第22回日本救急看護学会学術集会

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一般演題

トリアージ

[O3] 一般演題3

[O3-13] A病院における2018年度院内トリアージ検証結果に対して行った取り組み後の成果

○北川 誠也1、井上 真弓1、田中 由美1 (1. 地方独立行政法人 佐賀県医療センター 好生館)

Keywords:院内トリアージ、JTAS

【はじめに】
 当院は、2010年より休日・夜間に救急外来を受診した患者(以下walk in患者)に対し、緊急度判定システム(JTAS)を用いて、院内トリアージを行い、実施率は現在100%である。
 2018年7月~12月において、院内トリアージを実施したwalk in患者5,018名に対し、トリアージ検証を行い、アンダートリアージ(以下UT)は44名(UT率0.87%)、オーバートリアージ(以下OT)は45名(OT率0.89%)であった。年齢別で区分すると、0~10歳未満の乳幼児~小児の患児が全体の35.47%を占め、特に3か月~3歳未満の呼吸器系の症候で来院した患児でUTが約半数発生していた。そのため、小児のUT減少に向け、①小児科医師による解剖学的特徴に焦点をおいた勉強会、②救急看護認定看護師による小児トリアージの勉強会を開催した。また、全体のUT減少に向け、③トリアージシートの変更、④検証会をトリアージナース主体の事後検証会へ変更した。
 今回、UT減少に向け取り組んだ後、6か月間の院内トリアージをJTAS基準に沿い再評価し、その結果から取り組みの成果を報告する。
【目的】
A病院における2018年度の院内トリアージ検証結果に対して行った取り組み後の成果を明らかにする。
【方法】
期間:2019年10月~2020年3月
対象:院内トリアージを実施したwalk in患者4,873名。
データの収集方法:当院の救急外来一覧表の入力画面より、「トリアージレベル」「選別理由」「主病名」「医師の診察記録」を参照し、救急看護認定看護師2名によりJTASの緊急度判定の基準に基づき相互評価し、UT・OTを抽出。
倫理的配慮:当院の倫理委員会の承認を得て、個人が特定されることがないように配慮。
【結果】
 全体の検証結果は、トリアージレベルⅢが1,860人(38.17%)、トリアージレベルⅣが2,382人(48.88%)であり、Ⅲ、Ⅳが約90%を占め、患者4,873人中、UTは32名(UT率0.66%)、OTは22名(OT率0.5%)であった。年齢別で区分すると、0~10歳未満の乳幼児~小児の患者が全体の約30%を占め、UT率の内訳として3ヵ月~3歳未満、3~10歳未満がそれぞれ12.50%であった。OT率の内訳は3か月~3歳未満で36.36%と最も高い割合となっていた。選別理由で分類を行うと、呼吸器系のカテゴリーのUT率の割合が全体で高く、小児のUT率も呼吸器系で高い値を示したが、3歳未満のUT発生はなかった。
【考察】
 当院の来院患者の傾向として、トリアージレベルⅢ(準緊急)・Ⅳ(低緊急)の患者が全体の約90%を占め、JTASⅢに該当する30分以内に診療を開始するべき患者が存在していることが示唆された。前回の検証では、UT率0.87%、OT率0.89%とトリアージ検証に関する先行研究と比較し、高い割合であった。今回の検証では、UT率、OT率ともに減少を認め、呼吸器系の症候で来院された3か月~3歳未満の患児ではUTの発生はない。これは、前回の検証後に行った小児に関連した2つの勉強会により、小児の解剖学的特徴を理解し、疾患の季節性や流行期などを考慮した上で、呼吸数や呼吸状態の評価に重点をおいたトリアージがなされた結果と考える。また、検証会の方法をトリアージナース主体の形式へ変更したことで、自身のトリアージを客観的に捉え、内省することでトリアージの経験を学びの機会とできたことも要因として考えられた。今回の研究結果より、小児に重点をおいた勉強会、検証会の形式変更は効果的であったと考える。