12:00 〜 14:00
[R1P-03] 単結晶X線回折を用いたcordieriteのSiとAlの秩序度指標の作成
キーワード:菫青石、秩序-無秩序相転移、単結晶X線回折
造岩鉱物中のSiとAlの秩序配列の程度を表すSiとAlの配列秩序度は, その鉱物の熱履歴を推定する上で重要である. Cordieriteは変成岩中に産出するサイクロ珪酸鉱物で, 一般的な化学組成は(Mg, Fe)2Si5Al4O18である. Cordieriteとindialiteは多形の関係にあり, SiとAlが秩序配列すると直方晶系のcordierite, 無秩序配列すると六方晶系のindialiteになる. CordieriteとindialiteにおけるSiとAl配列の秩序度は, 結晶化における冷却過程によって異なる, 急激に冷却された場合, SiとAlの無秩序配列が低温でも保持されるためindialiteが形成される. ゆっくり冷却された場合, SiとAlが冷却過程で秩序配列しcordieriteが形成される. c軸に垂直な平面でそれぞれの六員環を比較すると, indialiteは正六角形であるがcordieriteの六員環はa軸方向に伸びた構造になっている. これはSiとAl配列の秩序度の違いによるものであり, 秩序度が高いほど六員環の形は歪んでいく. Cordieriteの六員環の歪み度を測定できれば, SiとAl配列秩序度の指標となり, 結晶化した地点での温度履歴の推定に役立てられる.
この歪み度を表す指標として, 粉末X線回折図から測定できるdistortion-index(Δ) (Miyashiro, 1957)があるが, 単結晶X線回折から測定できる歪み度の指標はない. 単結晶試料から歪み度を測定できれば, 粉末試料にするのが困難な岩石中の微小なcordieriteでもSiとAlの秩序度を推定できる. そこで本研究ではcordieriteの単結晶X線回折パターンから歪み度を測定することを試みた. Cordieriteは天然にも産出する典型的な鉱物であるが, indialiteは稀産鉱物で良質な単結晶の入手が困難である. cordieriteの多形であるSiとAlが無秩序配列したindialiteの単結晶X線回折パターンを測定するために, cordieriteの加熱実験によるindialiteの合成も本研究で試みた.
単結晶X線回折に用いたcordieriteはブラジル産, マダガスカル産, 京都大文字山産である. まず, バックラウエカメラで結晶方位を決定し, c*軸に垂直な薄片を作成したのち, プリセッションカメラで回折パターンを得た. 歪み度は, cordieriteの単位格子のa軸とb軸の比から決まるunit cell ratio(x)という指数を新たに設定し, 0次ラウエゾーンの回折パターンから測定を行った. またdistortion-index(Δ)を1次ラウエゾーンから測定し, xとΔの相関関係を求めた. xとΔには弱い相関が見られ, distortion-indexに代わる歪み度の指標としてunit cell ratioが有効であると考えられる. しかし, プリセッションカメラで1次ラウエゾーンの回折パターンを得る際に, 用いたcordierite試料すべてにおいてc*軸方向の長さが等しいと仮定している. そのため, 1次ラウエゾーンから測定したdistortion-index(Δ)は有効な値ではない可能性がある. この問題点の改善方法の模索や, 新たな歪み度の指標の検討を今後行っていく.
ブラジル産の単結晶試料を出発物質としてindialite合成のための加熱実験を, 縦型管状炉を用いて行った. 加熱条件は, 雰囲気制御なしの空気中で①1400℃-20分 ②1400℃-60分であった. 生成試料の同定は粉末X線回折を用いて行った. その結果どちらもindialiteの特徴的なピークが見られる一方で, mulliteのピークも一部見られた. mulliteへの分解を防ぐためには, 1400℃-20分以内の加熱, あるいは1400℃以下で加熱処理を行う必要があるだろう. 加熱後の回収試料は黒く変色していた. 回収試料のバックラウエカメラやプリセッションカメラで撮影した回折斑点は, 過熱前の回折斑点に比べ明瞭ではなくなっていた. これは結晶性の低下または結晶表面での反応生成物を示唆している. 加熱後の回収試料が黒くなり透明度がなくなるのは, cordieriteに含まれるFe2+の酸化によるものと思われる. 本発表では二酸化炭素と水素の混合ガスを用いた雰囲気制御下で加熱することで良質なindialiteの単結晶生成の結果を紹介する.
この歪み度を表す指標として, 粉末X線回折図から測定できるdistortion-index(Δ) (Miyashiro, 1957)があるが, 単結晶X線回折から測定できる歪み度の指標はない. 単結晶試料から歪み度を測定できれば, 粉末試料にするのが困難な岩石中の微小なcordieriteでもSiとAlの秩序度を推定できる. そこで本研究ではcordieriteの単結晶X線回折パターンから歪み度を測定することを試みた. Cordieriteは天然にも産出する典型的な鉱物であるが, indialiteは稀産鉱物で良質な単結晶の入手が困難である. cordieriteの多形であるSiとAlが無秩序配列したindialiteの単結晶X線回折パターンを測定するために, cordieriteの加熱実験によるindialiteの合成も本研究で試みた.
単結晶X線回折に用いたcordieriteはブラジル産, マダガスカル産, 京都大文字山産である. まず, バックラウエカメラで結晶方位を決定し, c*軸に垂直な薄片を作成したのち, プリセッションカメラで回折パターンを得た. 歪み度は, cordieriteの単位格子のa軸とb軸の比から決まるunit cell ratio(x)という指数を新たに設定し, 0次ラウエゾーンの回折パターンから測定を行った. またdistortion-index(Δ)を1次ラウエゾーンから測定し, xとΔの相関関係を求めた. xとΔには弱い相関が見られ, distortion-indexに代わる歪み度の指標としてunit cell ratioが有効であると考えられる. しかし, プリセッションカメラで1次ラウエゾーンの回折パターンを得る際に, 用いたcordierite試料すべてにおいてc*軸方向の長さが等しいと仮定している. そのため, 1次ラウエゾーンから測定したdistortion-index(Δ)は有効な値ではない可能性がある. この問題点の改善方法の模索や, 新たな歪み度の指標の検討を今後行っていく.
ブラジル産の単結晶試料を出発物質としてindialite合成のための加熱実験を, 縦型管状炉を用いて行った. 加熱条件は, 雰囲気制御なしの空気中で①1400℃-20分 ②1400℃-60分であった. 生成試料の同定は粉末X線回折を用いて行った. その結果どちらもindialiteの特徴的なピークが見られる一方で, mulliteのピークも一部見られた. mulliteへの分解を防ぐためには, 1400℃-20分以内の加熱, あるいは1400℃以下で加熱処理を行う必要があるだろう. 加熱後の回収試料は黒く変色していた. 回収試料のバックラウエカメラやプリセッションカメラで撮影した回折斑点は, 過熱前の回折斑点に比べ明瞭ではなくなっていた. これは結晶性の低下または結晶表面での反応生成物を示唆している. 加熱後の回収試料が黒くなり透明度がなくなるのは, cordieriteに含まれるFe2+の酸化によるものと思われる. 本発表では二酸化炭素と水素の混合ガスを用いた雰囲気制御下で加熱することで良質なindialiteの単結晶生成の結果を紹介する.