第18回日本クリティカルケア看護学会学術集会

講演情報

一般演題

[O9] 医療安全

2022年6月12日(日) 10:20 〜 11:20 第4会場 (国際会議場 21会議室)

座長:藤井 絵美(岡山市立市民病院)

10:56 〜 11:08

[O9-04] 抜管失敗に至った1事例における対応の検証

○張 葉留菜1、金 姫静1、後藤 順一1、森内 陽子1 (1. 社会医療法人河北医療財団 河北総合病院)

キーワード:再挿管事例、M&Mカンファレンス

【背景】人工呼吸器装着期間の短縮は、患者のADL・QOLを改善することが報告されている。当院ICUにおいても、人工呼吸器からの早期離脱、抜管、さらに抜管後の観察を目的としたプロトコルを作成し運用している。しかしプロトコルを運用していても、抜管失敗が多いとされる72時間以内の再挿管事例は6.7%存在している。そのため、より確実な抜管前後の観察と評価が求められる。しかし今回、抜管失敗の判断が遅れ、その後の対応に時間を有した事例を経験した。この事例から、医師・看護師間でMortality & Morbidity conference(以下M&M)での検証を行い、改善策を検討した。
【目的】抜管失敗の判断とその後の対応に時間を有した事例に対してM&Mでの検証を行い、改善策を検討する。
【方法】対象の患者がICUへ入院した日から、再挿管までの5病日の情報を診療録から収集した。患者に関わった医療者からインタビュー調査を行い、聴取した情報をまとめ、関わった医師と看護師でM&Mを行い検証した。本調査研究は当施設倫理委員会の承認を得たうえで実施した。
【結果】1)事例紹介、患者は上腸間膜動脈症候群による嘔吐から誤嚥性肺炎をきたし、人工呼吸器管理となりICUへ入院した。2病日目に自発呼吸トライアルに成功し、3病日目に抜管した。抜管直後より、痰の喀出が困難であり、頻回な痰の吸引を必要としていた。抜管35時間後には痰の喀出困難と共に、酸素需要が上昇し頻呼吸を呈した。しかし医師へ抜管失敗の基準に該当したことを報告したのは、その17時間後であった。抜管56時間後に気道分泌物の貯留と低酸素により再挿管となった。
2)分析、M&Mを行った結果、認知エラーでは「間違った知識」の要因が関与していることが考えられ、看護師におけるアセスメント不足があげられた。また、72時間以内は再挿管リスクが高いという認識が不足していたことがあげられた。システムエラーでは「患者要因」「チーム要因」「教育要因」などがあげられた。患者要因では、患者は抜管失敗の基準に該当する分泌物過多や頻呼吸、低酸素血症を呈していたことがあげられた。チーム要因では、抜管失敗に対する医師と看護師とのディスカッションの不足があげられた。また、再挿管が行なわれた日は祝日で、担当医師は不在であった。そのため医師間での情報共有の不足もあげられた。教育要因では、再挿管の可能性を視野に入れた、アセスメントの教育が不十分であることがあげられた。
3)改善策、72時間以内の再挿管は抜管失敗であるという認識を常にもち、抜管後におけるアセスメントの教育と、抜管失敗の基準の周知が必要である。また、医師との情報共有と協議を密にすることが重要である。
【考察】抜管失敗による再挿管は、人工呼吸期間を延長し院内死亡率を上昇させることが知られている。そのため、抜管直後はプロトコルを用いて注意深く観察している。しかし今回の調査から、時間が経過し勤務者が交代してゆく中で、抜管後72時間以内の患者であるという認識が薄れてしまうことが考えらえた。また、医師は交代制のシフトで勤務をするため、担当医師が不在の場合、患者の経過を熟知している医師はいない。このことから、常に患者を観察しているICU看護師は、勤務帯の患者の経過だけにとどまらず、抜管からの経過を確認し続けることが重要であると考える。また、その情報を看護師・医師間で共有し、状態の変化について協議することが必要であると考える。
【結論】抜管からの時間経過を把握し、72時間以内は再挿管のリスクが高いという認識を持つ必要がある。また、継続した観察を医療チームで行っていけるよう、看護師・医師間での情報共有を行うことが今後の課題である。