第22回日本救急看護学会学術集会

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一般演題

看護教育

[O9] 一般演題9

[O9-06] Tannerの臨床判断モデルを用いた教育におけるER看護師のReflection場面の検討

○米嶋 美晴1、井川 洋子1、上澤 弘美1、柴崎 直美1 (1. 総合病院 土浦協同病院 看護部)

Keywords:臨床判断、教育、Reflection

【はじめに】
 自施設ERでは、2019年5月より実践の中でのReflectionによるOn The Job Training(以下、OJT)が主軸であるTannerの臨床判断モデルを取り入れた教育を開始した。また、Reflection時間を設け、1日1場面を目安にOJTを通した指導や症例の振り返りをシートに記録している。
 今回、Reflection時間に記録されたシートから、行為中の省察である Reflection in actionに視点をおき、指導側の看護師が臨床判断を促すために行った思考発話の内容を明確にした。その思考発話の内容から実践場面でのOJTの傾向を把握し、今後の教育計画への示唆を得たため報告する。
【目的】
 Tannerの臨床判断モデルを用いた教育におけるReflection in actionの場面において、指導内容の傾向を明確にし今後の教育計画への示唆を得ることである。
【方法】
 2019年7月~2020年3月の期間にER看護師13名に対して実施したReflection in actionの内容を、Reflectionシートから後方視的に調査した。Reflection in actionの内容から意味・特徴が類似するものを記述した。
【倫理的配慮】
 本報告は自施設の倫理委員会の審査を受け承認を得た上で実施した(承認番号:933)。対象者に主旨、匿名性の確保や個人情報の保護、情報の公表および情報の管理方法について文面を提示した上で口頭により説明し、文書による同意署名を得た。
【結果】
 調査期間内にシートに記録されたReflectionは128場面であった。指導側の看護師が臨床判断を促すために行った思考発話の内容で最も多かったものは「合併症を最小限にするためのケア」であり、39場面であった。これらは、脳卒中患者の二次的脳損傷を最小限にするためのケアや、循環血液量減少性ショック患者に対する輸液管理についての臨床判断の内容が主であった。次いで、「症状から疾患を予測した観察」が21場面であった。これらは、意識障害の鑑別や胸痛症状に対して、心筋梗塞や大血管疾患などの緊急性が高い疾患を疑うための観察方法についての臨床判断であった。また、「緊急性の判断」は20場面あり、第一印象や生理学的評価より気道閉塞のリスクや呼吸不全を迅速に察知し、気道確保などの緊急に対応しなければならない処置の必要性についての臨床判断であった。その他、「診療を円滑に進めるためのマネジメント能力」16場面、「限られた情報からの搬入準備」10場面、「診療ガイドラインの知識」9場面、「看護技術の選択」8場面などであった。
【考察】
 結果から、指導側の看護師が、患者の合併症や予測される病態悪化を考慮した看護ケアの提供と根拠における臨床判断や、患者の緊急度の判断に必要な観察手法について、技術的な側面に対する思考発話をしていた。そのことから、指導を受けた看護師は主に上述する2つに対して臨床判断が不足していると考えられた。そのため、看護師の臨床判断スキルを高めるためにERでの教育として、初療での患者の経過を系統立てて考え、意図的な看護実践を提供するに至る思考過程を強化する必要性があると考える。江口らは、ある事例・場面を特定のものとして解釈し、語ることで臨床判断の内容を言語化し、検討することが臨床判断能力を育むうえで重要と述べている。そのため、教育計画において講義形式の座学に限らず、事例展開や観察手法などのシミュレーションにより経験した事例を想起し、患者が示す反応や結果に至る思考過程をトレーニングする機会を設ける必要性が示唆された。