12:00 〜 14:00
[R1P-01] 福島県石川地方産モナズ石の化学組成とCHIME年代
キーワード：モナズ石、化学組成、CHIME年代測定、花崗岩ペグマタイト、石川地方
Ⅰ．はじめに
福島県石川地方は花崗岩ペグマタイトの鉱物産地として有名であり，各種の希土類元素(REE)鉱物を産出したことで知られている（長島・長島，1960）。EPMAを用いたCHIME (Chemical Th-U-total Pb Isochron Method)年代測定法がSuzuki et al. (1991)により開発され，1990年代からREE鉱物の一種であるモナズ石が年代測定用試料として注目されるようになってきた。石川地方産モナズ石のEPMA定量分析を行ない，年代測定を試みた。本講演内容の詳細は岩石鉱物科学, 50, 113-118に公表されている（坂野，2021）。
Ⅱ．分析方法と結果
JEOL JXA-iHP200Fを用いて最初にREE等の定量を行ない，次にTh, U, Pb等の定量を行なった。すべての測定元素に対して各特性X線のエネルギー幅に波高分析器を設定した。
１．REE等の定量
加速電圧は15 kV，照射電流は50 nA，ビーム径は3 μmである。標準試料と測定X線は以下の通り：Y3Al5O12 (YLα)，LaB6 (LaLα)，CeB6 (CeLα)，NdB6 (NdLβ)，含Pr, Dy, Er合成ガラス(PrLβ, DyLα, ErLα)，含Sm, Gd合成ガラス(SmLβ, GdLβ)，BaSO4 (SKα)，SrBaNb4O12 (NbLα)，GaP (PKα)，Fe2SiO4 (SiKα)，CaSiO3 (CaKα)，ThO2 (ThMα)，U metal (UMβ)。X線計測時間はTh・Uが100秒，他の元素が20秒である。ピーク及びバックグラウンドは4回計測してその平均を真のX線強度とした。UMβ線に対するThの1次線の干渉についてはThO2を用いて干渉補正係数を決定して補正を行なった。
平均組成(n = 11)は，P2O5 28.35, SiO2 1.02, SO3 0.01, ThO2 5.08, UO2 0.56, Y2O3 2.95, La2O3 9.27, Ce2O3 26.35, Pr2O3 3.46, Nd2O3 14.38, Sm2O3 4.44, Gd2O3 3.01, Dy2O3 1.07, Er2O3 0.02, Nb2O5 0.00, CaO 0.26, total 100.41 wt%であり，その実験式は(Ce0.383Nd0.204La0.136Y0.062Sm0.061Pr0.050Gd0.040Dy0.014Er0.002Th0.046U0.005Ca0.011)Σ1.014(P0.952Si0.040)Σ0.992O4である。
２．Th, U, Pb等の定量
加速電圧は15 kV，照射電流は50 nA，ビーム径は3 μmである。PbとCaの標準試料は含Pb, Ca合成ガラス(PbMα, CaKα)で，その他の元素(Th, U, Y, S, Nb, Si)については前節１で述べたものを使用した。X線計測時間はPbが200秒，Th・Uが100秒，Yが80秒，他の元素が20秒である。ピーク及びバックグラウンドは3回計測してその平均を真のX線強度とした。ZAF補正では上記測定元素は実際の測定値を使用し，Yを除くREEとPは前節１で得られたモナズ石の平均組成を与えて計算した。UMβ線に対するThの1次線の干渉については前節１の方法で補正し，PbMα線に対するTh・Y・Nb・Sの1次線の干渉については上記4元素用標準試料を用いて各妨害線に対応する干渉補正係数を決定して補正を行なった。PbOの検出限界(2σ)は60-62 ppmである。PbOの分析誤算(1σ)は0.05 wt%レベルで7-8%，0.03 wt%レベルで10-12%である。
14点のThO2，UO2及びPbOの組成範囲はそれぞれ4.53-7.97 wt%，0.479-0.973 wt%及び0.027-0.050 wt%である。上記データセットから計算されたCHIME年代（誤差2σ）は103 ± 26 Maである。MSWDは0.22である。PbO-ThO2*図上のアイソクロンの傾斜は0.00432±0.0011，切片は0.0013±0.0090である（誤差は2σ）。
