第22回日本救急看護学会学術集会

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一般演題

看護教育

[O9] 一般演題9

[O9-11] 関連病院間の院内急変時対応研修における効果-研修修了1年後の質問紙調査結果から-

○吉田 美恵子1、野澤 陽子2、杉山 希2、石田 桃子2、森島 克明2、鈴木 めぐみ2、藤井 満貴3、渡邉 亜矢子4、青木 梢5 (1. 順天堂大学医学部附属練馬病院、2. 順天堂大学医学部附属静岡病院、3. 順天堂大学医学部附属順天堂医院、4. 順天堂大学医学部附属浦安病院、5. 元順天堂大学医学部附属練馬病院)

Keywords:院内急変時対応、質問紙調査

【目的】2009年度から2018年度までの10年間において、関連病院に所属する救急看護認定看護師と診療看護師が中心となり、実務経験3年以上の看護師を対象に院内急変時及び急変の前兆を捉えるために必要な知識・技術の習得と向上を目指した研修を行い、87名の修了者を輩出してきた。2012年度からは、研修を修了した1年後に修了者と修了者の所属する責任者に対し、活動状況を把握するために質問紙調査を行っている。
 今回、研修修了者が研修の内容を実践の場でどのように活用しているのか、研修修了1年後の教育効果を明らかにし、救急領域の看護の質向上のために必要な教育支援について示唆を得ることを目的とした。
【方法】研修プログラムは、講義、演習、実習で構成し、研修時間は48時間、研修修了時には研修者間で指導案を企画した。研修修了1年後に研修参加者および所属部署責任者に対し質問紙調査を実施した。質問紙調査の中で、「研修受講後どのような変化があったか(修了者)」「研修受講後スタッフにどのような変化があったか(責任者)」という問いの回答を分析の対象とした。得られた回答は共通する意味内容でコード化を行い、類似する内容はカテゴリー化した。また、内容の分析は研修担当者間で実施した。
【倫理的配慮】個人情報の保護に充分留意し質問紙の回答をもって同意を得たものとした。また、各附属病院看護部責任者の承諾を得た。
【結果】期間中の研修修了者は67名であり、関連病院すべての施設で修了者を輩出した。そのうち58名から回答を得られ、有効回答率は86.5%であった。また、修了者が所属する責任者からは、57部の回答を得られ、有効回答率は85.0%であった。なお、責任者においては、複数の修了者が所属している場合もあるため、部数での表現とした。
 修了者からの回答で最も多かった記述のカテゴリーは【意識や視点の変化】であった。次いで、【急変時対応能力の向上】が抽出され、いずれも個人の看護実践のスキルに関連する内容が成果として挙げられた。また、研修を受講したことによる【役割拡大】も多数の意見が上がった。責任者からの回答で最も多かったカテゴリーは【意欲・自主性の向上】であり、次いで、【指導の実施】【アセスメント意識や視点の変化】が抽出された。
【考察】研修修了者は【意識や視点の変化】を成果としてあげており、研修を受講することで急変時対応に対する意識変容につながったと考える。そして,【急変時対応能力の向上】を実感しており、実践力の向上により自己効力感が高まり、部署における【役割拡大】を意識した行動が身についた可能性が示唆された。責任者においては、【意欲・自主性の向上】【アセスメント意識や視点の変化】といった実践力の評価につながる成果をあげていた。さらにその行動の現れが、【指導の実施】といった教育的要素を含んだ実践力の向上に対する役割期待として現れていたと推察する。
 臨床場面において、研修直後から現場で活用できるように、シミュレーションを中心に研修を設計した。関連病院の救急看護の専門性が高い看護師が指導をしたことに加え、救急集中治療科の医師によるディスカッションを中心とした講義や、他病院のスタッフとともに学ぶことにより、実践力の向上、部署の指導者としての役割意識の向上に関して効果が得られたと考える。