第18回日本クリティカルケア看護学会学術集会

講演情報

一般演題

[O9] 医療安全

2022年6月12日(日) 10:20 〜 11:20 第4会場 (国際会議場 21会議室)

座長:藤井 絵美(岡山市立市民病院)

10:44 〜 10:56

[O9-03] 院内迅速対応システムの導入・運営における看護師の工夫

○吉本 早由利1,2、江川 幸二2 (1. 神戸市立医療センター西市民病院、2. 神戸市看護大学大学院)

キーワード:院内迅速対応システム、看護師、導入・運営の工夫

〔目的〕
院内迅速対応システム(以下、RRS)の導入・運営において、院内迅速対応チーム(以下、RRT)に所属する看護師の工夫を明らかにする。
〔方法〕
ホームページ上でRRTの活動を公開している日本国内の施設から選定した9施設の看護師9名に対してオンラインによる半構造化インタビューを実施し、院内迅速対応システムの導入に至るまでの取り組み、運営における試行錯誤や現在の取り組み、今後の構想について質問した。インタビューデータを逐語録にしてコード化し、コードの本質的な意味の類似性に着目して抽象度を上げ、サブカテゴリー、カテゴリーの生成を行った。本研究は神戸市看護大学倫理委員会の承認を得て実施し、研究参加者によるメンバーチェッキングを行って分析結果の確実性を確保した。
〔結果〕
分析の結果、38サブカテゴリー、6カテゴリーが抽出された。カテゴリーを【 】で示す。 RRSに関心のある看護師がRRS導入を提案し、病院幹部とRRSの方向性を共有してトップダウンでRRSを導入することで【病院全体で組織的にRRSに取り組めるように働きかけ(る)】ていた。その看護師はRRTを結成し、RRS導入後は窓口となって相談を受け初期判断を行うという【RRTの活動の重要な役割を担(う)】っていた。そして、医療行為が必要な場合には【RRT看護師が医師と連携(する)】し、心停止に近い状態や治療方針を決定する段階にある場合、心肺蘇生を試みない方針が決定している場合にも対応することで、看護師だけでなく主治医の診療もサポートしていた。 RRT看護師は、積極的に病棟に足を運んで声をかけるなど病棟看護師が安心して相談できる関係を築き、相談内容に制限を設けずどんな相談にも対応していた。また、心停止や重症化を予防できた事例を病院全体に伝え、病棟看護師や主治医がRRTに相談することのメリットを感じられるようにして【病棟看護師や主治医がRRTに相談しやすい環境を作(る)】っていた。 RRT看護師は相談に対応するだけでなく、呼吸に関するインシデントを防ぐ、重症者の回復を促すという【心停止や重症化を予防する活動を(する)】していた。それらの活動を行うため、RRT看護師は【RRTメンバーが活動しやすい環境を作(る)】っており、急性期の分野に長け多職種との調整ができるメンバーでRRTを結成し、メンバー同士で協力したりRRT看護師が所属する部署や看護部のサポートを得たりしながら、専属や通常業務との兼務でRRTの活動を行っていた。
〔考察〕
RRSの導入・運営については、RRTを結成する医師や看護師のマンパワー不足、管理部門からのサポート不足、主治医の賛同や協力が得られない、病棟看護師がRRTに相談しづらい状況があり相談件数が増加しないなどといった問題が指摘されている。そのため、RRS導入を考えている看護師がRRSの目的や意義、その効果についてデータを用いて病院幹部に説明し、トップダウンでRRSを導入できるように働きかけることがスムーズなRRSの導入につながると考える。そのうえでRRT看護師が中心となってRRSの周知や病棟看護師への教育を行い、RRT看護師が病棟を訪れて直接相談を受けたり、病棟看護師が安心して相談できる関係を築いたりし、RRTが対応する事例を積み重ねて病棟看護師や医師がRRTに相談することのメリットを感じられるようにするといった工夫を行うことは、RRTへの相談件数を増加させ、多くの患者の安全を守ることに寄与する重要な取り組みであると言える。また、マンパワー不足からRRSを24時間365日稼働させることが困難な場合でも、RRTメンバーだけでなく多職種や多部門と連携し、当直医やICU看護師の協力を得て夜間休日の相談に対応することで、RRSを病院に定着させることができると考える。