一般社団法人日本鉱物科学会2022年年会・総会

講演情報

口頭講演

R8:変成岩とテクトニクス

2022年9月19日(月) 14:15 〜 15:15 B351 (総合教育研究棟 B棟3F)

座長:鈴木 康太(京都大学)

15:00 〜 15:15

[R8-16] 低P/T型変成帯へのパルス状花崗岩貫入によるミグマタイト帯の複数回の変成―ジルコンの多段階成長を用いたP-T-D-t履歴の解読

*河上 哲生1、市野 智栄1、葛立 恵一1、坂田 周平2、髙塚 紘太1 (1. 京都大・院理、2. 東京大学)

キーワード:低P/T型変成帯、ジルコン、温度圧力時間履歴、領家帯、フレアアップ

領家帯三河高原地域に産する変成岩類のうち最高変成度のGrt-Crd帯と、伊奈川花崗岩周辺の接触変成帯に産するミグマタイトの温度圧力変形時間履歴を推定した。Grt-Crd帯では、珪線石安定領域下での高温変成作用が約97 Maから87 Maまで継続しその後一旦約500 ℃、4 kbar(紅柱石安定領域の高圧部)への冷却を経験した。その後、約84MaにGrt-Crd帯の構造的直下への片麻状花崗岩類の貫入により、同帯のミグマタイトは再度、珪線石安定領域まで加熱された。さらに約70 Maの多量の花崗岩類の貫入に伴い、2.2-2.3 kbarの圧力下で接触変成作用を経験した。また、ミグマタイトの片麻状構造を形成する延性変形はミグマタイトの層構造ができてメルトが固結した約89 Ma以前に開始し、約84 Maまでは続いた。Grt-Crd帯のミグマタイトは、約97-87Maの広域変成と、約84-79 Maの片麻状花崗岩類の貫入に伴う接触変成の、複数回の変成作用と延性変形を経験したことが明らかとなった。また、約70Maの花崗岩類の貫入に伴い、周囲の岩石の部分融解と局所的な低歪みの延性変形が引き起こされた。