第22回日本救急看護学会学術集会

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一般演題

看護教育

[O9] 一般演題9

[O9-12] 効果的なシミュレーション訓練を導入して

権田 海代子1、○住吉 さやか1、道端 育子1、渡邉 岳人1 (1. 福岡和白病院 総合診療救急科)

Keywords:患者観察

はじめに

A病院は2006年よりドクターカー運用開始2008年に民間ヘリ、2019年よりラピットレスポンスカーが運用開始となり、地域の診療所や病院、県内外の離島や遠方の施設と連携を図り、地域の中核病院として救急医療および高度医療を担っている。

これらを運用する上で、同乗する看護師の明確な選考基準はなく、総合診療救急科(以下救急科)はスタッフが経験値や救急配属年数、各種の研修、受講数などに関わらず同乗し患者搬送を行っている。

救急科では、各導入年度よりシミュレーション訓練(以下訓練)を実施しており、訓練後の振り返りも行っていた。しかし、スタッフより以前の訓練は、シナリオ作成側の到達目標や期待とチャレンジャー側の結果や得られた効果に相違があった。今回、新たな試みとして患者観察を重点においたシナリオを作成し、院外活動の実践に適応する評価方法や判断、それに基づいた技術・看護・家族ケア・多職種とのコミュニケーションスキルの習得、調整、安全な搬送の目的と訓練、評価・考察し、訓練で得た学びや教育方法を報告する。



対象

ドクターカー、ヘリに乗車する救急科看護師18名

(うち救急専門医1名、救急看護認定看護師1名)



倫理的配慮

アンケートは無記名とし個人が特定されないよう配慮し、承諾は自由とし断っても不利益を被らないことを説明し承諾を得た
所属施設の管理者の許可を得て実施した



方法 以下の点について評価を行った

1.訓練中チェック表を用い受講者の動きを確認し、得た知識と技術の習得度

2.訓練出動時の必要物品と連絡手段の方法

3.機内・車内における適切な物品配置

4.ABCDアプローチにおける初期評価と早期対応

5.院外活動という特殊な環境下における他職種とのコミュニケーションスキル

なお、訓練を実施した看護師にアンケート調査・デブリーフィングを用いて振り返りを行った。



期間

2019年4月~2020年3月 ヘリ、ドクターカー 訓練 計7回



結果考察

今回、シミュレーション訓練後に振り返りとアンケート調査を行った結果、前向きな意見が多く、訓練実施した看護師全員が1.2.3.5の項目において習得できた。

また、「訓練で緊張等のストレスを感じた」という意見もあった。船木らは、シミュレーション訓練を行う上で、過ちを犯しても患者のリスクを与えず、安全な環境でできること、失敗が許される学習環境下で思考方法や判断・問題解決を学ぶことができ、安全な看護の提供をするにあたり、現実に近い状況でシミュレーション訓練を行うことは実践力を身につけることができると報告がある。訓練後実際に活動した看護師に聞き取り調査を行った意見として、訓練と同様の症例で出動経験ができ、落ち着いて対応できたという前向きな意見もあった。

項目4に対してのアンケート結果は、患者観察が必要と答えた看護師は一人であった。この原因として分析した結果、

1.出動経験に差があり、さらに、資機材の把握や処置介入、連絡などの調整役としての行動が先行し、患者観察や異常兆候の優先度が低くなった可能性。

2.急変に対応する力、臨機応変に対応する力が必要との意見が、急変前の患者観察、急変兆候を発見できない事により行動変容と結びついていないことが考えられる。

今後の課題として、個人の自己啓発を含めた患者観察の必要性に対する知識の提供、ABCDアプローチを基本としたシナリオ作成を継続すること。また、病態安定化をはかり各専門職と円滑な共働体制を築き、医師と一緒にチームの中心となり、マネージメントを行うことが安全な患者の搬送に繋がる。それを踏まえた訓練を継続していく事が次年度の課題となった。