第22回日本救急看護学会学術集会

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一般演題

看護教育

[O9] 一般演題9

[O9-15] 新人看護職員が経験した急変事例の検証と今後の急変時対応研修への課題

○村上 貴子1、黒木 真二1 (1. 独立行政法人地域医療機能推進機構 九州病院  看護部)

Keywords:急変時対応、新人看護職員、院内教育

【はじめに】
 A病院では、2014年度から新人看護職員を対象に、急変時対応研修を1日コースで実施している。A病院の新人看護職員の急変時対応の現状について、先行研究では「急変を発見した場合に、急変のサインに気づき何らかのアクションを示し報告できている」ことが確認できている。しかし、「急変のサインに気づき、その内容を言語化できているか」「急変を認知するために必要な知識と技術が習得できているか」を確認することはできなかった。そこで、2019年度から入職後1年の間に経験した急変事例をもとに、事例を共有する場を設けた。今回は、その事例をもとに研修の目的に到達できているかを確認し、今後の急変時対応研修の課題を明確にしたいと考えた。
【研究目的】
新人看護職員が対応した急変事例の現状を検証し、今後の課題を明らかにすることができる。
【研究方法】
 対象は2018年度の新人看護職員57名。入職後1年の臨床経験のなかで体験した急変事例を所定の書式に記載してもらった。急変事例については「いつもと何か違う状態変化」と「心肺蘇生が必要な状態変化」に大別した。「急変を言語化できているか」「急変を認知するために必要な知識・技術が習得できているか」を検証するために、報告時のSBARの内容『状況』『背景』『評価』『提言』ごとに分析した。検証にあたり、妥当性の評価は救急看護認定看護師2名で行った。また、妥当でない理由については、類似性・相違性に基づいて分析した。
【倫理的配慮】
 対象者へは、今回の研究の目的や事例の検証にあたり個人が特定される情報を除外すること、研究目的以外にデータを使用しないことを口頭・書面で説明した。同意の署名をもって参加の意思を確認した。また、所属部署の管理者の許可を得て研究を行った。
【結果】
 同意が得られた新人看護職員は51名(89.5%)であった。急変事例の内訳は「いつもと何か違う状態の変化」が47名、「心肺蘇生が必要な状態変化」が4名であった。報告の内容が妥当であった者は、『状況』48名(94.1%)、『背景』31名(60.8%)、『評価』27名(52.9%)、『提言』35名(68.6%)であった。『提言』のなかで、必要な看護技術を提供した後で報告できていたのは29名(56.9%)であった。具体的には、循環管理15名、体位管理8名、呼吸管理7名、安全管理5名、罨法2名であった。報告の内容が不十分であったものは、情報が不足していたり、該当しない情報を脈絡なく羅列していた。『提言』については、『評価』ができていないため『提言』ができていなかった事例と、必要な看護技術が提供できたことで患者の状態が安定し『提言』の必要のない事例があった。
【考察】
 急変を言語化できているかについては、『状況』で患者の変化をほぼ全員が伝えることができていた。今回の事例からは、約半数は妥当な報告ができており、看護技術の提供もできていた。このことから「急変を認知するために必要な知識・技術が習得できているか」については、十分達成できているとは言えないが、研修後のOn-the-job Training(以下OJT)の効果は得られていると考えられた。OJTでの効果の影響としては、パートナーシップ制を導入したことも大きな要因であると言える。研修後の意見から、多くの新人看護職員が即座に『背景』『評価』を言語化する難しさや知識不足を感じており、その意見は今回の検証の結果と一致していた。今後は、OJTの継続が図れる体制作りとクリニカルラダー別の教育計画を検討していく必要がある。