一般社団法人日本鉱物科学会2022年年会・総会

講演情報

口頭講演

R4:地球表層・環境・生命

2022年9月19日(月) 09:00 〜 12:00 B253 (総合教育研究棟 B棟2F)

座長:福士 圭介(金沢大学)、横山 正(広島大学)、宇都宮 聡(九州大学)

09:00 〜 09:15

[R4-01] 水酸化鉱物の脱水時に起こる表面拡散の中性子散乱解析

*奥地 拓生1、梅田 悠平1、富岡 尚敬2、瀬戸 雄介3、山田 武4 (1. 京都大・複合研、2. 海洋研究開発機構・高知コア研、3. 大阪公立大学、4. 総合科学研究機構)

キーワード:含水鉱物、水素ダイナミクス、脱水分解、中性子準弾性散乱

含水鉱物の脱水分解の際には、水酸基の結合配向方向の切り替わりや、欠陥を残した水素イオンの跳躍など、水素イオンの多様で活発なダイナミクスが出現する。水素のダイナミクスは脱水分解のカイネティクスや分解後の組織の形成、および水素イオンの伝導現象などに影響を与える現象であり、その解析には中性子準弾性散乱法が有効である。本研究ではMg(OH)2とγ-Al(OH)3を対象として、脱水の途中で出現する新たな水素のダイナミクスの検出と解析を試みた。Mg(OH)2試料には粒径0.07 μmの微粒子を選択した。一方でγ-Al(OH)3試料には粒径100 μm程度の粗粒子を選択した。各試料を脱水分解が完了する温度よりも10~50 ℃だけ低い温度で数時間保持して部分的な脱水を引き起こした後に、結晶中に残された水素の準弾性散乱を温度を変えて計測した。その結果、両者ともに準弾性散乱強度の増加がみられ、特にMg(OH)2の微粒子においては脱水前からの顕著な強度の増加と緩和時間の減少が計測された。これらの結果は、微粒子の表面付近での多量の欠陥の生成に起因する新たな水素ダイナミクスの発現として理解することができる。