第22回日本救急看護学会学術集会

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一般演題

トリアージ

[O3] 一般演題3

[O3-08] 院内トリアージの質の向上に向けた取り組み
ー院内トリアージに対するアンケートよりー

○日浦 拓哉1、大場 雄太1、大泉 恵未1 (1. 大阪府済生会中津病院)

Keywords:トリアージ、JTAS、現状調査

【背景】
 当院では、2015 年から夜間・休日のウォークイン患者に対し JTAS を用いた院内トリアージを導入したが、全ウォークイン患者の 10%程度に留っている。本研究では、現在の問題点を明らかにすることで実施率の向上と 正確性を目指したい。
【目的】
 アンケート調査を行い現状を明らかにし、改善方法を検討する。
【方法】
 2019 年 10 月に全看護師 15 名にトリアージの必要性、判断基準及び問題点に関してアンケートを行い、14 名から回答を得た(内トリアージナース 4 名)。得られた結果を集計・分析し、考察を行った。
【倫理的配慮】
 目的外使用禁止、匿名性確保など書面で説明し、回答をもって同意を得られたものとした。看護部倫理委員会 の承認を得た。
【結果】
 「院内トリアージを継続するにあたり、トリアージを全患者に実施することが困難と感じていることはありま すか?」について「はい」が 100%であった。困難に感じる点として「人的環境」では、複数業務(6 名・42.9%)、 「施設関連」では、待合室でプライバシーが守れない(6 名・42.9%)、「患者関連」で患者の多様化とウォークイ ン患者の増加(4 名・28.6%)、「認識」では患者・家族からのご意見や質問につながる(6 名・42.9%)などがあっ た。またトリアージナースのみを対象とした「院内トリアージを実施せずに診察の順番を変更することはありま すか?」では(3 名・75%)が「はい」と回答し、主な理由としては、問診表の「主訴や症状を聞いてすぐに診察 が必要だと思ったから」や「診察のため呼び出しにいくが待合室にいない」があった。
【考察】
 院内トリアージの必要性を認識しているが、実施率は 10%程度に留まっている。原因としては、複数業務であることや、待機スペースの問題、患者の多様化がアンケート結果の上位に挙がった。複数業務は、リーダー業務 (受診相談や救急搬送の電話対応、コスト管理、スタッフ采配)とトリアージ業務であり、これを改善するには リーダーの業務整理が必要である。そして、リーダー以外にトリアージ担当ナースを配置し、トリアージ業務に 専念できる環境を作ることである。患者の多様化では、相談や問い合せ件数の増加がトリアージに行けないこと に繋がっており、業務整理による改善が期待できる。また他患者がいる待合室でのトリアージはプライバシー保 持が困難であり、ハード面での改善要素もあるとわかった。さらに、トリアージ後の待ち時間や受付順変更が、 「患者・家族からのご意見や質問につながる」とトリアージを躊躇する要因になっていた。そして問診表のみで 診察順番を変更するトリアージナースが多いことも明らかとなった。まずは患者に接触して第一印象を観察する ことは必要であり、今後は個人差を減らす取り組みや教育機会を増やし、トリアージの質向上につなげたい。ま た待合室の構造上の問題、患者へのトリアージの説明など当院の救急受け入れ体制を検討していく要素も多いと 感じた。
【結論】
  トリアージの実施率が低い原因として、複数業務であることに加え、患者の多様化や待機スペースの要因が明らかになった。複数業務に関してトリアージ専従ナースを設け、業務分担をしていく。またトリアージの質につ いては、標準化を図るために JTAS アプリを導入・使用し、教育機会を増やす必要を感じた。夜間・休日勤務の 終了時に実施件数をスタッフ間で報告することが意識変容を生み、実施率の増加も期待したい。