[O9-09] 院内看護師研修にシミュレーション研修を導入して
Keywords:シミュレーション、看護教育
当院の急変事例の検証から急変の数時間前から起こる何らかの徴候に気づいているにも関わらず、アセスメントや情報共有の不十分さから医師やチームで共有できていないことがあった。そこでフィジカルアセスメント、全人的アセスメント能力の向上が必要と考え、これまでの講義式教育だけでなくシミュレーション研修(以後演習研修という)を導入した。今回、研修評価とその後の実践についての効果や問題点を抽出した。
【倫理的配慮】本研究は院内倫理委員会の承認を得て行った。アンケートは無記名とし、対象者の合意のもと行い、拒否したことによって不利益は生じない。
【方法】1.H30年4月からR2年3月まで毎月1回演習研修を実施
2.研修直後に理解度に関してのアンケート①を実施(62名)
3.R2年4月に前年度受講者(57名)にアンケート②を実施した。①②ともに独自に作成、アンケート結果は1から5までの5段階とし、エクセルでの単純集計を行った。
【結果】研修直後のアンケート①では回収率100%であり、「研修内容を理解できた」と答えたのは全体の69.3%、「今後の実践で活用できる」と答えたのは88.7%であった。研修の感想では演習研修を機に自己のアセスメント力の不足を実感していた。アンケート②の回収率は84.2%、有効回答率は97.9%、回答者の平均年齢は34.0歳、平均看護師経験年数は10.3年。研修内容が看護実践において活用できたかは平均3.5であった。活用できた内容は「フィジカルイグザミネーションなどの観察スキル」や「系統的、先入観のない問診」などが多かったが「医師・看護師とのアセスメント内容の協議」は少なかった。活用できなかった理由として「急変事例がない」「業務を優先してしまう」とあった。研修参加後の行動として、以前と比較して自己学習や同僚・上司への相談を積極的に行うようになったという回答を得た。
【考察】日頃起こりうる状況を用いた演習研修を行ったことで、普段は意識していなかった患者への接触場面から観察点や問診方法・最終報告まで、意図的に行う意識が向上したと考える。また、研修を契機に学習の自己効力感の向上が示唆された結果も多く得られた。これらは、ノールズが示す「成人教育に関する5つの特徴」にある自己概念・経験・レディネス・方向付け・動機付けの全てにおいて影響を与えたとも考えられる。研修後に臨床でのアセスメントの共有やディスカッションがあまり実施されていないという結果からは、自身のアセスメントに対する自信のなさや根拠不足があると考えられ、座学での知識拡充も必要である。また、シミュレーション教育の利点でもある失敗が許される環境では学習者間で積極的な協議ができるようファシリテートすることが指導者に求められるスキルである。
スキルを活用できなかった人は手術室勤務や整形外科病棟勤務者が多く、日頃急変事例が少ない部署であった。今回の研修では、急変の有無に関わらず広い視野で患者を捉えることを伝えたかったが、研修と似た状況がないため活用できなかったという回答につながってしまった。このような学習者にはデブリーフィング時に物事の認知の仕方(スキーマ)の変容を目指し、可視的な対応や行動ではなく、状況を捉えられるよう、思考過程に焦点をあてるように支援を行う必要がある。
【結語】演習研修を導入したことにより、習得したスキルを活用し、看護に活かす効果が認められた。また、学習の動機付けから自己効力感の向上という学習の一連の流れを構築できた。座学と演習のバランスのとれた教育環境が今後の課題である。
【倫理的配慮】本研究は院内倫理委員会の承認を得て行った。アンケートは無記名とし、対象者の合意のもと行い、拒否したことによって不利益は生じない。
【方法】1.H30年4月からR2年3月まで毎月1回演習研修を実施
2.研修直後に理解度に関してのアンケート①を実施(62名)
3.R2年4月に前年度受講者(57名)にアンケート②を実施した。①②ともに独自に作成、アンケート結果は1から5までの5段階とし、エクセルでの単純集計を行った。
【結果】研修直後のアンケート①では回収率100%であり、「研修内容を理解できた」と答えたのは全体の69.3%、「今後の実践で活用できる」と答えたのは88.7%であった。研修の感想では演習研修を機に自己のアセスメント力の不足を実感していた。アンケート②の回収率は84.2%、有効回答率は97.9%、回答者の平均年齢は34.0歳、平均看護師経験年数は10.3年。研修内容が看護実践において活用できたかは平均3.5であった。活用できた内容は「フィジカルイグザミネーションなどの観察スキル」や「系統的、先入観のない問診」などが多かったが「医師・看護師とのアセスメント内容の協議」は少なかった。活用できなかった理由として「急変事例がない」「業務を優先してしまう」とあった。研修参加後の行動として、以前と比較して自己学習や同僚・上司への相談を積極的に行うようになったという回答を得た。
【考察】日頃起こりうる状況を用いた演習研修を行ったことで、普段は意識していなかった患者への接触場面から観察点や問診方法・最終報告まで、意図的に行う意識が向上したと考える。また、研修を契機に学習の自己効力感の向上が示唆された結果も多く得られた。これらは、ノールズが示す「成人教育に関する5つの特徴」にある自己概念・経験・レディネス・方向付け・動機付けの全てにおいて影響を与えたとも考えられる。研修後に臨床でのアセスメントの共有やディスカッションがあまり実施されていないという結果からは、自身のアセスメントに対する自信のなさや根拠不足があると考えられ、座学での知識拡充も必要である。また、シミュレーション教育の利点でもある失敗が許される環境では学習者間で積極的な協議ができるようファシリテートすることが指導者に求められるスキルである。
スキルを活用できなかった人は手術室勤務や整形外科病棟勤務者が多く、日頃急変事例が少ない部署であった。今回の研修では、急変の有無に関わらず広い視野で患者を捉えることを伝えたかったが、研修と似た状況がないため活用できなかったという回答につながってしまった。このような学習者にはデブリーフィング時に物事の認知の仕方(スキーマ)の変容を目指し、可視的な対応や行動ではなく、状況を捉えられるよう、思考過程に焦点をあてるように支援を行う必要がある。
【結語】演習研修を導入したことにより、習得したスキルを活用し、看護に活かす効果が認められた。また、学習の動機付けから自己効力感の向上という学習の一連の流れを構築できた。座学と演習のバランスのとれた教育環境が今後の課題である。