第22回日本救急看護学会学術集会

Presentation information

一般演題

トリアージ

[O3] 一般演題3

[O3-11] 救急外来におけるキャリア開発ラダーレベルに応じたトリアージ教育の導入

○佐藤 幸子1、曽根 和美1、佐藤 智之1 (1. 大崎市民病院 救命救急センター 救急外来)

Keywords:院内トリアージ、段階的教育、救急外来

【はじめに】
 A病院救急外来は、緊急度・重症度の判断において標準化された指標や客観視可能な教育体制が整備されておらず、問診を行う看護師の経験値や知識など個人の差異があり、判断に統一性がない現状があった。そこで院内トリアージを導入するにあたり、実践能力に応じた段階的な教育が必要であると感じ、院内教育として採用しているキャリア開発ラダー(以下キャリアラダー)毎に独自の到達目標を設定し教育を開始した。そこで教育導入後の変化を報告する。
【目的】
 A病院救急外来看護師が、キャリアラダーに応じた知識・技術の習得を目的としたトリアージに関する教育を受けたことによる習得度の変化と今後の課題を抽出する。
【方法】
 救急外来看護師28名の院内キャリアラダーレベルから1・2・3の3段階に区分し到達目標を設定。令和元年7月1日~12月31日まで6ケ月間に救急外来を受診したウォークイン患者2258名に対し、救急外来看護師が独自のトリアージ用紙(第1印象での緊急・低緊急2段階評価)を使用し緊急度判定を実施。トリアージ用紙の記載内容を適切・不適切に分類後、単純集計し目標達成率と記載内容の変化について検証した。
【倫理的配慮】
 対象者へ研究の主旨や方法を強制力が働かないよう十分配慮した上で書面と口頭で説明し、同意書への署名・提出をもって承諾を得た。また、データは個人が特定されないよう留意した。A病院看護部倫理委員会の承認を得ている。
【結果】
 各トリアージレベルの記載内容における到達目標達成値はレベル1で100%、レベル2で97.5%、レベル3で98.3%となり概ね達成していた。またトリアージレベル毎でも記載内容に変化が認められた。レベル1は観察項目が複数記載から焦点化した観察となり判定理由も文章表現から簡素化していた。レベル2で第1印象と主訴から緊急度判定に関する内容の記載が増加した。レベル3は第1印象・自覚症状や他覚所見から仮説も含めた総合的な評価ができていた。
【考察】
 各トリアージレベルで教育開始後6ケ月での目標達成度の差は認められず記載内容も概ね適切であった。これはキャリアラダーに応じた個々の実践能力が教育前より習得できており、現状の実践能力に対し目標設定が低く、また常に救急看護を遂行するという環境的要因も目標達成の一因であると推察する。レベル1は助言を受けながら第1印象評価をすることで、的確に患者を観察するスキルが習得できたと考える。レベル2は2段階でのトリアージプロセス教育を実施したことで、第1印象と主訴から緊急度を捉える能力の向上が図られた。レベル3はこれまでの経験値や多角的に情報収集する能力や臨床推論・予測的判断能力に加え、思考過程を可視化したことでトリアージを意識した記載内容へと変化が認められた。今回はトリアージ教育の構築過程において緊急度判定を第1印象での2段階評価と設定し検証したため、十分なデータが得ることが困難な症例もあり客観的な判定や評価に限界があった。今後は緊急度判定支援システム(JTAS)を導入した場合の変化についても検証し、トリアージ体制の整備と実践能力の向上に向けた教育体制の再考が課題である。
【結論】
 キャリアラダーレベルに応じたトリアージ教育は各レベルで到達目標が達成し、記載内容の変化から有効性が示唆された。