一般社団法人日本鉱物科学会2021年年会・総会

講演情報

口頭講演

R4:地球表層・環境・生命

2021年9月16日(木) 14:00 〜 17:15 Zoom Session 3

座長:福士 圭介(金沢大学)、横山 正(広島大学)、川野 潤(北海道大学)、佐久間 博(物質材料研究機構)、宇都宮 聡(九州大学)

16:30 〜 16:45

[R4-10] 間隙中の空気が炭酸塩鉱物の溶解を特に低減させる理由

*横山 正1、西山 直毅2 (1. 広島大・院先進理工、2. 筑波大・院生命環境)

キーワード:水膜、溶解、炭酸塩鉱物、間隙

岩石間隙中に空気が存在すると,間隙が水で満たされた場合と比べて炭酸塩鉱物からの溶出速度が大きく減少し,その減少幅が珪酸塩鉱物よりも大きいことが明らかになっている。空気が入った間隙中では,鉱物は表面を濡らす水膜を介して溶解する。炭酸塩鉱物の溶出速度が下がる主な原因の一つとして,炭酸塩鉱物は溶解速度定数が大きいため水膜中に溶出した元素の洗い流しが不十分になり,水膜の大部分で飽和濃度に至り溶解がほとんど進まないことが考えられる。他の要因として,空気による電気二重層の切断や溶存イオンの影響を考慮して鉱物表面の水膜の厚さを見積もると,Calcite表面の水膜はSilicaと比べてかなり薄く,水膜が薄いために元素の洗い流しの効率が下がる効果が特に炭酸塩鉱物で顕著と考えられる。また,水膜に溶出した元素は水膜中を拡散して主流路(水みち)に到達すると洗い流されるが,炭酸塩鉱物から離れた場所に主流路があることが多いことを示唆する実験結果があり,これも炭酸塩鉱物の溶出速度が小さい一因かもしれない。