第22回日本救急看護学会学術集会

Presentation information

一般演題

看護教育

[O9] 一般演題9

[O9-08] 救急外来における教育体制の構築を目指して 
~評価表の作成と教育ミーティングの開催~

○上村 亜紀1、曽我 かおり1、土谷 美樹1、白井 耕志1、深梅 圭二1 (1. 福岡徳洲会病院救急センター)

Keywords:教育体制構築

【目的】
 
当救急外来(以下、ER)では、毎年新卒者とER経験を持つ中途入職者を受け入れている。その入職者に対し、プリセプター制度を導入し、プリセプターを中心に教育を行っている。しかし、当ERの教育体制の問題点として、明確な指導方針や評価基準が存在せず、全てプリセプター、アソシエイトに一任されていた。また指導者の評価に一貫性がなく、スタッフ間の教育に対する積極性にも差があった。結果、教育対象者の夜勤業務開始の遅れや、1年を経過してもERの全ての業務を遂行するために必要な知識、技術の習得ができていないという問題が発生していた。
 よって、ERにおける教育体制の構築を図ることが急務であり、全ての指導看護師が教育対象者の目標を共有し、計画的且つ継続的に関わることができるように、業務開始基準評価表(以下、評価表)の作成と、それを基に指導者間で意見交換をする情報共有の場(以下、教育ミーティング)の設定と実施に取り組んだ。

【方法】
 
期間:2019年4月~2020年3月
 対象:ERに勤務する指導者21名
 実施方法:毎月1回、評価表を基に教育ミーティングを開催 
 評価方法:2020年3月 指導者21名に対し教育ミーティングに関するアンケートを実施
 評価表に関するインタビューを実施
 無記名、多肢選択式、自由記載方式、単純集計

【倫理的配慮】
 
収集した情報は個人が特定されないようにすると共に、本研究以外に用いないこととし、対象者に不利益を生じないよう配慮した。また、所属施設長に承認を得て実施した。

【結果】
 
達成すべき業務内容、患者ケアについての3段階で評価する当ER独自の評価表を作成し、教育対象者による自主評価、プリセプターによる他者評価を実施したのち、教育ミーティングで意見交換を行い、指導統一を図るために用いた。教育ミーティング開催率100%、参加率78%、平均実施時間1時間15分であった。
 教育ミーティングを1年間実施したのちのアンケートでは、「他のスタッフの意見が聞けて参考になる(76.4%)」「教育方針や進捗状況が分かりやすい(47.0%)」「私情を伴わず客観的評価が可能」との回答を得た。一方で、「実施時間が長い(70.5%)」「時間の無駄(11.7%)」「部署全体で教育しているという感覚が弱い」「参加したい人だけで集まる」「指導する側の教育が必要」「再評価が難しい」「現場教育に活かされていない」「目標達成に向けた対象者の自発的な取り組みが見られない」という回答を得た。

【考察】
 教育係がファシリテーターとしてミーティングを実施したことは、一方的な指示ではなくスタッフと対等なスタンスで相手の強みを活かし、同意を得ながら教育への参画を促すことができたと考える。教育体制構築の一助になるように、評価表を作成し、またそれを用いて教育ミーティングを実施したことは、「私情を伴わず客観的評価が可能」「他のスタッフの意見が聞けて参考になる」「教育方針や進捗状況が分かりやすい内容である」「悩みを共有し解決策を見つけることができる」との回答から、一貫性のある指導につなげることができ、有意義な場を設けることができたと考える。
 しかし、課題として指導者側の継続的な教育支援と行動変容へのアプローチを行うこと、評価表については、指導者のみならず教育対象者に焦点を当て、レディネスに適した内容であるかの検討や、実践に見合ったものとなるよう修正を行っていくことが必要であると考える。      
 今後も内省と実践を繰り返すなかで、有効な情報共有の場となるよう教育ミーティングを開催していき、教育体制の充実を図りたい。