第18回日本クリティカルケア看護学会学術集会

講演情報

パネルディスカッション

[PD4] 本当に実践できてる?ABCDEFGHバンドル

2022年6月11日(土) 11:40 〜 13:00 第8会場 (総合展示場 E展示場)

座長:古賀 雄二(川崎医療福祉大学)
   山田 奈津子(帝京大学福岡医療技術学部)
演者:剱持 雄二(青梅市立総合病院 集中治療室)
   小川 哲平(奈良県立医科大学附属病院)
   白坂 雅子(福岡赤十字病院)
   池田 優太(東海大学医学部付属病院 集中治療室)

11:40 〜 12:00

[PD4-01] ABCDEFGHバンドルのオーバービュー
−バンドルを実践していためのチーム作りのポイントを考えていく−

○剱持 雄二1 (1. 青梅市立総合病院 集中治療室)

キーワード:ABCDEFGHバンドル、チーム作り、心理的安全性

ABCDEバンドルとは、2010年前後から提唱され始めた人工呼吸器装着患者の管理において医原性合併症を減らす管理をバンドルで行う概念である(Balas MC,.2014。医原性合併症とは主に人工呼吸器期間の延長、せん妄、ICU acquired weakness(ICU-AW)、post-intensive care syndrome (PICS)のことを言う。近年、ICU患者のアウトカムは患者のQOLやADLの維持といったPICS を予防するケアが重視され、このABCDEバンドルがフォーカスされている。ABCDEバンドルでは、鎮静、せん妄、不動がPICSのリスクであることを強調しており、PICSを減らすために、ABCDEバンドルに「FGH」が加えられ(Harvey MA,.2016)、ABCDEFGHバンドルとなった。FGHの要素は、患者の状態改善によりICUから一般病床や他施設への移動を想定したものである。またABCDEFバンドルの遵守によって生存期間が延長し、せん妄が減少した(Barnes‒Daly MA,.2017)とする報告がり、ABCDEFバンドルは、PICS および PICS‒F の予防につながるものといえる。ABCDEFGHバンドルの実践は日常的なICUケアの本質と言っても過言ではなく、その本質的なケアを継続していくことが患者とその家族を回復させていくことに繋がると考える。一方で、このABCDEFGHバンドルを実践していくことの障壁として、1.患者の不安定さ、2.医師や医療スタッフの知識の欠如、3.プロトコルのわかりにくさ、4.多職種チームの協働が挙げている(Morandi A,.2017)。この報告ではバンドル順守率が50%前後と低いことが明らかになり、この要因として多職種チーム内のコミュニケーション、連携、調整が不十分である可能性が示唆された。このようなチーム作りには何が必要なのかと考えた時、あのGoogleが行なったプロジェクト・アリストテレス(C. Duhigg,.2016)が参考にできる。ここで言われたことは働き方や単にメンバーの能力の違い、優秀なメンバーが集まったチームが成功しているかというと実際はそうではなかったようである。チームを形成する上で成功のカギは「心理的安全性」で、「他者への心遣いや同情、あるいは配慮や共感」といったメンタルな要素の重要性である。心理的安全性と呼ばれる安らかな雰囲気をチーム内に育めるかどうかが、成功のカギなのだという。この心理的安全性と言うのは「自己開示」・「自己表現」・「自己認識」を促すことで、このような環境づくりをしていくことがチームの生産性を上げていくとしている。ABCDEFGHバンドルの実践は日常臨床におけるケアそのものである。これを実践していくためには多職種チーム連携が肝要であり、そのチーム内で常に核となる看護師がチーム作りに必要な要素を理解しておくことは極めて重要である。