14:35 〜 15:00
[SY5-02] クリティカルケア領域における終末期患者の家族が抱える苦痛
キーワード:クリティカルケア領域、終末期、家族、苦痛
クリティカルケア領域の対象となる患者は、突然の疾病や外傷、慢性疾患の急性増悪、術後の重篤な合併症など急激かつ複雑な変化を来す急性重症患者が多い。救命や機能維持を目的として、あらゆる治療、看護などが集中的・多角的に行われる。しかし、最善の医療介入が行われても限界があり、救命困難と判断され、終末期に至るケースもある。クリティカルケア領域における終末期は、発症や受傷から、数時間あるいは数日という短い期間で迎えることも少なくない。我々看護師は、急性重症患者の心身のケアに尽くすと同時に家族のケアにも取り組んでいるが、限られた期間での関わりに困難を感じることもある。
クリティカルケア領域における患者の家族は、患者の生命危機を認識したり、非日常的な療養環境に応じたりせざるを得ず、ストレスフルな状況におかれる。また、患者は鎮静や意識障害により、意思の表出が困難なことも多く、生命に関わる重要な意思決定は家族が代理で行うことになり、治療選択の葛藤、責任の重圧を抱えることもある。要因は様々であるが、ストレスフルな出来事により、家族は心理的な危機に陥りやすい。家族が、「頭が真っ白」と表現したり、同じ質問を繰り返したりするようなことを、よく経験するのではないだろうか。突然降りかかった患者の状況に動揺し、混乱や困惑を招き、正確に現状を認識することが難しくなりやすい。その結果、説明された情報処理が困難となり、過度の期待や悲観をもつ、ストレスに対する適切な対処行動がとれなくなる、などの反応が出る。ストレス反応としては、例えば、身体症状では、呼吸数の上昇、発汗、動悸、口喝、筋緊張、不眠などが現れ、精神症状では、不安や抑うつ、パニックなどが生じやすいといわれている。面会の時に、表情がこわばっていたり手を握りしめていたり緊張が強い様子がある、多弁あるいは無口、興奮を示す家族は少なくない。さらに、患者の死を意識した家族は、患者の喪失に対する強い悲しみや情緒的な苦しみを示す悲嘆反応も示す。悲嘆は正常な反応であるが、急性重症患者の終末期に特徴的な「予期していない死」は、家族の精神健康状態の悪化に影響し、死別後の複雑性悲嘆のリスクになるといわれている。悲嘆は、家族自身が悲嘆作業に取り組むことによって、心の整理を行い、時間とともに悲しみに適応していく作業である。一方で、複雑性悲嘆は家族自身だけの対処では乗り越えられず、重い精神症状や社会的な機能低下、日常生活に支障をきたし、専門的な介入が必要となる状態のことを指す。
急性重症患者の家族では、精神障害が高頻度に発症し、患者がICUを退室した後も症状が続くことが明らかにされてきた。これらはPICS-Fと呼ばれ、不安/急性ストレス反応、心的外傷後ストレス障害(PTSD)、抑うつ、複雑性悲嘆が挙げられている。
家族は、自身の大切な愛着ある家族の一員である患者が入院してから、様々なストレスから苦痛を抱えており、その反応は、患者との死別後も継続することがあり、家族の精神健康問題にも発展する。家族の苦痛の緩和を行うことは、その時の家族の安寧とその後の精神健康問題の予防の観点からも重要である。クリティカルケア領域の終末期では、家族のケアに取り組む時間的猶予はないかもしれないが、ケアは、そこにかける時間ではなく内容、質でカバーすることもできる。限られた時間の中で効果的なケアを実施するために、家族の苦痛をどのように捉え、ケアし、評価につなげていくか。本セッションでは、事例を通して皆様と考察していきたい。
クリティカルケア領域における患者の家族は、患者の生命危機を認識したり、非日常的な療養環境に応じたりせざるを得ず、ストレスフルな状況におかれる。また、患者は鎮静や意識障害により、意思の表出が困難なことも多く、生命に関わる重要な意思決定は家族が代理で行うことになり、治療選択の葛藤、責任の重圧を抱えることもある。要因は様々であるが、ストレスフルな出来事により、家族は心理的な危機に陥りやすい。家族が、「頭が真っ白」と表現したり、同じ質問を繰り返したりするようなことを、よく経験するのではないだろうか。突然降りかかった患者の状況に動揺し、混乱や困惑を招き、正確に現状を認識することが難しくなりやすい。その結果、説明された情報処理が困難となり、過度の期待や悲観をもつ、ストレスに対する適切な対処行動がとれなくなる、などの反応が出る。ストレス反応としては、例えば、身体症状では、呼吸数の上昇、発汗、動悸、口喝、筋緊張、不眠などが現れ、精神症状では、不安や抑うつ、パニックなどが生じやすいといわれている。面会の時に、表情がこわばっていたり手を握りしめていたり緊張が強い様子がある、多弁あるいは無口、興奮を示す家族は少なくない。さらに、患者の死を意識した家族は、患者の喪失に対する強い悲しみや情緒的な苦しみを示す悲嘆反応も示す。悲嘆は正常な反応であるが、急性重症患者の終末期に特徴的な「予期していない死」は、家族の精神健康状態の悪化に影響し、死別後の複雑性悲嘆のリスクになるといわれている。悲嘆は、家族自身が悲嘆作業に取り組むことによって、心の整理を行い、時間とともに悲しみに適応していく作業である。一方で、複雑性悲嘆は家族自身だけの対処では乗り越えられず、重い精神症状や社会的な機能低下、日常生活に支障をきたし、専門的な介入が必要となる状態のことを指す。
急性重症患者の家族では、精神障害が高頻度に発症し、患者がICUを退室した後も症状が続くことが明らかにされてきた。これらはPICS-Fと呼ばれ、不安/急性ストレス反応、心的外傷後ストレス障害(PTSD)、抑うつ、複雑性悲嘆が挙げられている。
家族は、自身の大切な愛着ある家族の一員である患者が入院してから、様々なストレスから苦痛を抱えており、その反応は、患者との死別後も継続することがあり、家族の精神健康問題にも発展する。家族の苦痛の緩和を行うことは、その時の家族の安寧とその後の精神健康問題の予防の観点からも重要である。クリティカルケア領域の終末期では、家族のケアに取り組む時間的猶予はないかもしれないが、ケアは、そこにかける時間ではなく内容、質でカバーすることもできる。限られた時間の中で効果的なケアを実施するために、家族の苦痛をどのように捉え、ケアし、評価につなげていくか。本セッションでは、事例を通して皆様と考察していきたい。