第22回日本救急看護学会学術集会

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一般演題

看護教育

[O9] 一般演題9

[O9-05] 院内心停止記録の検証 -事後検証から見えてきた心停止の認識と今後の課題-

○新地 実花子1、相馬 香理1、前田 晃史1 (1. 市立ひらかた病院)

Keywords:院内心停止、CPR

<背景>
院内急変、特に心停止対応は初動が最も重要であり、対応の遅れは患者の生命予後を左右する。A病院では、2013年より、院内心肺蘇生経過記録票を作成し、ガイドラインに沿った対応と統一した記録を行うよう努めており、心肺蘇生経過記録を統一し、データを集積・検証することによって、心停止対応の課題を明確にできると考えられる。

<目的>
心肺蘇生経過記録票の検証により今後の蘇生教育の内容、方法について検討し、心停止患者への対応能力の向上に寄与する。

<方法>
研究デザイン:後方視的観察研究。調査期間:2015年1月~2019年12月。研究対象:心肺蘇生を行った患者(DNAR除く)。データ収集方法:心停止発見からの経過および転帰を心肺蘇生経過記録票および電子カルテより収集し、データ・クリーニングした。

<倫理的配慮>
患者データを暗号化し、USBによる保管およびパスワード管理により個人情報を保護した。またA病院倫理委員会の承認を得た。

<結果>
対象患者71例(男性47例、女性24例)、年齢中央値77(68-82)歳であった。以下に年ごとの症例数と初期調律、生存退院率、①心停止からCPRコール②心停止からCPR開始③心停止から初期調律確認までに要した時間を中央値(四分位範囲)で示す。
2015年5例(PEA5例)生存なし、①4(3-4)分②4(2-4)分③4(2-5)分。
2016年6例(VF/VT1例、PEA2例、心静止1例、不明2例)生存退院率17%(1例)、①3(3-4.5)分、②1(0.25-1.75)分③1.5(0-3.25)分。
2017年24例(VF/VT2例、PEA18例、心静止2例、不明2例)生存退院率21%(5例)、①3(1-4)分②1(0-2.25)分③3(1-5)分。
2018年24例(VF/VT6例、PEA13例、心静止4例、不明1例)生存退院率17%(4例)①2(0.5-2)分②0.5(0-2)分③2(0-5.5)分。
2019年12例(VF/VT4例、PEA5例、心静止2例、不明1例)生存退院率33%(4例)①1(0-3)分②0(0-2)分③3.5(0-1.25)分であった。
心停止からCPRコールまでの時間は有意に減少しつつあった(p<0.001)。生存退院率は改善傾向にあった。

<考察>
心停止からCPRコール、心停止からCPR開始に要した時間は減少しており、心停止の認識をすれば即座にCPRを開始することができていると言える。しかし、心停止から初期調律確認までの時間短縮は達成できておらず、その要因について検討した。
初期調律確認まで3分以上を要した例は16件、これらのうち心停止の認識の遅延例が6件あり、うち5件は心停止前からモニタリングされていた。遅延例は全てPEAで、徐拍性PEAを徐脈と誤った理解をしているために、心停止の判断が遅延しているものと考えられた。臨床現場では徐々に状態悪化の経過をたどる例も少なくなく、徐拍性PEA例に対応した研修を強化する必要がある。

<結論>
心停止の認識と同時にCPRを開始する能力は改善してきており、転帰は改善している。しかし、QRS波形を見て「脈がある」と思い込むことで心停止の判断と対応に遅れが生じており、改善の余地がある。