1:30 PM - 1:45 PM
[R1-01] Greenland Ruby and Montana Sapphire; Trace element analysis using LA-ICP-MS and Origin determination
Keywords:Corundum, LA-ICP-MS, Greenland, Montana, Origin determination
宝石鉱物は母岩や産出環境といった地質学的な環境情報を保持している。宝石鉱物の構成成分の分析は、その母結晶の地質環境、産状を特定することに繋がるため、原産地鑑別における重要な情報となる。
LA-ICP-MS(レーザーアブレーション誘導結合プラズマ質量分析装置)は、コランダムのBe拡散加熱処理の看破や、各種宝石鉱物の原産地鑑別等に用いられている。宝石鑑別における分析は、非破壊分析が基本であるが、LA-ICP-MSで分析を行う際の分析痕(半径15~80 µm)は10倍のルーペで視認困難であることから準非破壊分析として宝石分野では定着している。
筆者らは2015年日本鉱物科学会一般講演会にてLA-ICP-MSを用いた宝石コランダムの原産地鑑別について発表を行っており、その後もLA-ICP-MSを用いた原産地鑑別の研究を継続的に行っている。 今回は最近新たに流通がはじまったグリーンランド産ルビーと、国内での流通量が増えつつあるアメリカ合衆国モンタナ州産(以下モンタナ産)ブルーサファイアを対象に検討を行った。
グリーンランドにおいては1966年に南西海岸でルビーとピンクサファイアが回収された。その後、2014年True North Gems Inc.がAaappaluttoq鉱床地域でのコランダム採掘ライセンスを得、ルビーとピンクサファイアの最初の販売が2017年にスタートした。Aaappaluttoqの岩石は高温高圧の変成作用を受けており、最近の研究(Polat et al., 2010)によると地質年代は約29億年であることが示唆されている。このことから、グリーンランド産ルビーは「最古のルビー」と呼ばれている。小粒で品質が中~低のものが多く、タイで硼砂を用いた熱処理が行われているものが殆どである。
一方、アメリカ、モンタナ州から採掘されるサファイアにはヨーゴ峡谷産の一次鉱床のものとミズーリ河流域産の二次鉱床のものがある。ヨーゴ峡谷のコランダム鉱山は現在閉山状態にあり、近年国内市場で多くみられるものは後者のミズーリ河流域で採掘されるサファイアである。ミズーリ河流域でのコランダム採掘は1800年代後半より採掘がはじまり1930年代後半まで続いた。そして2011年Potentate Mining社がロッククリーク鉱山を含むジェムマウンテン地域の北部の採掘権、2014年には南部を購入し、商業的な採掘が再スタートした。ヨーゴ峡谷産はランプロファイアを母岩とするが、ミズーリ河流域で採掘されるサファイアは二次鉱床ということもあり、母岩や生成環境等は未だ論争中である。モンタナ産サファイアは色が薄いものが多く、加熱処理が施されるものがほとんどである。
分析に用いたLA-ICP-MS装置は、レーザーアブレーション装置としてESI UP-213、ICP-MS装置としてAgilent 7900rbを使用した。サンプルはグリーンランド産ルビー9点、モンタナ産ブルーサファイア45点を分析に用いた。 グリーンランド産のルビーについての微量元素組成は、変成岩起源のルビーと一致し、特にMg, Ti, Fe, Gaの濃度範囲がモザンビーク産ルビーと類似する。しかし、Vの量がモザンビーク産よりわずかに多く両者を分別することが可能であることがわかった。また、モンタナ産ブルーサファイアについては変成岩起源と玄武岩起源のコランダムの中間的組成を示す。しかし、変成岩起源のサファイアと比較するとFeが多く、玄武岩起源と比較するとGaが少ないという特徴が見いだされた。
LA-ICP-MS法を用いた微量元素測定による原産地鑑別は一部データがオーバーラップする部分もあり、詳細な内部特徴の観察や標準的な宝石学特性を併用し相互補充的に用いられるべきである。
LA-ICP-MS(レーザーアブレーション誘導結合プラズマ質量分析装置)は、コランダムのBe拡散加熱処理の看破や、各種宝石鉱物の原産地鑑別等に用いられている。宝石鑑別における分析は、非破壊分析が基本であるが、LA-ICP-MSで分析を行う際の分析痕(半径15~80 µm)は10倍のルーペで視認困難であることから準非破壊分析として宝石分野では定着している。
筆者らは2015年日本鉱物科学会一般講演会にてLA-ICP-MSを用いた宝石コランダムの原産地鑑別について発表を行っており、その後もLA-ICP-MSを用いた原産地鑑別の研究を継続的に行っている。 今回は最近新たに流通がはじまったグリーンランド産ルビーと、国内での流通量が増えつつあるアメリカ合衆国モンタナ州産(以下モンタナ産)ブルーサファイアを対象に検討を行った。
グリーンランドにおいては1966年に南西海岸でルビーとピンクサファイアが回収された。その後、2014年True North Gems Inc.がAaappaluttoq鉱床地域でのコランダム採掘ライセンスを得、ルビーとピンクサファイアの最初の販売が2017年にスタートした。Aaappaluttoqの岩石は高温高圧の変成作用を受けており、最近の研究(Polat et al., 2010)によると地質年代は約29億年であることが示唆されている。このことから、グリーンランド産ルビーは「最古のルビー」と呼ばれている。小粒で品質が中~低のものが多く、タイで硼砂を用いた熱処理が行われているものが殆どである。
一方、アメリカ、モンタナ州から採掘されるサファイアにはヨーゴ峡谷産の一次鉱床のものとミズーリ河流域産の二次鉱床のものがある。ヨーゴ峡谷のコランダム鉱山は現在閉山状態にあり、近年国内市場で多くみられるものは後者のミズーリ河流域で採掘されるサファイアである。ミズーリ河流域でのコランダム採掘は1800年代後半より採掘がはじまり1930年代後半まで続いた。そして2011年Potentate Mining社がロッククリーク鉱山を含むジェムマウンテン地域の北部の採掘権、2014年には南部を購入し、商業的な採掘が再スタートした。ヨーゴ峡谷産はランプロファイアを母岩とするが、ミズーリ河流域で採掘されるサファイアは二次鉱床ということもあり、母岩や生成環境等は未だ論争中である。モンタナ産サファイアは色が薄いものが多く、加熱処理が施されるものがほとんどである。
分析に用いたLA-ICP-MS装置は、レーザーアブレーション装置としてESI UP-213、ICP-MS装置としてAgilent 7900rbを使用した。サンプルはグリーンランド産ルビー9点、モンタナ産ブルーサファイア45点を分析に用いた。 グリーンランド産のルビーについての微量元素組成は、変成岩起源のルビーと一致し、特にMg, Ti, Fe, Gaの濃度範囲がモザンビーク産ルビーと類似する。しかし、Vの量がモザンビーク産よりわずかに多く両者を分別することが可能であることがわかった。また、モンタナ産ブルーサファイアについては変成岩起源と玄武岩起源のコランダムの中間的組成を示す。しかし、変成岩起源のサファイアと比較するとFeが多く、玄武岩起源と比較するとGaが少ないという特徴が見いだされた。
LA-ICP-MS法を用いた微量元素測定による原産地鑑別は一部データがオーバーラップする部分もあり、詳細な内部特徴の観察や標準的な宝石学特性を併用し相互補充的に用いられるべきである。