第23回日本救急看護学会学術集会

Presentation information

オンデマンド配信講演

第23回日本救急看護学会学術集会 [一般演題] » 2.プレホスピタルケア

[OD201] 2. プレホスピタルケア

[OD201-03] 道南ドクターヘリ・フライトナースに対する研修会の効果の検討

○井下田 恵1、笠谷 亜沙子2、田口 裕紀子6,7、内田 裕美4,7、神田 直樹3,7、牧野 夏子4,7、源本 尚美5,7、城丸 瑞恵6,7 (1. 市立函館病院救命救急センター、2. 函館五稜郭病院、3. 北海道医療大学看護福祉学部、4. 札幌医科大学附属病院、5. 市立札幌病院、6. 札幌医科大学保健医療学部、7. 札幌医科大学クリティカルケア看護研究会)

Keywords:ドクターヘリ、フライトナース研修会、脳血管疾患看護

目的:道南ドクターヘリは、基地病院であるA病院と圏域内12医療機関のフライトナース(以下、FN)で構成されており、交代で搭乗している。2018年に実施した調査(井下田他、2018)(笠谷他、2018)において、FNはドクターヘリ内での活動に対する不安を抱え、効果的な研修の必要性が示唆された。そこで、我々は、ドクターヘリで搬送される機会が多い脳血管疾患患者に対する看護ケアについて研修会を実施した。本研究は、その効果について検討することを目的とする。
方法調査期間.2020年7月~8月。調査対象.研修会に参加した17名。内、救急領域以外に通常勤務している看護師9名。研修内容.意識障害を呈する疾患について、聴取すべき情報および観察項目、看護上の問題点について座学を実施した。調査内容および回答方法.①脳血管疾患看護に対する興味・自信・知識・技術・実践について「そう思わない」から「そう思う」まで多項回答方式で回答を得た。②事例を提示して研修前後に予測される病態と観察項目、③研修から得た事について自由記述で求めた。分析方法.量的データは記述統計を行い全体の概要を把握した。言語データはText Mining Studio 6.2.0を用いて単語頻度分析を行った。倫理的配慮.市立函館病院の倫理委員会で承認後に実施した。
結果:対象の看護師経験は21.5±6.7年(最大31、最小7)、FN経験は3.2±1.4年(最大5、最小0.5)、勤務先は基地病院が5名、基地病院以外が12名であった。脳血管疾患看護に関する考えについて「どちらかといえばそう思う」「そう思う」を合算した結果、「脳血管疾患看護に興味がある」が11名、「脳血管疾患看護に自信がある」は3名、「脳血管疾患看護の知識がある」は4名、「脳血管疾患看護の技術がある」は3名、「ドクターヘリ搭乗時に脳血管疾患看護が実践できる」は7名であった。予測される病態において研修前は「意識障害」「低血糖」「脳梗塞」が上位で、研修後は「大動脈解離」「脳卒中」「感染性心内膜炎」が追記された。情報収集項目において研修前は「既往歴」「アレルギー」「バイタルサイン」「意識レベル」が上位にあり、研修後は「SAMPLE」「ABCDE」が追記された。研修で得た事ととして「自分の知識の再確認、不足していた点を補うこと」「振り返りは大切」などの回答があった。
考察:脳血管疾患看護に11名が「興味がある」と回答したが、「自信がある」「知識がある」「技術がある」の回答が少ないのは、回答者の中には救急分野以外の看護師が9名おり、日常の看護実践の中で脳血管疾患患者に関わる機会が少ないこと、またドクターヘリ内での看護判断が搭乗FN一人に委ねられることによる不安も影響していると考える。一方で7名が「ドクターヘリ搭乗時に脳血管疾患看護が実践できる」と回答していることから、不安があっても現場ではある程度の実践ができていることが伺えた。予測される病態に関して、研修後に「大動脈解離」「感染性心内膜炎」が追記されたのは、研修会を通して意識障害の直接的原因となる疾患の他に、二次的に意識障害を引き起こす疾患についても想起する必要性を理解できたためと考える。情報収集項目においても、研修後に「SAMPLE」「ABCDE」が追記されていることから、意識障害の原因検索や適切な治療を提供するための系統的な観察、情報収集を行う必要性が研修会を通して理解でき、研修会が知識の再確認などに有効であることが示唆された。