第22回日本救急看護学会学術集会

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一般演題

トリアージ

[O3] 一般演題3

[O3-14] トリアージの質の向上に向けて
~補足因子とフィジカルアセスメントを強化した取り組み~

○高橋 優美1、木村 典子1、阿部 徳子1、後藤 郁子1、神原 智美1、篠崎 克洋1、久下 淳史1、屋代 祥典1 (1. 山形市立病院済生館)

Keywords:トリアージ

【目的】救急外来での患者トリアージは、2018年度の院内トリアージ実施料の改定にも反映されている通りその必要性がさらに高まってきており、トリアージの質の向上が求められている。当施設の救急外来では2014年度から緊急度判定システム(以下JTAS)を基本とした患者トリアージを行っているが、事後検証や質の評価について明確になされていなかった現状がある。そこで、JTASとフィジカルアセスメントの学習会がトリアージ精度の改善ににつながったか腹部症状を主訴に救急外来受診患者について検討したので報告する。【対象】救急外来を受診し、救急外来看護師によるトリアージを実施し得た、救急外来受診患者2018年度1037症例、2019年度1216症例を検討した。【方法】2019年度の学習会内容1.腹痛を主訴とした患者の症例で症状解析ツールであるOPQRST.SANPLERを活用し、フィジカルアセスメントを含めた学習会の実施2.JTASの補足因子(呼吸.循環.体温.意識レベル.痛み)について読み合わせを10回/月5分程度実施3.救急認定看護師とトリアージ認定看護師と救急外来看護師1名が低緊急で入院になった15症例の問診入力内容の事後検証を実施し、救急外来看護師にフィードバックを行った4.2018年度と2019年度を比較検討した①救急問診票入力率②準緊急、低緊急のトリアージ判断割合③アンダートリアージ率【倫理的配慮】得られた情報は個人が特定されないように配慮した。当院の研究倫理委員会の承諾を得た【結果】①救急問診入力率の平均値64%から91%へ上昇②トリアージ判断割合は準緊急44%から53%上昇、低緊急48%から34%低下③アンダートリアージ率は準緊急16%から9%低下、低緊急19%から14%低下であった。【考察】院内トリアージは治療を受ける必要がある傷病者の緊急度や重症度を判定し、適切な治療介入のタイミングを決定するうえで必要な診療前評価である。腹痛は、自然に症状が治まる状態から、緊急手術を要する状態まで重症度の幅が広い。フィジカルアセスメントにおいてはまず痛みの部位を特定すること、痛みの程度、持続時間等が重要になってくる。今回の検討で、腹部症状を主訴に救急外来受診患者の救急問診入力率、トリアージレベル判断、アンダートリアージ率を評価したが、いずれも改善が認められた。その要因として、学習会での、具体的評価方法の獲得とその意義の周知による救急外来看護師の行動変容が示唆されたと考えられる。今回の結果からは、救急問診表の入力がまだ低い項目もあり、全項目入力できていない問題もある。バイタルサインのみの評価、看護師独自の判断、情報不足によるトリアージ判断では重症患者を見逃してしまう可能性がある。トリアージ過程には重症感から緊急度判定に至るまで問診によって得られた情報をもとに、アセスメントを繰り返さなければならない。今後もトリアージの質の向上にむけて、事後検証を行い、救急外来看護師にフィードバックを繰り返していくことが必要である。【まとめ】事前学習での具体的評価方法の獲得とその意義の周知による救急外来看護師の行動変容が示唆された。トリアージの質の向上には学習会や事後検証とフィードバックの継続が必要である。今後も救急外来受診患者に対して迅速に緊急度、重症度判定しなければならないため、的確かつ効率的にフィジカルアセスメントを行う能力を高めていく。