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[SL1-01] 特定行為研修修了者は病院の人材になりえるか
キーワード:特定行為研修修了者
わが国では高齢化が進み、2025年にはいわゆる団塊の世代がすべて75歳以上(後期高齢者)となり、国民の5人に1人が75歳以上となることが予測されている。高齢化に伴い慢性疾患を抱える患者が増加し、医療のニーズに供給が追い付かないことが想定される。また、医師(勤務医)にも働き方改革が求められており、時間外労働の上限設定とともに、さまざまな労働時間短縮策に関する議論が進められている。その中でとくに重要視されている項目の1つが医師でなくとも可能な業務の他職種への移管(タスク・シフティング)があり、「特定行為に係る看護師の研修制度:特定行為研修」が2014年に創設された。本制度は、一定の診療補助を手順書(包括指示)に基づいて実施する看護師を育成する制度である。高齢者の増加とタスク・シフティングが重なったこともあり、育成制度が整備され、研修修了者も増加している。 当院は、一般財団法人で656床の地域中核急性期病院のひとつであり、平成28年には創立100周年を迎えた。1982年に日本初の経皮的冠動脈形成術(PCI)に成功し、国内有数の治療実績を積み重ねてきた。内科的治療のみならず、心臓外科手術に関しても国内有数の症例数をこなしている。集中治療室(ICU)は20床、CCU(HCU)20床、SCU15床、セミCCU(一般病棟)と数多くのユニットを要しているが、専従医がいるのはICUのみである。このような環境の中で、当院の特定行為研修終了者はわずか1名(本大会長)であるが、大車輪の活躍をみせている。当院における特定行為研修修了者の活躍の秘訣と今後の課題について、特定行為指導者と病院管理者(副院長、麻酔科・集中治療部主任部長)の立場から講演する。 特定行為研修修了者が活躍し病院の人材となるためには、本人の努力のみならず管理者側(看護部長、副院長、集中治療部長など)のマネジメントや支えが必要となることは言うまでもない。まず1人目が重要という考えのもと、人材の選定を行った。特定行為研修修了者が1名では大きな効力を発揮しにくいだけでなく、負担になるだけかもしれない。幸い最適任者が立候補した。これまで急性・重症患者看護専門看護師としてクオリティマネジメント科に所属し、NST(栄養サポートチーム)やRST(呼吸ケアサポートチーム)などで活躍し、多くの部署だけでなく医師からの信頼も十分であった。必要とされる部署に関しても、時間外勤務が多く業務のタスクシフトが望まれる心臓外科患者で開始することで、反対意見は出なかった。開始後は安全第一と手順の見直し、定期的な委員会の開催、包括指示を出す医師のみならず、看護師からの意見も聞き、マネジメントと仕組みづくりを行った。病院経営の点からは数値化することは難しいが、十分過ぎる成果を上げていると思われる。今後の課題としては、仕事が増えすぎていること、それに1人目の大車輪の活躍が逆に2人目以降の立候補にプレッシャーをかけている可能性がある点などである。