第18回日本クリティカルケア看護学会学術集会

講演情報

シンポジウム

[SY1] ルーティンケアの変遷

2022年6月11日(土) 10:00 〜 11:30 第8会場 (総合展示場 E展示場)

座長:植村 桜(大阪市立総合医療センター)
   安藤 有子(関西医科大学附属病院)
演者:露木 菜緒(Critical Care Research Institute(CCRI))
   小池 真理子(順天堂大学医学部附属順天堂医院)
   平良 沙紀(福岡大学病院)
   増田 博紀(社会福祉法人恩賜財団 済生会熊本病院)

11:10 〜 11:30

[SY1-04] モビライゼーション

○増田 博紀1 (1. 社会福祉法人恩賜財団 済生会熊本病院)

キーワード:早期リハビリテーション、ルーティンケア

クリティカル領域におけるリハビリテーションは、Post intensive care syndrome(PICS)とされる身体機能、認知機能、精神機能の維持・改善において大きな役割を果たす。近年、その重要性は高まっており、2018年からは特定集中治療室で「早期離床・リハビリテーション加算」が導入され、本年度からは特定集中治療室以外の治療室においても算定が可能となる。リハビリテーションでは「早期介入」が重要であり、不動による筋の変性や筋量の減少が始まるとされている疾患の新規発症、急性増悪または手術から48 時間以内の早期に介入を開始し、その後2〜3週間は介入を強化する。
集中治療における早期リハビリテーションガイドラインにおいて、安全かつ効果的に早期リハビリテーションを提供するための看護師の役割として、適応の判断と準備を高める援助、患者教育と心理的援助、多職種連携の調整、安全性の配慮、早期リハビリテーションとしての日常生活行動の支援が求められている。さらに、体位を変える・座る・立つ・歩くなど負荷を伴う運動実施だけではなく、食事・更衣・整容・排泄などの基本的日常動作や、読書・テレビ鑑賞・家族と過ごすなどの患者のニーズに応じた日常生活動作を早期リハビリテーションの一部として支援することが示されている。
クリティカル領域では、患者状態が不安定であることや人工呼吸器・補助循環装置など医療機器が使用されていることから、リハビリテーションの実施には多くのマンパワーを要する。集中治療室におけるリハビリテーションは、理学療法士を中心に提供され、看護師はその環境や多職種間の調整役を担っている施設が多いのではないだろうか。そのため、理学療法士が不足する環境でのリハビリテーション提供体制には課題が生じやすい。 最も患者に接する機会が多い看護師が、一定の水準を保ちつつリハビリテーションを提供できる体制を構築しておくことは患者に大きな利益となると考える。しかし、看護師のリハビリテーションに対する認識不足があることも否定できない。クリティカルケアに関わる看護師には様々な知識が必要であるが、薬剤や医療機器などの治療に関する知識に比べて、リハビリテーションに対する知識を十分に有する看護師は少ないと認識する。一方、集中治療領域で働く理学療法士のミニマムスタンダード作成を目的とした調査では、理学療法士には、専門的知識以外に集中治療に関わる治療やケアを広く理解しておくことが求められている。
職種間の技能に差はあるが、早期リハビリテーションを多職種協働によるシームレスケアとして安全で効果的に患者へ提供することは、クリティカルケアにおいて優先されるべきであると認識する。リハビリテーションと聞くと、患者を離床させた歩行や端座位訓練を想起されやすいが、身体機能だけでなく、呼吸機能や認知機能などを維持・改善・再獲得するために、様々な方法から患者に合わせた適切な方法を選択することが重要である。リハビリテーションが理学療法士の専門領域として定着してきた今、看護師が積極的、かつ主体的にリハビリテーションに参画するには、看護師の教育・業務整理だけでなく、多職種で協業するための情報共有を効率的に行う方法を見出すことが必要になる。そのため、医療者が十分に確保できない環境において、一定の水準を維持したリハビリテーションを提供するためにできる手技や情報共有について考察したため報告する。