第22回日本救急看護学会学術集会

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一般演題

看護教育

[O9] 一般演題9

[O9-04] 初療における看護師の予測性と不安ーホットライン情報から作成したチャートの効果ー

○清水 翔平1 (1. 東京都立多摩総合医療センター)

Keywords:初療室

Ⅰ.背景:本研究の目的は、ホットラインの主訴及び付随情報から疾患を判別するチャートを作成し、チャートを使用して予測を立てていくことで初療室看護師の予測性が向上し、看護師の不安軽減に関与するかどうかを明らかにする。

Ⅱ.方法

1.研究デザイン:介入研究

2.調査内容
①対象者の背景:看護師歴、初療看護の経験歴、初療認定看護師の有無、(学習会実施後のアンケート)初療における看護の実施回数
②予測性:自作の予測性のテスト。
③不安:状態-特性不安尺度(STAI-fromJYZ)。

3.介入方法

①チャートの作成:A病院初療室に搬送される患者で件数の多い呼吸困難、意識障害、交通(転落)外傷、ショック、胸痛の5つの主訴に関するものとした。
②チャートの使用:チャートの使用については、1人あたり2回の学習会において指導を行った。また、初療室にチャートを掲示した。

4.倫理的配慮:本研究はA病院の倫理委員会の承認を得て実施した。研究対象者には研究の目的と方法、研究への参加は自由意思によるものであること、得られたデータは本研究以外には使用しないこと、プライバシーの保護、結果を学会で発表することについて書面で説明し、同意書に署名を得た。

なお、演題発表に関連し開示すべきCOI関係にある企業・組織及び団体等は無い。

Ⅲ.結果:回収された質問紙は介入前後ともに33件(回収率100%)で全てが有効回答であった。

1.対象者の背景:看護師経験年数は4~32年(平均14.76年±7.84年)であった。初療看護師経験年数は0~14年(平均4.48年±3.45年)であった。学習会後の初療看護件数は0~15回(平均3.39年±2.98年)であった。

2.予測性:介入前の予測性のテストの平均値は13.70点±2.47点、介入後の予測性テストの平均値は15.03点±2.59点と介入後の方が高く、有意差が認められた(t(32)=-3.645、p<0.05)。介入後に予測性が向上していることが分かった。

3.不安:STAI(状態不安)の得点の平均値は、介入前が58.27±10.34点、介入後が54.21±11.23点と介入後の方が低く、有意差が認められた(t(32)=2.245、p<0.05)。介入後に状態不安が減少したことが示された。

4.予測性と不安の関連:介入前の予測性と介入後の予測性との間で比較的強い正の相関が認められた(r=0.656)。また、介入前の予測性と介入前の状態不安(r=0.626)及び介入後の状態不安(r=0.503)との間に、比較的強い負の相関が認められた。

Ⅵ.考察

1.予測性:チャートを用いた介入後の方が高く、有意差が認められた。今回、ホットライン情報から疾患や病態を推測していくといったトレーニングを実施したが、このトレーニングは経験不足や苦手な部分を補うことができ、予測性の向上に効果があったと考える。

2.状態不安:チャートの使用により不安が軽減した。理由として、ホットライン情報からいくつかの疾患を予測することで、漠然としていた患者像をより具体的に捉えてそれに引き続く処置をイメージすることができるようになったのではないかと考える。

3.予測性と状態不安の相関関係:予測性が高いほど状態不安が低いということが明らかとなった。これは、初療看護において予測性をもつということが検査・治療の準備や迅速なケアの秀逸性にもつながり不安が少ない状態で業務に当たることができたためではないかと考える。