第18回日本クリティカルケア看護学会学術集会

講演情報

プラクティスセミナー

[PS5] 敗血症性ショックのアセスメント

2022年6月11日(土) 14:00 〜 14:50 第2会場 (国際会議場 11会議室)

14:00 〜 14:50

[PS5-01] 敗血症性ショックのアセスメント

○菅 広信1 (1. 秋田大学医学部附属病院 看護部キャリア支援室)

キーワード:敗血症、アセスメント

最初にとある日の私の経験を紹介したい。70歳代後半の男性。疾患は食道がん。ロボット支援下胸腔鏡下食道亜全摘、3領域リンパ節郭清、胸骨後経路胃管再建術を施行した。手術時間 12時間11分であった。ロボット支援下とはいえ、食道がんの手術の身体への侵襲は大きい。術後、手術室で気管チューブを抜去したが、せん妄が出現。RASS+3、創部の安静を保てず、呼吸状態も悪化したためにICUで再挿管、人工呼吸器管理とした。術後2日目の夜であった。血圧が120mmHg台あったものが、徐々に低下しはじめた。侵襲の大きい手術は、血管透過性の亢進の為に血管内脱水となり、血圧が低下することがある。このようなときは、輸液量を増量し、ドパミン塩酸塩の投与を開始すれば、血圧は上昇するはずであった。しかし結果は逆に下がる一方であり、次の手段であるアルブミン製剤の投与を始めた。アルブミン製剤を投与することで、血漿浸透圧を上昇させ、血管外の水を血管内に引きつける効果を狙った。しかし、血圧は上昇しなかった。収縮期血圧65mmHg台の維持がやっとであった。更に気が付けば、SpO2は低下しはじめており、P/F比は150程度。患者は鎮静されていたが、呼吸回数が増加した上に大きい呼吸になっている。医師を含め我々は、明らかにいつもの手術侵襲による変化と異なることを理解した。そして。ノルアドレナリンの投与を開始することにし、これでも血圧を維持できない場合は、バソプレシンの投与も指示された。薬剤の準備や記録などしている内に体温が39℃前後になっていた。いや、もしかしたらもっと前から体温は上昇していたのかもしれない。緊急採血結果からβ-Dグルカン、90pg/mL、プロカルシトニン、10ng/mLと高値であり、真菌感染症による敗血症性ショックが濃厚であった。それにしても、血圧が低下してからの対応が全て、甘い対応に終始し、後手後手になってしまったことを否めず、もっと速くからできることはなかったのかと、後悔した。症例について、みなさんはどう思っただろう。「あるある」と思ったのか、「いやいやその対応はマズイだろう」と思ったのか気になるところだが、「あるある」が若干多いのではないかと推測している。敗血症性ショックに陥る前に、患者は様々な身体のステータスが変化しているはずである。ショックの5徴はその典型例で、「蒼白・冷汗・虚脱・脈拍不触・呼吸不全」とされているが、蒼白や冷汗は敗血症性ショックのときは、逆に温かいときもあり、判断が難しい時がある。また、虚脱は意識状態の変化を示すが、鎮静している状態では判断は難しい。脈拍不触は血圧が低下すれば起こりえるので、術後の浸透圧亢進だと思い込むこともある。呼吸不全も気胸や胸水や痰の貯留などでも起こりえる。つまり、敗血症性ショックはショックの5徴だけを考えていては、早い対応はできない恐れがある。敗血症性ショックへの対応では、敗血症性ショック1時間バンドルなどもあり、1時間以内の治療の開始に強いエビデンスは否定されているが、早期に治療を始めるという考え方は間違っていないはずである。
そこで、今回の症例のように後手後手にならないように、早期から何をモニタリングし、アセスメントするか?そして、治療を始めたあとも、看護師ができる適切な対応とは何かを考えながら説明していきたいと考えている。