2023 Annual Meeting of Japan Association of Mineralogical Sciences (JAMS)

Presentation information

Oral presentation

R1: Characterization and description of minerals (Joint Session with The Gemmological Society of Japan)

Thu. Sep 14, 2023 1:30 PM - 4:30 PM 820 (Sugimoto Campus)

Chairperson:Hiroshi Kitawaki, Masanori Kurosawa, Yasuyuki Banno

3:15 PM - 3:30 PM

[R1-08] Dumortierite and tourmaline from the Takumi Mine, Hyogo Prefecture, Japan

*Yohei SHIROSE1, Rikako KAMISE1, Katsuichi NISHIDA, Yoshiteru FUJIWARA (1. Ehime Univ. Sci.)

Keywords:dumortierite, tourmaline, Takumi Mine, foitite, magnesio-foitite

【はじめに】
 デュモルチ石はAlAl6BSi3O18の理想化学組成を持ち,アルミニウムに富む変成岩やペグマタイトなどから産するが,本邦ではろう石鉱床中からの産出が特徴的である。また,中でも福島県月形鉱山,群馬県四万鉱山,栃木県百村,山梨県京ノ沢などではフォイト電気石や苦土フォイト電気石組成となる繊維状の電気石が共に産出することが報告されている(中村・上野, 1960; 吉田,1966; 松原ら,1994; Hawthorne et al., 1999; 吉川ら,2010)。上記のろう石鉱床中のデュモルチ石はいずれも青~紫色であるが,本報告の兵庫県琢美鉱山産のデュモルチ石は断層に伴うセリサイト鉱床中からの産出であり,桃色を呈している。また,共生する繊維状電気石はフォイト電気石,苦土フォイト電気石に加え,酸化フォイト電気石,“苦土フォイト電気石のoxy-type置換体”といったアルミニウムと席に空位を多く含む電気石種であった。本研究では兵庫県琢美鉱山から産するデュモルチ石及び電気石の産状及び鉱物学的な特徴を報告する。
【産状・試料】
 琢美鉱山は,兵庫県中部神河町の砥峰高原の西部に位置し,古くは銅を,大昭から昭和初期にかけては砒素を目的として稼行されていた(橋本・松内,2011)。鉱床は,上部白亜系峰山層への花崗閃緑岩の貫入に伴い胚胎した熱水鉱脈鉱床であり,断層破砕帯中の粘土脈中に硫化鉱を伴う。粘土脈は主にセリサイトからなり,周囲の珪質な母岩もセリサイト化作用を受けており,細粒な黄鉄鉱や硫砒鉄鉱が形成されている。デュモルチ石は桃色塊状の集合として産出し,硫砒鉄鉱,黄銅鉱や細粒な白雲母,電気石を伴う。電気石は硫砒鉄鉱やデュモルチ石に伴う細粒なものや,幅1 mm程度の黒色~無色の脈状のものが産出する。
【実験手法】
 観察,分析にはJEOL製走査型電子顕微鏡JSM-6510LV及びRIGAKU製粉末X線回折装置Ultima IVを用いた。
【結果・考察】
 粘土脈の大部分は細粒なセリサイトであり,自形の硫砒鉄鉱,黄鉄鉱,鋭錐石を伴う。硫化鉱は,硫砒鉄鉱,黄銅鉱,閃亜鉛鉱,方鉛鉱,輝蒼鉛鉱,未同定Bi鉱物などからなり,二次鉱物として含亜鉛亜砒藍鉄鉱,未同定砒酸塩鉱物が産出する。これらの鉱物については今後さらなる研究を行う予定である。
 デュモルチ石は長さ0.2-1 mm,幅0.5 mm程度の柱状結晶が放射状に集合しており,鏡下で観察すると結晶内で無色~赤色のカラーゾーニングを有し,多色性を持つ。0.5 mm以下の細粒な白雲母を伴い,自形の硫砒鉄鉱を密接に伴うことがある。化学組成としては微量の鉄,チタンを含み,Fe2+ = 0.00-0.05,Ti = 0.04-0.20 (apfu)となり,無色部に比べ赤色部はチタンをやや多く含む傾向にある。呈色の要因として,Fe/(Fe + Ti)の値が高いと青色,低いと桃色を呈することが報告されており(Alexanders et al., 1986),琢美鉱山産デュモルチ石においてはFe/(Fe + Ti) < 0.2となるものがほとんどであり,他の粘土鉱床に比べ低い値を示す。晶出の際に,硫砒鉄鉱の晶出により鉄が消費されることもその組成に影響を与えていると考えられる。
 電気石は鏡下で無色,深緑色,褐色であり,ゾーニングが顕著である。X席はNaに富むものから空位に富むものまで連続的な組成変化を示し,NaM2+-□Al置換とNaM2+2(OH)-□Al2O置換が生じている。鉱物種としては鉄電気石,苦土電気石,フォイト電気石,苦土フォイト電気石,酸化フォイト電気石,“苦土フォイト電気石のoxy-type置換体”からなる。“苦土フォイト電気石のoxy-type置換体(□-Mg-O root name; □MgAl2Al6Si6O18(BO3)3(OH)3O; Henry et al., 2011)”は鉱物種としての報告は未だなされていないが,Dutrow & Henry (2016)は,もともとHwathorne et al., (1999)により報告された京ノ沢産の“苦土フォイト電気石”がこれに該当するのではないかと示唆している。
 琢美鉱山では,粘土脈を形成するようなアルミニウムに富む鉱化流体にホウ素に富む流体が混合した結果,デュモルチ石やアルミニウムに富む特徴的な電気石が形成されたと考えられる。