2:45 PM - 3:00 PM
[R1-06] HRSTEM observation of columbite supergroup from Hirukawa, Nakatsugawa, Gifu Prefecture, Japan
Keywords:columbite group, wolframite, qitianlingite, STEM, selected area diffraction
Columbite supergroupは,以下のような構造的特徴をもつ酸化鉱物群である(Chukanov et al., 2023).
・その組成式はMO2と概略できる.
・酸素の六方最密充填(hcp)を構造の基本とする.
・Mはhcpの八面体の隙間に入り,6配位(Mのイオン半径によっては8配位に近づく)を取る.
・この八面体は稜共有をしてジグザグ鎖を形成する.
ここでMは6配位に適したイオン半径をもつ金属イオンを表す.今回我々は花崗岩ペグマタイト中で見つかった,中心から周囲に向かってほぼ連続的に組成が変化するcolumbite supergroupと考えられる酸化鉱物(Fe, Mn, Sc, W, Nb, Ta)O2の結晶構造を,主に電子回折と高分解能STEM観察によって明らかにした. 試料は岐阜県中津川市蛭川産花崗岩ペグマタイトの曹長石中に埋没して産出した,長さ 30~900 μm,幅 10~100 μmの黒色不透明の針状結晶であり,その組成的特徴は昨年の本学会で報告した(坂野,2022). SEM-BSE像では中心部に非常に輝度の高い部分があり,その周囲や結晶先端では相対的に輝度の低い部分が観察される.前者をコア,後者をマントルと呼ぶことにする.まずは電子後方散乱回折(EBSD)を用いて岩石薄片中のこの結晶の方位を調べ,集束イオンビーム(FIB)でTEM観察用薄膜を切り出すときに,直方晶系のa軸に垂直な結晶軸からのTEM観察をするためのFIB試料作製手順を検討した (Kogure et al., 2014).尚,得られたEBSDは,コアとマントル間での大きな組成の違いにもかかわらず同様なパターンを示した.高分解能STEM観察は,冷陰極電界放射銃と球面収差補正付き収束レンズを備えたJEOL ARM-200Fを用いて行なった. 今, (Fe, Mn) 2+-O の八面体鎖を A,(Nb, Ta)5+-O の八面体鎖を B,W6+-O の八面体鎖をC とすると,a 軸方向の配列(2周期分で表示)はwolframiteではACAC,columbiteでは ABBABBとなる.コアの部分はNb/Wの原子比が約1/3であるにも拘わらず,電子回折及び環状暗視野(ADF)像よりcolumbiteの構造の混入がまったく見られないwolframiteとなっていることを確認した.一方,コアに近いマントルからのc軸方向からのADF像には,そのコントラストからqitianlingiteとして報告されているABBACABBACと推定される約1.19 nm周期の長周期構造が頻繁に観察された.またこの領域からの制限視野回折(SAD)は,qitianlingiteとwolframiteのパターンの重ね合わせでほぼ説明できた.さらに,コアから離れた針状結晶先端のマントル部分ではABBABBACABBABBACと推測される約1.9 nmの長周期構造が頻繁に観察され (Fig. 1),SADのa軸方向にもこの周期が確認できた.このようなcolumbite supergroupの結晶内の組成変化に伴う構造のバリエーションは,(Fe, Mn)WO4のwolframiteの構造には価数の異なるNb5+が容易に固溶するのに対して(その電荷補償機構については今後検討していく),(Fe, Mn)Nb2O6のcolumbite構造には価数の大きいW6+はまったく固溶しないためcolumbiteとwolframiteとの混合構造あるいは長周期構造を取るという仮説で説明できる.
(Figure Caption)
Fig. 1. Cs-corrected STEM-HAADF image of the crystal along [001], showing a long-period stacking sequence along the a-axis. In the figure, A, B and C represent the positions of (Fe, Mn)-, Nb- and W-dominant cation columns, respectively, observed as bright spots in the image (see the text for the detail). The image was modified to delete distortion caused by specimen drift and suppress the quantum noise using proper filtering.
・その組成式はMO2と概略できる.
・酸素の六方最密充填(hcp)を構造の基本とする.
・Mはhcpの八面体の隙間に入り,6配位(Mのイオン半径によっては8配位に近づく)を取る.
・この八面体は稜共有をしてジグザグ鎖を形成する.
ここでMは6配位に適したイオン半径をもつ金属イオンを表す.今回我々は花崗岩ペグマタイト中で見つかった,中心から周囲に向かってほぼ連続的に組成が変化するcolumbite supergroupと考えられる酸化鉱物(Fe, Mn, Sc, W, Nb, Ta)O2の結晶構造を,主に電子回折と高分解能STEM観察によって明らかにした. 試料は岐阜県中津川市蛭川産花崗岩ペグマタイトの曹長石中に埋没して産出した,長さ 30~900 μm,幅 10~100 μmの黒色不透明の針状結晶であり,その組成的特徴は昨年の本学会で報告した(坂野,2022). SEM-BSE像では中心部に非常に輝度の高い部分があり,その周囲や結晶先端では相対的に輝度の低い部分が観察される.前者をコア,後者をマントルと呼ぶことにする.まずは電子後方散乱回折(EBSD)を用いて岩石薄片中のこの結晶の方位を調べ,集束イオンビーム(FIB)でTEM観察用薄膜を切り出すときに,直方晶系のa軸に垂直な結晶軸からのTEM観察をするためのFIB試料作製手順を検討した (Kogure et al., 2014).尚,得られたEBSDは,コアとマントル間での大きな組成の違いにもかかわらず同様なパターンを示した.高分解能STEM観察は,冷陰極電界放射銃と球面収差補正付き収束レンズを備えたJEOL ARM-200Fを用いて行なった. 今, (Fe, Mn) 2+-O の八面体鎖を A,(Nb, Ta)5+-O の八面体鎖を B,W6+-O の八面体鎖をC とすると,a 軸方向の配列(2周期分で表示)はwolframiteではACAC,columbiteでは ABBABBとなる.コアの部分はNb/Wの原子比が約1/3であるにも拘わらず,電子回折及び環状暗視野(ADF)像よりcolumbiteの構造の混入がまったく見られないwolframiteとなっていることを確認した.一方,コアに近いマントルからのc軸方向からのADF像には,そのコントラストからqitianlingiteとして報告されているABBACABBACと推定される約1.19 nm周期の長周期構造が頻繁に観察された.またこの領域からの制限視野回折(SAD)は,qitianlingiteとwolframiteのパターンの重ね合わせでほぼ説明できた.さらに,コアから離れた針状結晶先端のマントル部分ではABBABBACABBABBACと推測される約1.9 nmの長周期構造が頻繁に観察され (Fig. 1),SADのa軸方向にもこの周期が確認できた.このようなcolumbite supergroupの結晶内の組成変化に伴う構造のバリエーションは,(Fe, Mn)WO4のwolframiteの構造には価数の異なるNb5+が容易に固溶するのに対して(その電荷補償機構については今後検討していく),(Fe, Mn)Nb2O6のcolumbite構造には価数の大きいW6+はまったく固溶しないためcolumbiteとwolframiteとの混合構造あるいは長周期構造を取るという仮説で説明できる.
(Figure Caption)
Fig. 1. Cs-corrected STEM-HAADF image of the crystal along [001], showing a long-period stacking sequence along the a-axis. In the figure, A, B and C represent the positions of (Fe, Mn)-, Nb- and W-dominant cation columns, respectively, observed as bright spots in the image (see the text for the detail). The image was modified to delete distortion caused by specimen drift and suppress the quantum noise using proper filtering.