12:00 〜 14:00
[R1P-11] 西オーストラリア,ピルバラ地域,クリーバービル層におけるBIF中のチャート中のベルチェリンとシャモサイト
キーワード:縞状鉄鉱層、ベルチェリン
1. 緒言
西オーストラリア,ピルバラ海岸グリーンストーン帯中には,黒色頁岩からBIF(縞状鉄鉱層)に移り変わる31億年前の連続層(クリーバービル層:CL層)が保存良く残っている(Kiyokawa et al.2002).CL層は,下位から黒色頁岩部層,BIF部層に区分され,プレーナイト・パンペリー石相の変成作用しか受けておらず,堆積時の地層状態が記録されている(Kiyokawa et al. 2002, Kiyokawa et al. 2012) .太古代BIFの形成作用については,光合成による酸化作用や異化鉄還元作用(DIR)などの鉄還元菌による2価鉄の沈殿作用など議論されている(eg. Bekker et al. 2014) .近年,鉄沈殿物の形成は,生物活動を伴わなず,初生鉱物としてグリーナライトとして沈殿した報告がなされてきた(Rasmussen et al. 2013, Rasmussen et al. 2023 ) .一般に,鉄沈殿物は後の続成作用や変成作用で形態を簡単にかえていくため,初期状態を復元することが難しい.本研究では,31億年前において世界で最も保存状態が良いクリーバービル層中のBIF中に含まれる鉱物について, 電子顕微鏡観察を行おこない,どのような鉱物が含まれているかを明らかにした.
2. 方法
CL3掘削コアの岩石サンプルの薄片を作成し,肉眼及び偏光顕微鏡観察を行った.全岩の構成鉱物はX線回折分析(Rigaku Ultima Ⅳ)で決定した.化学組成分析及び微細構造観察はSEM(JEOL JSM-6500M),EPMA(JEOL JXA-8200),XRF(Rigaku ZSX Primus Ⅳ),ICP-MS(アジレント・テクノロジーAgilena 7700X)を用いた.また,一部の試料に対し九州大学超顕微解析研究センターのFIB-SEM(FEI Quanta 3D 200i,HITACHI MI4000L)を用いて針状結晶を含むチャート中の石英より薄膜試料を作成し,電子顕微鏡(JEOL JEM-ARM300F2)を用いて組織観察,鉱物種の同定を行った.
3. 結果
層状チャート層は,1 cm以下の淡緑色の粘土質ラミナと白色のチャート質ラミナの互層になっている.XRDの結果から,構成鉱物はシデライトと石英,マグネタイトであった.偏光顕微鏡およびSEM観察により粘土質ラミナは,細粒のシデライトによって構成され,続成作用により堆積当時の構造を失っていた.一方,チャート質ラミナは,主に直径2~10 µm石英によって構成されているが,一部自形結晶のシデライト,10~50 μm程の板状結晶の緑泥石がみられ,シリカマトリックス中においては5 μm以下の針状結晶が観察できた. 針状結晶を含むFIB試料は石英のほか,球状で直径約2 µmの鉄酸化物,石英中や石英の粒界に数μmの針状結晶が観察でき,これらの針状結晶は14 Åの底面反射の緑泥石鉱物.STEM-EDSマッピングより化学組成は(Fe2+3.92, Al1.49, Mg0.64)Σ6.05 (Si2.43Al1.57)Σ4.00O10(OH)8であり,鉱物種はシャモサイトであった.また,薄膜試料中の石英粒の一部に1 μm以下の空隙が多数存在するものがある.この石英中に500 nm以下の針状結晶がいくつか見られた.これらの針状結晶は7 Åの底面反射の蛇紋石鉱物で,STEM-EDSマッピングより化学組成は(Fe2+1.94, Al0.73, Mg0.28)Σ2.95 (Si1.38Al0.62)Σ2.00O5(OH)4であり,鉱物種はベルチェリンであった.ベルチェリンが初期堆積鉱物であるとしたら,当時の海洋に初期大陸などからのAlの供給されていた可能性が考えられる.
4.引用文献
Kiyokawa et al., 2012, Lateral variations in the lithology and organic chemistry of a black shale sequence on the Mesoarchean seafloor affected by hydrothermal processes: The Dixon Island Formation of the coastal Pilbara Terrane, Western Australia. Island Arc, 21, 118–147
Rasmussen, B., et al., 2013. Iron silicate microgranules as precursor sediments to 2.5 billion-year-old banded iron formations. Geology, 41, 435–438.
