院ICUスタッフを看護師38名に対し『経験』『知識』『トラブル対応』『準備性』にカテゴリー分けしアンケート調査を行った。A病院で採用されている補助循環のECMO、IMPELLA、IABPの3種に分類して集計を行い、不安の要因の考察を行った。また、本研究はA病院倫理審査に基づき研究・発表の許可を得た。
【結果】アンケート回収率87%(33/38)。対象の看護師経験年数は1年目から17年目(中央値6年目)で、ICUの経験年数は1年目から9年目(中央値3年目)。それぞれ補助循環を担当した経験はIABP96%、Impella49%、ECMO45%。そのうち担当する上で常時以上に不安をいだいているスタッフは、IABP87%、Impella93%、ECMO93%と担当スタッフの多くが不安を抱いている結果となった。補助循環に関する知識については経験回数が増えるごとに理解度が高くなる結果であった。主な不安の要因は「経験不足」「トラブル対応がわからない」「病態理解が困難」が約半数以上を占めていた。ECMOに関しては「人的サポート不足」を感じるスタッフが半数以上を認める結果となった。
【考察】いずれの補助循環も経験不足による不安が上位を占めた。A病院の2020年度の補助循環の症例件数はECMO26件、IMPELLA17件、IABP69件であり、その症例件数から担当機会が限られるため経験不足による不安が生じていると考えられる。補助循環に対する知識に関しては経験回数と相関して得ることができておりOn-the-job-trainingは有効であると考えられる。しかし、一定の知識を伴っていても不安の軽減には有効性を示さないことが示唆された。また、ECMOやIMPELLAなどの侵襲度の高い補助循環になるほど人的サポート不足による不安が明らかとなった。侵襲度の高い補助循環装着患者は必然的に重症度が高くなり、補助循環だけでなく人工呼吸器管理や血行動態管理など病態のアセスメントが複雑化する。そのため、機器の管理に割く時間が増えケアや対応に難渋し、不安を感じているのではないかと考える。看護師の配置の工夫や看護様式の変更、フォロー体制の工夫なども考慮し不安の軽減に努めていく必要があると考える。また、実際にはトラブルを経験するスタッフが少ないのも現状であり、不安の要因の一つとなると考える。現状では、経験不足やトラブル対応に対する積極的な取り組みを行ってこなかったため、管理体制の面も不安の要因となっているのではないかと考える。
【結論】補助循環装着患者の担当に関しては常時以上に不安を抱く実態が明らかとなった。今後は経験不足を補うための症例検討会やリフレクションの機会を設け、担当へ向けての準備性を高める工夫など対策を行っていく必要があると考える。スタッフのメンタルサポートも行いながら様々な工夫で不安の軽減に努め、安全な補助循環の管理を行っていきたい。