第22回日本救急看護学会学術集会

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シンポジウム

[SY2] シンポジウム2

『都市の貧困と健康問題・救急医療』

座長 江川 幸二(神戸市看護大学 急性期看護学分野 教授)
   三上 剛人(吉田学園 医療歯科専門学校 救急救命学科 学科長・副校長補佐)

[SY2-02] 救命救急センターに救急搬送された路上生活者の検討

○田熊 清継1 (1. 川崎市立川崎病院 救命救急センター所長)

Keywords:路上生活者、ホームレス、救急医療

川崎市の路上生活者(ホームレス)数は300人と、政令指定都市の中で東京1,126人、大阪1,023人、横浜477人に次いで多く、その大半は川崎市南部地域に居住している(厚労省2018年)。救急要請時にホームレスであることが分かると応需を拒否する病院が多いが、一般的にはその理由として食事目的での救急要請、感染や悪臭、入院の長期化、医療費の問題などが挙げられている。本邦では、この問題を救急医療の観点から検討した研究は少なく、実態はよく知られていない。当施設は、この地域の中心に位置し、重症度を問わず全ての救急患者を診察するER型救命救急センターで全ての救急要請に対応している。2008年度に当院でまとめた論文(日本救急医学会誌)では、救急車と徒歩による全救急受診患者32,756人中、ホームレス626人と、全体受診患者の1.91%がホームレスであった。一方、2017-19年の3年間に当院に救急搬送された15,995人中、ホームレスは46人で全体の0.29%と激減していた。主要受診病名をみると、感染症・皮膚・筋骨27、栄養障害10、心血管9、消化器8、呼吸器7、外傷熱傷6で、環境や衣食住との関連を想起させる傷病が多かった(人,重複有)。入院は25人(54.3%)で、半数が重症。壊死性筋膜炎・敗血症などの感染症5、脳血管障害・意識障害4、外傷や溺水などの外因3、消化管出血2、脱水2、呼吸不全2であった。平均入院日数は36.4日と長く、転帰は、軽快17名、死亡1名、ほか7名であった。ホームレスの救急診療に関する問題点を明らかにし、一つづつ対応していくことが、受入困難に関する問題の解決に繋がると考える。