13:50 〜 14:10
[SY4-03] 古くて新しいせん妄ケア 私たちができること
キーワード:せん妄ケア、ガイドライン、PICS、せん妄評価スクリーニング
私が、PICSを「ぴーあいしーえす」と言うと知ったのは2014年の2月のことでした。PICSには、皆様ご存知のように、せん妄を含めた認知機能障害、身体機能障害、精神機能障害、そしてご家族への影響が含まれます。PICSについての関心が高まる昨今、その予防やケアには少なくともせん妄に対するケアと重なる部分が多数あります。
せん妄という言葉は、ラテン語で「溝から出る」、「錯乱する」というdelirareに由来しているそうです。20世紀末に臨床に身を置いていたものとしては、せん妄を「ICU症候群」と呼び、心理的問題として捉えられ、性格特性に注目した研究があったことも記憶しております。
ICU症候群という用語を1つの例としても、歴史的に、急性期の精神機能障害を指す用語には、せん妄の他に脳症・急性脳障害・急性錯乱状態など用語が統一されておらず、研究データが取れない弊害があるだけでなく、私たちが医療を提供する際に、患者状態の伝達・検討する際のコミュニケーションにも影響があったと指摘されていました。そのような経緯から、学会で用語のコンセンサスが提言されたのが2020年であったということも驚きでした。
せん妄は、昏睡に近いレベルの低下から激しい興奮まで覚醒度が大きく変化するだけでなく、妄想や幻覚・気分の変化などの症状を有する場合もあり、患者自身そしてケア提供側にも多大な苦痛を与える症候群として表現されています。せん妄の持続時間は数日~数ヶ月と幅広く、患者の背景や影響する危険因子は多岐にわたり、発症には複数の病因が関与していて、現在でも様々な研究がなされていますが、これから検証されるべき事柄が多い領域でもあるようです。
一方、Ely先生達が2001年にCAM-ICUを発表され、その後鶴田良介先生達が2007年に日本語版CAM-ICUを発表されていらしたのに、私の勤務していたICUでCAMI-ICUを導入したのは2013年の時です。2014年にはわが国独自の医療体制を踏まえたJ-PADガイドラインが発出され、せん妄はスクリーニングツールを使用しないと見逃されるということ、看護師がせん妄モニタリングを行うのに適しているということ等、看護師のせん妄ケアにおける役割の重要性について日本語で明記されたのは新鮮でした。2009年の日本集中治療医学会での調査では、人工呼吸器使用患者へのCAM-ICU使用率は2~3%であった(2012)ところ、令和2年の調査(看護系学会等社会保険連合2019-2020年度研究助成成果 平成30年度診療報酬改定後の周術期病棟におけるせん妄・認知症評価の現状調査:古賀雄二)では、せん妄評価法(重複回答あり)では、ICDSC45.2%、CAM-ICU 57.7%、DST10.6%,と、単純な比較はできませんが、クリティカルケア領域でのせん妄スクリーニングツールでの評価は、この10年でかなり広まってきていることは、皆様も感じられていると思います。
せん妄患者に対する介入は、2018年発出のPADISガイドラインで多角的非薬理学的要素の介入が提言されており、これらは今まで私たち看護師が基本的看護として認知していた行為が提示されました。併せて日本クリティカルケア看護学会せん妄ケア委員会せん妄ケアリストver1.(2020年)は、クリティカルケア領域における急性・重症患者看護専門看護師の実践を抽出し、その要素とJ-PADガイドラインとPAIDSガイドラインの内容とを比較しリスト化したもので、より実践に即した内容となっていたと思います。クリティカルケア領域のせん妄の知見は大きく動いておりますが、これを実践とするには、病棟・病院全体で行う必要があります。医療はチームで提供せざるを得ないので、どのように広めていくかについて、当院の例を出しながら皆様と検討できればと思います。
せん妄という言葉は、ラテン語で「溝から出る」、「錯乱する」というdelirareに由来しているそうです。20世紀末に臨床に身を置いていたものとしては、せん妄を「ICU症候群」と呼び、心理的問題として捉えられ、性格特性に注目した研究があったことも記憶しております。
ICU症候群という用語を1つの例としても、歴史的に、急性期の精神機能障害を指す用語には、せん妄の他に脳症・急性脳障害・急性錯乱状態など用語が統一されておらず、研究データが取れない弊害があるだけでなく、私たちが医療を提供する際に、患者状態の伝達・検討する際のコミュニケーションにも影響があったと指摘されていました。そのような経緯から、学会で用語のコンセンサスが提言されたのが2020年であったということも驚きでした。
せん妄は、昏睡に近いレベルの低下から激しい興奮まで覚醒度が大きく変化するだけでなく、妄想や幻覚・気分の変化などの症状を有する場合もあり、患者自身そしてケア提供側にも多大な苦痛を与える症候群として表現されています。せん妄の持続時間は数日~数ヶ月と幅広く、患者の背景や影響する危険因子は多岐にわたり、発症には複数の病因が関与していて、現在でも様々な研究がなされていますが、これから検証されるべき事柄が多い領域でもあるようです。
一方、Ely先生達が2001年にCAM-ICUを発表され、その後鶴田良介先生達が2007年に日本語版CAM-ICUを発表されていらしたのに、私の勤務していたICUでCAMI-ICUを導入したのは2013年の時です。2014年にはわが国独自の医療体制を踏まえたJ-PADガイドラインが発出され、せん妄はスクリーニングツールを使用しないと見逃されるということ、看護師がせん妄モニタリングを行うのに適しているということ等、看護師のせん妄ケアにおける役割の重要性について日本語で明記されたのは新鮮でした。2009年の日本集中治療医学会での調査では、人工呼吸器使用患者へのCAM-ICU使用率は2~3%であった(2012)ところ、令和2年の調査(看護系学会等社会保険連合2019-2020年度研究助成成果 平成30年度診療報酬改定後の周術期病棟におけるせん妄・認知症評価の現状調査:古賀雄二)では、せん妄評価法(重複回答あり)では、ICDSC45.2%、CAM-ICU 57.7%、DST10.6%,と、単純な比較はできませんが、クリティカルケア領域でのせん妄スクリーニングツールでの評価は、この10年でかなり広まってきていることは、皆様も感じられていると思います。
せん妄患者に対する介入は、2018年発出のPADISガイドラインで多角的非薬理学的要素の介入が提言されており、これらは今まで私たち看護師が基本的看護として認知していた行為が提示されました。併せて日本クリティカルケア看護学会せん妄ケア委員会せん妄ケアリストver1.(2020年)は、クリティカルケア領域における急性・重症患者看護専門看護師の実践を抽出し、その要素とJ-PADガイドラインとPAIDSガイドラインの内容とを比較しリスト化したもので、より実践に即した内容となっていたと思います。クリティカルケア領域のせん妄の知見は大きく動いておりますが、これを実践とするには、病棟・病院全体で行う必要があります。医療はチームで提供せざるを得ないので、どのように広めていくかについて、当院の例を出しながら皆様と検討できればと思います。