第22回日本救急看護学会学術集会

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一般演題

トリアージ

[O3] 一般演題3

[O3-12] トリアージ訓練を取り入れた院内トリアージ質の向上への取り組み

○星川 美穂1、板橋 智也1、石川 智子1、星 智美1、小田 博子1 (1. 仙台市立病院)

Keywords:トリアージ、机上訓練、シミュレーション

【はじめに】A病院救命救急センター(以下救急外来)は1次救急から3次救急の救急車・ウオークインの患者と合わせて、2019 年度で14719人を受け入れている。緊急性の高い患者が混在している状況にあり、平成24年より緊急度判定支援システム(以下JTAS)を取り入れ院内トリアージを実施してきたが、質の向上への取り組みが必要だった。今回トリアージ訓練を実施することでトリアージの質の向上につながるのではないかと考え取り組んだ。【目的】トリアージ訓練を行い、トリアージの質の向上につなげる。トリアー訓練の成果を検証・評価しさらなる質向上のための教育を考察する。【倫理的配慮】看護部の承諾のもと実施し、研究で得られたデータは個人が特定できないように配慮した。トリアージテストの提出をもって研究に同意が得られたものとした。【研究方法】研究期間:2019年3月~2020年1月 方法:①訓練前に院内トリアージを実施している看護師24名を対象に、トリアージについて独自に作成したテストを実施した。②救急外来看護師を対象に、トリアージ訓練として、机上訓練とシミュレーションを各4回・合計8回実施した。③トリアージ訓練実施後に、訓練前と同じ内容のテストを再度実施した。④事後検証期間として訓練前の2019年4月~5月、訓練後の2019年12月~2020年1月とした。⑤事後検証はトリアージナースの認定を受けた看護師を中心にJTASを用いて実施した。【結果】トリアージ訓練の参加回数は1人あたり1~6回で平均2.7回だった。テストの回収率は訓練前100%の回収(24名)、訓練後73%の回収(16名)だった。①トリアージテスト結果:訓練前のテストの中央値(四分位範囲)は15点満点中9点(6.5点~11点)であり、訓練後は11.5点(8.25点~13点)だった。訓練前後のテストについてマンホイットニーのU検定を実施したところp<0.222で有意差はなかった。②トリアージ事後検証:訓練前後でアンダートリアージ(以下UT)率が低下したが、オーバートリアージ(以下OT)率は増加した。UT件数についてχ2検定を実施したところ、p>0.007で有意差が見られた。【考察】訓練の前後でテストの平均点の上昇とUT率の低下が見られた。このことは、訓練の中でトリアージの基礎知識を講義形式で行い、トリアージ判定のプロセスやJTASの使用方法を学習できたことが一因と考える。またシミュレーションにおいては、実際にあった症例をもとに実施できたことで、訓練の内容が身近なものとして捉えられ体験が知識とつなげて深めることができたのではないかと考える。一方でOTの増加につながってしまった。これはトリアージの講義の中で、患者の状態で判断に迷うときは安全を優先して、UTよりはOTを容認する説明をしたことや、アセスメントに対する自信のなさから患者の安全を担保するためにOT判定傾向になったと考える。しかしOTの判断は、トリアージの精度としては望ましいものではなく、適正にトリアージするための一つの過程として捉えることができる。今回の訓練を通して、トリアージについての認識が高まり、トリアージに対する基礎知識の理解は得られたが、アセスメント能力向上のためには訓練のみではなく、個々の学習が必要になる。今後の課題として、トリアージ精度向上のためのアセスメント能力を養う訓練の検討や、事後検証のフィードバック体制の確立を行い、継続した訓練の取り組みによりさらなる質の向上につながると考える。