一般社団法人日本鉱物科学会2022年年会・総会

講演情報

口頭講演

R3:高圧科学・地球深部

2022年9月18日(日) 09:00 〜 12:15 B253 (総合教育研究棟 B棟2F)

座長: 川添 貴章(広島大学)、西 真之(大阪大学)

09:45 〜 10:00

[R3-04] 相平衡の定義に基づいた高温高圧相転移境界の新しい決定法

*石井 貴之1、Chanyshev Artem2、桂 智男2 (1. Center for High Pressure Science and Technology Advanced Research、2. バイロイト大学)

キーワード:相転移、相平衡、クラペイロン勾配、相転移カイネティクス、ポストスピネル転移

クラペイロン勾配は、温度-圧力空間における相境界の傾きであり、マントルダイナミクスを理解するために重要な熱力学的性質である。主要なマントル鉱物の相境界を決定したこれまでの多くの高圧高温実験では、熱圧力による瞬間的な圧力上昇、加熱時の圧力降下、遅い相転移反応により、得られた結果にはばらつきがあった。これらの複雑な圧力変化は相転移圧力決定を困難にし、遅い相転移反応は、相転移を開始または進行させるために過剰な圧力を必要とするため、相安定性を見誤り、相境界の位置を精密に制約することを妨げる。最近我々は、相平衡の定義に基づいて相安定性を厳密に決定する新しい手法を開発した。本発表では、リングウッダイトからブリッジマナイト+ペリクレースへの分解反応であるポストスピネル転移を例に、この手法の詳細を説明する。この手法のエッセンスは、温度とプレス荷重を一定にしかつ、リングウッダイトとブリッジマナイト+ペリクレースの両相が共存した状態で、各層X線回折強度の変化を観察することである。この手法により、加熱に伴う複雑な圧力変化や速度論的な問題が取り除かれ、正確で精度の高い相境界を得ることが可能となった。