福島県石川地方は花崗岩ペグマタイトの鉱物産地として有名であり，各種の希土類元素(REE)鉱物を産出したことで知られている（長島・長島，1960）。EPMAを用いたCHIME (Chemical Th-U-total Pb Isochron Method)年代測定法がSuzuki et al. (1991)により開発され，1990年代からREE鉱物の一種であるモナズ石が年代測定用試料として注目されるようになってきた。石川地方産モナズ石のEPMA定量分析を行ない，年代測定を試みた。本講演内容の詳細は岩石鉱物科学, 50, 113-118に公表されている（坂野，2021）。
Ⅱ．分析方法と結果
JEOL JXA-iHP200Fを用いて最初にREE等の定量を行ない，次にTh, U, Pb等の定量を行なった。すべての測定元素に対して各特性X線のエネルギー幅に波高分析器を設定した。
１．REE等の定量
加速電圧は15 kV，照射電流は50 nA，ビーム径は3 μmである。標準試料と測定X線は以下の通り：Y3Al5O12 (YLα)，LaB6 (LaLα)，CeB6 (CeLα)，NdB6 (NdLβ)，含Pr, Dy, Er合成ガラス(PrLβ, DyLα, ErLα)，含Sm, Gd合成ガラス(SmLβ, GdLβ)，BaSO4 (SKα)，SrBaNb4O12 (NbLα)，GaP (PKα)，Fe2SiO4 (SiKα)，CaSiO3 (CaKα)，ThO2 (ThMα)，U metal (UMβ)。X線計測時間はTh・Uが100秒，他の元素が20秒である。ピーク及びバックグラウンドは4回計測してその平均を真のX線強度とした。UMβ線に対するThの1次線の干渉についてはThO2を用いて干渉補正係数を決定して補正を行なった。
平均組成(n = 11)は，P2O5 28.35, SiO2 1.02, SO3 0.01, ThO2 5.08, UO2 0.56, Y2O3 2.95, La2O3 9.27, Ce2O3 26.35, Pr2O3 3.46, Nd2O3 14.38, Sm2O3 4.44, Gd2O3 3.01, Dy2O3 1.07, Er2O3 0.02, Nb2O5 0.00, CaO 0.26, total 100.41 wt%であり，その実験式は(Ce0.383Nd0.204La0.136Y0.062Sm0.061Pr0.050Gd0.040Dy0.014Er0.002Th0.046U0.005Ca0.011)Σ1.014(P0.952Si0.040)Σ0.992O4である。
２．Th, U, Pb等の定量
加速電圧は15 kV，照射電流は50 nA，ビーム径は3 μmである。PbとCaの標準試料は含Pb, Ca合成ガラス(PbMα, CaKα)で，その他の元素(Th, U, Y, S, Nb, Si)については前節１で述べたものを使用した。X線計測時間はPbが200秒，Th・Uが100秒，Yが80秒，他の元素が20秒である。ピーク及びバックグラウンドは3回計測してその平均を真のX線強度とした。ZAF補正では上記測定元素は実際の測定値を使用し，Yを除くREEとPは前節１で得られたモナズ石の平均組成を与えて計算した。UMβ線に対するThの1次線の干渉については前節１の方法で補正し，PbMα線に対するTh・Y・Nb・Sの1次線の干渉については上記4元素用標準試料を用いて各妨害線に対応する干渉補正係数を決定して補正を行なった。PbOの検出限界(2σ)は60-62 ppmである。PbOの分析誤算(1σ)は0.05 wt%レベルで7-8%，0.03 wt%レベルで10-12%である。
14点のThO2，UO2及びPbOの組成範囲はそれぞれ4.53-7.97 wt%，0.479-0.973 wt%及び0.027-0.050 wt%である。上記データセットから計算されたCHIME年代（誤差2σ）は103 ± 26 Maである。MSWDは0.22である。PbO-ThO2*図上のアイソクロンの傾斜は0.00432±0.0011，切片は0.0013±0.0090である（誤差は2σ）。