西オーストラリア,ピルバラ海岸グリーンストーン帯中には,黒色頁岩からBIF(縞状鉄鉱層)に移り変わる31億年前の連続層(クリーバービル層:CL層)が保存良く残っている(Kiyokawa et al.2002).CL層は,下位から黒色頁岩部層,BIF部層に区分され,プレーナイト・パンペリー石相の変成作用しか受けておらず,堆積時の地層状態が記録されている(Kiyokawa et al. 2002, Kiyokawa et al. 2012) .太古代BIFの形成作用については,光合成による酸化作用や異化鉄還元作用(DIR)などの鉄還元菌による2価鉄の沈殿作用など議論されている(eg. Bekker et al. 2014) .近年,鉄沈殿物の形成は,生物活動を伴わなず,初生鉱物としてグリーナライトとして沈殿した報告がなされてきた(Rasmussen et al. 2013, Rasmussen et al. 2023 ) .一般に,鉄沈殿物は後の続成作用や変成作用で形態を簡単にかえていくため,初期状態を復元することが難しい.本研究では,31億年前において世界で最も保存状態が良いクリーバービル層中のBIF中に含まれる鉱物について, 電子顕微鏡観察を行おこない,どのような鉱物が含まれているかを明らかにした.
2. 方法
CL3掘削コアの岩石サンプルの薄片を作成し,肉眼及び偏光顕微鏡観察を行った.全岩の構成鉱物はX線回折分析(Rigaku Ultima Ⅳ)で決定した.化学組成分析及び微細構造観察はSEM(JEOL JSM-6500M),EPMA(JEOL JXA-8200),XRF(Rigaku ZSX Primus Ⅳ),ICP-MS(アジレント・テクノロジーAgilena 7700X)を用いた.また,一部の試料に対し九州大学超顕微解析研究センターのFIB-SEM(FEI Quanta 3D 200i,HITACHI MI4000L)を用いて針状結晶を含むチャート中の石英より薄膜試料を作成し,電子顕微鏡(JEOL JEM-ARM300F2)を用いて組織観察,鉱物種の同定を行った.
3. 結果
層状チャート層は,1 cm以下の淡緑色の粘土質ラミナと白色のチャート質ラミナの互層になっている.XRDの結果から,構成鉱物はシデライトと石英,マグネタイトであった.偏光顕微鏡およびSEM観察により粘土質ラミナは,細粒のシデライトによって構成され,続成作用により堆積当時の構造を失っていた.一方,チャート質ラミナは,主に直径2~10 µm石英によって構成されているが,一部自形結晶のシデライト,10~50 μm程の板状結晶の緑泥石がみられ,シリカマトリックス中においては5 μm以下の針状結晶が観察できた. 針状結晶を含むFIB試料は石英のほか,球状で直径約2 µmの鉄酸化物,石英中や石英の粒界に数μmの針状結晶が観察でき,これらの針状結晶は14 Åの底面反射の緑泥石鉱物.STEM-EDSマッピングより化学組成は(Fe2+3.92, Al1.49, Mg0.64)Σ6.05 (Si2.43Al1.57)Σ4.00O10(OH)8であり,鉱物種はシャモサイトであった.また,薄膜試料中の石英粒の一部に1 μm以下の空隙が多数存在するものがある.この石英中に500 nm以下の針状結晶がいくつか見られた.これらの針状結晶は7 Åの底面反射の蛇紋石鉱物で,STEM-EDSマッピングより化学組成は(Fe2+1.94, Al0.73, Mg0.28)Σ2.95 (Si1.38Al0.62)Σ2.00O5(OH)4であり,鉱物種はベルチェリンであった.ベルチェリンが初期堆積鉱物であるとしたら,当時の海洋に初期大陸などからのAlの供給されていた可能性が考えられる.
4.引用文献
Kiyokawa et al., 2012, Lateral variations in the lithology and organic chemistry of a black shale sequence on the Mesoarchean seafloor affected by hydrothermal processes: The Dixon Island Formation of the coastal Pilbara Terrane, Western Australia. Island Arc, 21, 118–147
Rasmussen, B., et al., 2013. Iron silicate microgranules as precursor sediments to 2.5 billion-year-old banded iron formations. Geology, 41, 435–438.