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[SY14-02] 人工呼吸管理中の患者の求めるコミュニケーションとはなんだろう
Keywords:人工呼吸管理、会話、コミュニケーション、ニード
クリティカルケア領域において、人工呼吸管理は当たり前のように日々行われている。そして、ABCDEFバンドルが実践され、以前のように人工呼吸管理中の患者がDeep Sedationの中にあることもほぼみられなくなってきた。夜間は休息を促し、日中は覚醒を促してリハビリやWeaningに取り組む、そのことが早期に人工呼吸から離脱できる要因になっている。患者は覚醒している間、覚醒レベル・意識レベルの確認、身体に触れる際などに多くの医療者からの声を聞くことになる。人工呼吸管理中の患者は声が出せない。治療上必要なこととはいえ、LancePatakの研究によると、患者は人工呼吸管理中の体験を「型破りな環境に置かれた」「肉体的にも心理的にも苦痛がある」中で「内省しながら自分を励まし続けている」ことが語られている。そしてその中で彼らは自分のニーズを他者に伝えること、わかってもらうことに高いレベルの不満・ストレスを抱えていたこともわかっている。私たちは、これまで声の出せない患者のニーズをキャッチしようと工夫してきた。例えば、単語カード、文字盤や筆談、読唇、スピーチバルブへの変更、気管カニュレへの酸素吹き流しによる音声確保などが一般的である。なんとか、患者の想いや訴えを拾おうと工夫しているが、果たしてそれは十分な「会話」になっていただろうか。例えば単語カードを使用している場面では「寒い」「痛い」など患者が指したりうなづいたカードに対応するが、それ以上の患者の声を文章として拾うことは少ないように感じる。ともすれば、Closed Questionのようになりがちな中で私たちは、型破りな環境に置かれた患者のニーズを、思いを十分に汲み取ることができているのか。私たちが通常行っている手法は、コミュニケーションとして先の研究に表されている「自分のニーズを他者に伝えること、わかってもらうこと」に、十分対応できているのか。私は患者が単語のやり取りではなく、会話をしたいのだと強く実感した経験が何度もある。その場で聞き出したい、聞き取りたいと時間をかけても拾いきれずに患者を疲労させてしまうこともあった。神経難病のある患者はかろうじて動く指で電子パネルを操り、頚椎損傷の患者はナースコールを視線で操作する。ニーズを伝えたいその先には、例えば「あのね」や「それはね」などといった通常私たちが当たり前に会話に使用する言葉が多く表現されていて、カードでのやりとりとは明らかに違う言葉や表情のリレーがあった。本セッションでは、人工呼吸管理下にある患者とのコミュニケーションの臨床現状とコミュニケーション媒体を含めた課題について整理しながら深めていきたい。