第22回日本救急看護学会学術集会

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一般演題

終末期医療

[O6] 一般演題6

[O6-06] 三次救急病院での「人生の最終段階における医療・ケア」を医療チームで考える

○垣内 寛子1、坂尻 沙苗1 (1. 北海道大学病院 HCU・救急部ナースセンター)

Keywords:終末期医療、チーム医療

【目的】平成30年度に厚労省よりACP(アドバンスケアプランニング)に「人生会議」との愛称が決定され、人生の最終段階における医療・ケアを積極的に考える意識が高まっている。その中で、三次救急で搬送された直後より患者の家族から、延命治療を望まない旨を表出される場面も増加した。A病院救急科では、終末期医療に関する治療方針の検討を、201X年Y月より、厚労省の「人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン」に基づく院内の指針(以下院内指針)に則り行うこととした。それ以降に医療チームとして、人生の最終段階やそれに近い状況での医療・ケアの提供に関して直面している現状と課題を明らかにする。
【方法】201X年Y月~2020年2月までの期間にA病院救急科で診療を行った患者のうち、終末期医療の提供がなされたケース全体に関して、診療録より患者および家族の意思表示、院内指針に則った医療チームでの方針検討の状況を抽出する。医療チームで行ってきた対応の傾向を振り返り、課題と考えられることを考察する。
【倫理的配慮】今回は個別のケースに関する細部の分析ではなく、部署で対応したケース全体に関する分析を行う。所属施設の自主臨床研究審査看護部委員会の承認を得た。
【結果】A病院救急科では、集中治療と救急医療を「先進急性期医療センター」として実践し、センター独自の終末期医療のあり方に関する指針を用いてきたが、診療体制変更に伴い201X年Y月より、一般病棟、HCUにおいて診療を行う救急科入院患者に対しては院内指針に則り対応することとした。それ以降、院外心停止で搬入され自己心拍再開となった患者のうち、遷延性意識障害や脳死とされ得る状態に陥った患者は54%であり、家族が病状説明の場で延命治療を希望しないと表出した事例は37%であった。また、搬入前の病歴、年齢、家族からの推定(代理)意思表示を踏まえ、DNARの承諾や治療内容の縮小等に関するチームカンファレンスが45%に実施されていた。遷延性意識障害であるとの説明時、意識が戻らないのであれば、と「延命治療の中止」を希望するケースもあるが、厚労省のガイドラインは、生命を短縮させる意図を持つ積極的安楽死を対象外としており、必ずしも意向に沿えない現状がある。加えて、A病院救急科においては、搬入後、ICUまたはHCUへ入院となり、病状に応じて院内指針に則った医療チームでのカンファレンスが行われる。しかし、終末期医療の導入を医師・看護師を合わせた医療チームで決定した後に一般病棟へ転棟すると、看護チームが異なるため、転棟先で再度カンファレンスが開催されるケースがあった。
【考察】意識状態の回復が困難な場合に家族より「延命治療は希望しない」との表出を受けることが多いが、医療者側としては、生命を短縮させる意図を持つ積極的安楽死につながる行為は不可能との考え方から、遷延性意識障害で人工呼吸器管理を要する患者に対する医療を「延命治療」とは位置づけにくい現状がある。3次救急病院として高度医療を提供可能な環境においても、それまでの疾病プロセスや価値観を知り、どこからが「延命治療」かを共に考える必要がある。また、終末期医療の導入が決定され、実施に向けて家族と合意形成がなされた後に、転棟を理由に再検討が行われることは患者家族に対して負担となり得るため、予め転棟先となる一般病棟のスタッフもまじえた話し合いを行う必要がある。