10:45 〜 11:00
[R2-07] 含Al-CaTiO3ぺロブスカイにおけるAlの局所構造のNMRによる研究
キーワード:含Al-CaTiO3ペロブスカイト、Alの局所構造、NMR
はじめに
チタン酸ペロブスカイト構造相のBサイトを占める4価陽イオンであるTi4+のみを3価陽イオンで置換する形の固溶メカニズムは,電荷補償のために酸素欠陥の生成を伴う必要があることから,材料分野においては電気特性との関係で研究が進められている。一方,地球深部科学においても,MgSiO3ブリッジマイトのSi4+をAl3+で置換する固溶メカニズムは,弾性的性質や水の固溶に関連する可能性があるとして注目されている。本研究ではCaTiO3ペロブスカイトへのAl3+の固溶について,固溶に伴う構造変化と固溶限界について検討を行ってきており,大気圧下においてはCa(Ti1-xAlx)O3-δの0<x<0.25の組成範囲の固溶が認められ,Al3+の固溶に伴い格子体積は単調に減少し,固溶限界に近い0.21<x<0.25の組成範囲において直方晶系→正方晶系→立方晶系のモルフォトロピックな構造変化を示すことを本学会の過去の年会において報告してきた。また,構造中に導入される酸素欠陥の分布に関する知見を得るため,Alの局所構造を知る手法として有用な 27Alに対するNMR測定を行い,予察的な結果としてAlの局所構造は主にVI配位で,一部IV配位やV配位も存在することを報告した。本発表では,2次元の27Al-3QMAS-NMR測定の結果を含め,含Al-CaTiO3ペロブスカイトにおけるAlの局所構造のさらに詳細な議論を行う。
実験手法
合成後のCa(Ti1-xAlx)O3-δにおいて,0<x<0.25の範囲のいくつかの組成の生成物が得られるよう,CaCO3,Al2O3,TiO2 の試薬を出発試料として秤量,混合し,1000~1300℃での焼成・混合を5~8回繰り返した後,最終的に1300℃で約50時間焼成し,急冷回収した。回収試料は,XRD測定及びSEM-EDSにより生成相の同定と化学組成の定量分析を行った後,27Al-NMR測定を岡山大学惑星物質研究所との共同利用研究で行った。
結果
1例として,x=0.05の2次元の27Al-3QMAS-NMR測定の結果を図1(a)に示す。NMR測定が微量なAlにも敏感なプローブであるため,XRD測定及びSEM-EDSでは,目的の含Al-CaTiO3ペロブスカイト以外の相が認められないにも係わらず,共存相に含まれるのIV配位Alからのシグナルと考えられるピークが観察された。それゆえ,スピニングサイドバンドの積算パターンの化学シフト80 ppm付近にあるIV配位Alのピーク(図1(b))には,特にAl固溶量が少ないときは,そのピーク強度に対する含Al-CaTiO3ペロブスカイト相からの比較的幅の広いピークに重畳した共存相に含まれるAlからの幅の狭いピークの寄与が無視できないことに留意して解釈を加えることが必要である。
チタン酸ペロブスカイト構造相のBサイトを占める4価陽イオンであるTi4+のみを3価陽イオンで置換する形の固溶メカニズムは,電荷補償のために酸素欠陥の生成を伴う必要があることから,材料分野においては電気特性との関係で研究が進められている。一方,地球深部科学においても,MgSiO3ブリッジマイトのSi4+をAl3+で置換する固溶メカニズムは,弾性的性質や水の固溶に関連する可能性があるとして注目されている。本研究ではCaTiO3ペロブスカイトへのAl3+の固溶について,固溶に伴う構造変化と固溶限界について検討を行ってきており,大気圧下においてはCa(Ti1-xAlx)O3-δの0<x<0.25の組成範囲の固溶が認められ,Al3+の固溶に伴い格子体積は単調に減少し,固溶限界に近い0.21<x<0.25の組成範囲において直方晶系→正方晶系→立方晶系のモルフォトロピックな構造変化を示すことを本学会の過去の年会において報告してきた。また,構造中に導入される酸素欠陥の分布に関する知見を得るため,Alの局所構造を知る手法として有用な 27Alに対するNMR測定を行い,予察的な結果としてAlの局所構造は主にVI配位で,一部IV配位やV配位も存在することを報告した。本発表では,2次元の27Al-3QMAS-NMR測定の結果を含め,含Al-CaTiO3ペロブスカイトにおけるAlの局所構造のさらに詳細な議論を行う。
実験手法
合成後のCa(Ti1-xAlx)O3-δにおいて,0<x<0.25の範囲のいくつかの組成の生成物が得られるよう,CaCO3,Al2O3,TiO2 の試薬を出発試料として秤量,混合し,1000~1300℃での焼成・混合を5~8回繰り返した後,最終的に1300℃で約50時間焼成し,急冷回収した。回収試料は,XRD測定及びSEM-EDSにより生成相の同定と化学組成の定量分析を行った後,27Al-NMR測定を岡山大学惑星物質研究所との共同利用研究で行った。
結果
1例として,x=0.05の2次元の27Al-3QMAS-NMR測定の結果を図1(a)に示す。NMR測定が微量なAlにも敏感なプローブであるため,XRD測定及びSEM-EDSでは,目的の含Al-CaTiO3ペロブスカイト以外の相が認められないにも係わらず,共存相に含まれるのIV配位Alからのシグナルと考えられるピークが観察された。それゆえ,スピニングサイドバンドの積算パターンの化学シフト80 ppm付近にあるIV配位Alのピーク(図1(b))には,特にAl固溶量が少ないときは,そのピーク強度に対する含Al-CaTiO3ペロブスカイト相からの比較的幅の広いピークに重畳した共存相に含まれるAlからの幅の狭いピークの寄与が無視できないことに留意して解釈を加えることが必要である。